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AIの悪用、SNSの誹謗中傷。法律で裁けないなら何をしてもいいのか? 池上彰が指摘する、法の限界とは…【書評】

  • 2026.5.1
法で裁けない正義の行方 池上彰 / 主婦の友社
法で裁けない正義の行方 池上彰 / 主婦の友社

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アメリカによる突然のイラン攻撃で世界に激震が走っている。「明らかな国際法違反」と指摘されても動じないトランプ大統領。権力者が「法」を軽視する姿に、「一体、法とは何か」と足元が大きくグラつくような危機感を覚える人は大勢いるだろう。

今回の武力行使は別格としても、実は多くの人が「おかしい」と倫理的に納得できないことが、法的には「問題なし」と判断されたり、法の穴を巧妙にすりぬけて放置されたりすることが私たちの社会には多数ある。さらにAIやSNSを悪用した世論を操る認知戦、さまざまなデジタル犯罪…社会の進化が早すぎて、今までの「法」では対処しきれないことも増えている。なんだか不穏な時代の中で、私たちは一体何を基準に「正義」を判断したらいいのだろう。ジャーナリスト・池上彰さんの最新刊『法で裁けない正義の行方』(主婦の友社)は、最新の時事問題を網羅しながら、法の限界とこれからの正義を考えていく一冊だ。

「正義」は普遍のものではなく、時代と共に変化もする

まずは「正義」というとゆるぎないものと思いがちだが、決してそうではないことを知っておこう。たとえばかつて女性の深夜勤務は原則禁止だったが(労働基準法〈旧第62条第1項〉)、それは「妊娠・出産のために女性の体を守ろう、過酷な勤務はさせないでおこう」という理由から。つまりこれが当時の正義だったわけで、現代から見れば隔世の感がある。さらに高度成長期は「企業のために“滅私奉公”で尽くすことが、結局は自分にも見返りがある“いいこと”」とされていたが、今は「自分を大事にしてハラスメントも我慢しない」のが当たり前。こうした意識変化も正義の転換といえるだろう。

テーマ「仕事」「教育」「暮らし」「司法・政治」「未来」

本書は「仕事」「教育」「暮らし」「司法・政治」「未来」の5つのテーマにわけ、たとえば「仕事編」では、公害・環境汚染、データ偽装・改ざん、ハラスメント、「教育」ではいじめ問題や少年犯罪の厳罰化、「暮らし」ではSNSの誹謗中傷問題、「司法・政治」では政治とカネといったように、いずれも実際の「社会問題」を実例に考えていく。わかりやすさに定評のある池上さんの誘導でスムーズに思考を続けると、ある意味、正義を軸に「社会の現在地点」を再整理できるのもありがたい。新社会人や就職活動中の人にも大きな力になりそうだ。

AI時代の正義の行方とは?

「テクノロジーの飛躍的な進化は私たちの社会に新たな利便性をもたらす一方で、人類がこれまで体験したことのない〈正義〉と〈倫理〉の問題を突きつけています」と池上さん。第5章の「未来」では、遺伝子操作、ゲノム編集、ドローン兵器の進化、AI…といった最新のテクノロジーをめぐる最前線の実情を紹介していく。法が未整備な中で世界はどう進むべきなのか、私たちひとりひとりがしっかり見極めていかなければならない問題だ。

日本国憲法が公布されたのは今からちょうど80年前。時代が変われば正義も変わるが、本書が教えてくれる「社会を見る力」は助けになるだろう。不穏な時代にひるむことなく、これからの正義の行方をあなたも考えてみてほしい。

文=荒井理恵

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