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【2人に1人はなる病気】もしがんになったら? AI活用から死生観まで、幅広い知識が詰まった入門書『 がんは運である? 自分事として向き合うための手控え帖』【書評】

  • 2026.4.30
がんは運である? 自分事として向き合うための手控え帖 仲野徹/KADOKAWA
がんは運である? 自分事として向き合うための手控え帖 仲野徹/KADOKAWA

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日本人の2人に1人がなると言われる病気・がん。しかし「自分ががんになったら」と考えたことがある人は少ないのではないでしょうか? 自分が病気になる想像は縁起も悪い気がして、なかなかしないものだと思います。しかし先日、がんの告知を受けた知人の話を聞いて、告知後は治療法など、すぐに考えることがたくさんあるのだと知りました。

実は私もがんではないのですが、とある病気の告知を受けた身。その時の衝撃としばらくの落ち込みを考えると、その中で情報を集めて選択するのはすごく負担になるし、そもそも短期間で正しい判断ができる自信がないなと感じます。

そうならないために、あらかじめ正しい知識=がんリテラシーを知っておく必要があると説くのが『 がんは運である? 自分事として向き合うための手控え帖』(仲野徹/KADOKAWA)。がんとは何か・治療法にはどんなものがあるのかなどのがんに関する知識から近しい人ががんになった場合の受け止め方まで、大阪大学で病理学を教えてきた仲野徹氏の知識と経験が詰まった一冊です。

がんとはなにか、治療法を優しい言葉で解説

第一章「がんになったらどうするか」では、死亡率が低下することが証明されているがん検診の5例や、治療する病院を決める際の視点、“最新の治療”を謳う民間療法の問題点などを紹介。「がんかもしれない」という事態やその手前で考えること、知っておくべきことが網羅されています。特に病院選びについては、奥様が子宮体がんになられた際のことも振り返りながら述懐。初めての診察を申し込んだ日から手術まで約二か月かかったことなど、実体験だからこその具体的な話が印象的でした。

第二章の「がんとはどんな病気なのか」は、がんのメカニズムを説明。ピロリ菌・肝炎ウィルスなど感染によって発生するがんの仕組みについても解説します。「がんとは遺伝子の変異で生じる病気であるが、遺伝子の変異はなぜ生じるのか……」というような文系出身の私には難しい内容に最初は感じましたが、読み進められたのは著者のちょっとお茶目な文章のおかげ。全編を通して隣でお話ししてくれているかのような親しみやすい関西弁まじりの文章で書かれており、話が入ってきやすいところが本書の魅力です。

続く第三章は「がんは治るのか」として、がんの治療でよく聞く言葉“標準治療”、“放射線療法”、“免疫療法”などについて解説。治療法の選び方なども書かれています。

おそらく多くの人が一番気になるのがこの「どうすれば治るのか」という部分ではないでしょうか。第二章でがんのメカニズムが理解できたからこそ、この重要な部分を読み解き、自分で治療法を比較・検討できるようになるというのが本書の強みです。

 がんに関するデータが、図解でわかりやすく解説されている。
がんに関するデータが、図解でわかりやすく解説されている。

AI活用から死生観についてまで 幅広い知識を網羅

三章で驚いたのがインフォームドコンセント(医師から治療法の説明がされ、それに患者が同意し治療法を決定すること)の前にAIを活用するという紹介。医師から説明されるであろうこと、その疑問点を先にAIを使って予習しておくことで、インフォームドコンセントでより深い会話ができるとのこと。確かにこの使い方なら、AIが間違っていた場合も医師に正してもらうことができます。

第四章「自分事としての『親しい人のがん』」は自身の親族や友人ががんになった時のことを振り返り、第五章「あなたは決めることができますか?」と併せて死生観についても言及します。

実は本書には0章もあるのですが、そこで著者は『「がんは運やからしゃぁない」と割り切り、勇気を持って立ち向かうというミームも広がってほしい。この本を読み終えられた時、そういうミームを持っていただけていたら、何よりも嬉しい」と述べています。これは最初から割り切って考えるべきということではなく、知識をもって最善の選択をした上でそれでもがんになったなら、進行を止められなかったら、「あれが良くなかったのかも」と考えずに、「がんは運」だと割り切ることも必要だということ。

「やるべきことはやった」と思えるためにすべきなのは、まず敵=がんを知ること。必要な知識がぎっしり詰まったこの一冊が、もしもの時の手助けをしてくれるはずです。

文=原智香

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