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「『自分と同じもの』を子に受け渡さないようにしようと思った」【吉川ひなの】子育てに思うこと

  • 2026.5.15

毎回自由に内容を変え、お送りしているひなの連載。ハウオリはハワイ語でHAPPYの意味です。

子育てについて

自分の気持ちに「気づける」人に

日本に帰ってきて、まず何を感じたのか。そんな率直な心境から、ひなのさんは今の暮らしと子どもたちの変化について話してくれた。
 
「私は日本で生まれ育っているから、子どもたちに教えられることがたくさんあるなって。全て日本語でやり取りができるし、感覚として肌なじみがある。ハワイといっても、アメリカ社会の中で育ってきた子どもたちは、やっぱり戸惑うことが多かったと思う」
 
日本に来てから、子どもたちもそれぞれに変化があったという。
「真ん中の子は、一回日本の公立の小学校に3カ月だけ入れてみたり、一番下の子も保育園に入れてみたりしたんですけど、やっぱりすごく戸惑っちゃって。どっちがいいとか悪いじゃなくて、先生との関わり方とか、ルールとか、あらゆることがあまりにも違うんですよね。結局インターに通い始めたら、見るからに伸び伸びしてきて。人って、最初に育った環境で基礎が作られるんだなと感じました」
 
特に長女の変化は大きかったそう。
「娘は13歳までハワイにいたので、感覚としてはもうアメリカ人なんですよね。日本語はすごく上手に話せるんだけど、“日本人同士でこういうことを言うのはおかしいの?”とか、“日本だとこの格好で外に出ていいの?”とか、今もまだ迷うことが多いみたいで。でも逆に、日本に来て初めて、英語ができることはラッキーなんだと思えたみたいなんです。今まではそれが当たり前だったけど、日本だと自分の強みとして見えてきたんだと思う。そういう意味では、いい気づきになっているのかな」
 
子どもたちがそれぞれに変化していくなかで、ひなのさんが大切にしているのは、「まず気持ちに気づくこと」だという。
「たぶんわたしは、子どもたちに必要以上に寄り添っちゃう傾向がある。子ども時代に自分がすごく寂しかったり悲しかったりしたから、子どもたちにはそういう思いをしてほしくなくて。息子とかがグズってたりすると、“もしかして傷つけてしまったのかな”と、すごく気になっちゃう。そんなときに助けられたのが『ニーズカード』でした。
 
トランプみたいなカードに、楽しかった、悔しかった、悲しかった、怖かった……といったさまざまな感情が一枚ずつ書いてあるんです。もう半分のカードには、“どうしたかったのか”というニーズが書いてある。例えば息子が激しく泣いているときに、『じゃあこれで教えて』と見せると、イエス・ノーで選んでいけるんです。『嬉しかった?』『違う』『悲しかった?』『そう』『悔しかった?』『そう』という具合に。選んだカードを並べて、『そっか、悔しかったんだね』『悲しかったんだね』『つらかったんだね』って、まずその気持ちを一緒に確認する。人って、自分の気持ちを“分かってもらえた”というだけで、少し落ち着けるじゃないですか。だから、そのあとで『じゃあどうしたかったの?』とニーズのカードも選んでいくと、だんだん感情が整理できていくんです」

大事なのは、そこに親がジャッジを入れないことだという。
「ただただ、“そういう気持ちだったんだね”と子どもの気持ちを受け取るだけ。『じゃあ次こうしよう』とか『それは違うよ』とか、そういうことは言わない。むしろ言わないほうがいいと感じていて。自分の気持ちを言葉にして伝えられるようになると、大人になってからも生きやすさにつながると思うんです。だからそれを、なるべく子どものうちから知っておいてほしいなって」
 
その積み重ねを感じた出来事が、友人たちと訪れた西表島で起こった。
「この間、下の2人を連れて西表島のオフグリッドのジャングルに行ってきたんです。そのときに、息子が同い年くらいの男の子に嫌なことをされて、すごく怒っていたんです。ロープで木に縛りつけられて、傷つくような言葉を言われたらしくて。わたしもそれを聞いて、『そっか、それは嫌だったよね』って話していたんですけど、そのあとどうするのかなと見ていたら、本人のところに自分でズンズン歩いていって」
 
