1. トップ
  2. 住まい
  3. 「これがあったから買ったのに…」マンション専用カーシェアで年間80万の赤字。廃止を巡り住民が対立した“150万円の壁”

「これがあったから買ったのに…」マンション専用カーシェアで年間80万の赤字。廃止を巡り住民が対立した“150万円の壁”

  • 2026.5.28
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産管理会社で10年以上現場実務に携わってきたマンション管理士のS.Kです。最近は街中でカーシェアリングの車両を見かける機会が増え、車を所有せずに必要なときだけ利用する生活スタイルが定着しつつあります。

マンションの共用施設として専用カーシェアが導入されるケースも珍しくありませんが、運用によっては思わぬ落とし穴が潜んでいるかもしれません。今回は中規模マンションで導入されたカーシェアが赤字化し、廃止を巡って居住者間で意見が割れてしまったエピソードを紹介します。

利用低迷で膨らむ赤字と居住者専用スキームの限界

築8年で150戸の都内マンションでは、新築時に「環境配慮型で車を持たない世帯にも便利」という触れ込みで、居住者専用のカーシェアが2台分導入されていました。これは管理組合が車両リース代や保険料、システム利用料を毎月固定で支払い、居住者からの利用料収入で相殺する仕組みです。

利用が増えれば収支は均衡する設計でしたが、実際の利用者は5〜7世帯にとどまります。稼働率は月間20%以下と低迷し、固定費を回収できずに管理組合の一般会計から年間約80万円の持ち出しが慢性化する事態に陥ったのです。

車を所有している住戸や利用しない住戸からは、稼働率が低い設備に管理費を投じ続ける現状を見直し、廃止を検討してはどうかという意見が上がりました。

合理的な計算と現状維持を選ぶ総会の決断

理事会で廃止に向けた議論が始まると、日常的に利用している世帯からは強い反対意見が寄せられました。「新築時からある便利な施設だから残してほしい」「これがあったから購入を決めたのに」といった声が並んだのです。

リース契約を中途解約するには約150万円の違約金が発生します。残りの契約期間3年で生じる約240万円の赤字を負担し続けるより、即時解約の方がトータルでは安く済む計算です。

しかし理事会では、一括で大金を取り崩すことへの抵抗感や利用世帯への配慮が重なり、即時廃止案の上程は見送る判断となりました。代わりに「リース契約満了まで現状維持とし、満了時に廃止する」案を総会に上程し、承認を経て決着する形となります。

付加サービスの定着と購入時の評価ポイント

新築マンションに設けられる豪華な施設や付加サービスは、分譲時の販売価値を高める目的で導入される傾向にあります。しかし、運用段階に入って利用が伸びず、管理費を圧迫するケースは少なくありません。

一度導入された施設は、利用世帯にとって日常的なインフラとして組み込まれていくため、廃止や縮小に向けた合意形成が難しくなります。長期修繕計画とは別枠で、共用施設運営計画を5年程度ごとに見直す枠組みを持つと、管理組合としての判断がスムーズに進むでしょう。

マンション購入を検討する際は、共用施設やサービスの魅力的な面だけでなく、運用フェーズでの稼働状況や費用負担も含めて評価しておくことをおすすめします。新築であれば長期修繕計画や分譲時の資料、中古であれば重要事項調査報告書や直近の総会議事録から、施設の稼働実態や議論の過程を確認しておきましょう。



ライター:S.K(マンション管理士)
不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わり、業界団体の評価制度策定委員会に所属していた経験がある。現在はライターとして、自身の豊富な経験・知見をもとに、一次情報を盛り込んだ不動産記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる