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『おひとりさまホテル』のマキヒロチ最新刊は、人間ドラマとグルメの掛け合わせ! おなかと心を満たす豊かな時間【書評】

  • 2026.5.1
人間ペアリング~おいしい週末~ マキヒロチ / スターツ出版
人間ペアリング~おいしい週末~ マキヒロチ / スターツ出版

【漫画】本編を読む

食事に合わせてワインを選ぶ「ペアリング」の魅力は、単体で味わってもおいしい料理にぴったりのワインをあわせることで、さらに深い味わいを引き出してくれるところにある。人間も、また同じ。誰と会うかによって最適なシチュエーションと料理が変わる。

マキヒロチさんの『人間ペアリング~おいしい週末~』(スターツ出版)は、食べることも飲むことも大好きなアラフィフの主人公が、さまざまなお気に入りのお店に、誰と行ったら楽しいだろうかとペアリングを楽しみながら、おなかも心も満たされていく物語。

おひとりさまも好きだけど、誰かと一緒に食べるごはんはやっぱり楽しい、と思うようになった主人公のセレクトセンスが抜群だ。定期的に会って近況報告をするワイン好きの友達とは、なじみのビストロ。恋愛関係にはならないことがわかっている、ほどよい距離感の男友達とは味が確かな立ち飲み屋。ニューヨークから遊びに来た久しぶりの友達とは、熱燗ペアリングもある伝統的な和と斬新さを融合したお店。

会話をはずませたいなら相手が心地よくその空間を味わってくれることが必要不可欠で、きっとこの味を好きになってくれる、あるいはおもしろがってくれると、確信できるお店を選んだほうが、より楽しい。それもまた、ひとつの思いやりであり、そして愛情の示し方なんじゃないだろうかと思う。

会いたいなあ、と思える相手がいるのは幸せだけど、このお店行ってみたいなあと思ったときに「じゃああの人を誘ってみよう」と思い浮かべられる顔がいくつかあるのも、幸せなことだなぁと思う。相手が変われば、話題も変わって、同じ料理でも、内装でも、注目する視点や感想も少しずつ新しくなる。ペアリングによる発見は、こりかたまっている心をほぐして豊かにしてくれる。おいしさが胃のなかで溶けてしまったあとも、その体験は記憶のなかにずっと残り続けるだろう。

そんな豊かな時間を、さまざまに紹介してくれる本作。登場する店がすべて実在しているのもうれしい。読みながらさっそく、いくつも行きたいお店リストに登録したが、それぞれのお店に誰と行くのが楽しいだろうかと想像するのも、また心が浮き立つ。

誰かと会うということは、さみしさを催すことでもあって、自分は停滞したままなのにどんどん先へ進んでいく人の話を聞いて羨むこともあれば、自分と比較してしまって落ち込むこともあるだろう。でも、それ以上に、その人が笑っていることがうれしい、ごはんを一緒に食べる時間をつないでいきたい、と願える相手がいることの尊さを忘れないようにしたいなあ、とも本作を読んでいると思う。

それに、ペアリングの可能性は無限に広がっていく。どんどんくみあわせを変えて、発見を重ねていけばいい。次の週末、どこに誰を誘おうか。このマンガをすすめたら、あの人はどこに行きたいと言うだろう。想像するだけでわくわくさせられる一冊である。

文=立花もも

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