そこで息子さんは、泣きそうになりながら、自分の言葉でこう伝えたのだという。
「『僕はすごく寂しかった。あんなことされて本当に悲しかった。一緒に遊んでいる意味がないじゃん』『なんで、嫌だって言っているのにやるの?』『僕は謝ってほしい』と、自分で交渉していたんです。それを見て、すごいなと思って。やり返すでもなく、怒鳴るでもなく、自分の気持ちをちゃんと相手に伝えていたから」
 
相手の子は、最後まで謝らなかった。それでも、息子さんは気が済むまで伝えたあと、自分でひとつ区切りをつけた。
「息子は、『もういいよ。許すけど、ちゃんと君が謝ってくれるまでは遊べない』と言って、わたしのところに戻ってきて。で、『ごめんねって言ってくれなかったけど、僕はもう許したから、他の子と遊んでくるね』って。それを見て、自分の気持ちをそこまできちんと伝えられたら、人はある程度“もういいや”と負の気持ちを手放せるんだなと。何も言えないまま抱えるより、ずっと穏やかでいられる」

人と自分は違うことを前提で生きる

子育ての中で大事にしていることをひとつ挙げるなら、何か。そう聞くと、ひなのさんは少し考えてから、こう答えた。
「たぶん一番大事にしているのは、“人と自分は違う”ということを最初から認めることかもしれないです。誰かに何を言われようと、それはその人の意見だよって。ママはこう思う。でも、あなたはどう思う? と、必ず聞くようにしてきました。子どもだからって、ただ従わせるんじゃなくて、その子自身の意見を持てるようになってほしくて」
 
そのスタンスは、学校とのやり取りにも表れている。
「息子の学校って宿題がすごく多いんですよ。でも息子は『やりたくない』と言う。だから私は、『やりたくないなら、やらなくていいよ』と伝えているんです。もちろん“サボっていい”ということではなくて、なぜやりたくないのか、自分で先生に話してみなよって。『月曜から金曜まで学校に行って、帰ってきて、もう十分勉強しているのに、いつ遊ぶの?』『僕は、いつ子どもらしい時間を持てるの?』と、そういうことを話し合っていいんだよって」
 
息子さんはなかなか言えず、最終的にはひなのさんが先生にメールをした。返ってきたのは、「宿題の量は減らせないが、やった・やらないは成績に関係しない」という返答だった。
「それを息子に伝えたら、とても驚いていて。『え、そんなにやらなくていいの?』って。だから、やる・やらないよりも、“ちゃんと話し合える”ということが大事なんじゃないかなと思いました。もちろん、学校では先生が『やってほしい』と言っているから、そこはまだ交渉中なんですけど(笑)。最終的には『学校のルールですから』という落としどころになったんです」
 
そして、その話を聞いた長女が、ふとこんなことを言ったのだという。
「『でもコミュニティって、誰かが入ってきて変わっていくことがヘルシーなんじゃない?』と言っていて。『全部のルールに最初から賛成できる人しか入れないコミュニティなんて、おかしくない?』『人はみんな違うんだから、誰かが入ってきて変わることが自然なんじゃない?』って。その考え方がわたしもすごく好きだなと思って。わたしが伝えてきたことは、彼女の中でちゃんと培われているって、改めて感じられた嬉しい出来事でした」
 
ひなのさんにとって子育てとは、何かを“正しく育てる”ことではなく、その子自身が、自分の感情や感覚をキャッチできる人でいてくれることなのかもしれない。
「自分を大切にするということは、どれだけ自分のことを知っているかだと思うんです。自分のことが分からないと、なんとなく我慢してしまったり、なんとなくこちらのほうがいいかなと流されたりして、あとから違和感になるじゃないですか。本当は嫌だな、本当はここまで踏み込まれるのは嫌だな、それが瞬時に分かるだけでも、人間関係は全然違ってくると思う。だから子どもたちには、“自分はどう感じているのか”をちゃんと知っていてほしいなと思っています」
 
子どもに望むことがあるとすれば、何かになることよりも、幸せでいられることだ。
「どんな大企業の社長になろうと、スポーツ選手になろうと、ヒッピーになろうと、本人が幸せで満たされて生きていればそれでいいと思っているんです。自分にとっての幸せとは何なのか、自分はどういう状態だと心地よいのか。それが分かっている人になってくれたら、それで十分だなって」

幸せそうに生きている背中を見せたい

もちろん、そうやって話すひなのさん自身も、いつも整っているわけではない。むしろ、自分にも波があることを、ちゃんと分かっている。
「わたし、月末になると必ず、理由のはっきりしない不安に駆られるというパターンがあるんです(笑)。だいたい生理前なんですけど。だから最近は、もう『また来たな』とネタにしていて。『はい、来ました』という感じで、自分で少し笑ったりしている」
 
とはいえ、月によっては思った以上に深く落ち込むこともある。
「そういうときは、なるべく動きたくないんだけど、逆にウォーキングしたり、ヨガしたり、少しからだを動かすと楽になることが多いです。温かいお風呂に入るとか、温かいお茶を飲むとか、本当にシンプルなことだけど、自分が少し心地よいと思えることをするようにしています。でも、たまにあるんですよ。『運動がいいのは分かっているけど、今日は歩くのも難しい』という日が。そういうときは、もう“今日は無理なんだな”と認めるしかない(笑)」
 
子育てをしながら、自分を後回しにし過ぎないこと。そのバランスもまた、この1年間で少しずつ見えてきたことのひとつだという。
「沖縄に来て1年間は、ほぼひとりで3人の子育てをしてきました。特殊な訓練を受けているようなハードな毎日(笑)。ひとりでも3人を育てられる証明は、1年間経ってみて、もう自分のなかで完結しました。だから今は、送り迎えをお願いしたり、遊んでもらったり、ごはんを作ってもらったり、頼れるところは頼るようにしています。誰かの手を借りることに、昔ほどためらいがなくなりました。
 
ひとりでなんでもできなきゃダメみたいな呪いの言葉が、自分の中にもあったんですよね。でも、もうそれはいいかなって。物理的に難しいことは、普通にあるし。それに、子どもって、お母さんが幸せそうに生きていることが一番の幸せに直結するという研究結果があるらしくて。ああ、それはよく分かると思って。近くにいる人が楽しそうに生きているだけで、こちらもなんとなく大丈夫かもと思えたりするじゃないですか」

だからこそ、これからは“ちゃんと楽しんでいる背中”を見せていきたいと話す。
「まずは、どこかに素敵な方がいたら紹介してください(笑)。そろそろ真剣に考えなければと思っているので」
 
そう言って笑うひなのさんの軽やかさに、少し救われる。母であることも、自分の人生を楽しむことも、どちらかを諦めなくていいのだと、そのひと言が教えてくれる気がした。ひなのさんは、子どもたちに“そのままでいていい”と伝えながら、同時に、自分自身にも同じことを少しずつ許しているのかもしれない。
「長女を妊娠したときに、このままではいけないと思ったんです。自分の生い立ちも、芸能界に入ってからのことも含めて、このままでは同じものを子どもに受け渡してしまうかもしれないって。だから、そのときに“これは自分で断ち切ろう”と強く思ったんです。本を読んだり、自分を客観視したり、なぜこう感じるのだろうと掘り下げてきた。たぶん、それがなければ同じことを繰り返していたと思う」
 
今もなお、その作業は続いている。
「わたし、本当に相当なレベルで我慢強いと思うんです。でも最近は、“なぜこんなに我慢できたんだろう”ということを逆に掘り下げていて。そこを全て手放していきたいなと思って、さまざまなワークに取り組んでいます。最近はヒプノセラピーもやっているんですけど、とても面白くて。自分が心の底で思っていることが、驚くほどすらすら出てくるんですよ。『ああ、わたしはこう思っていたんだ』と、腑に落ちることが多くて」
 
自分のことを知ること。それは、ひなのさんにとって、子どもたちに伝えたいことでもあり、自分自身に対して続けていることでもある。
「子どもたちにも、自分に対しても、“本当はどう感じている?”と、その問いかけを持ち続けることが、健やかに生きる力にもつながっていくはず」

otona MUSE 2026年6月号より

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