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クラシック界の革命児! ピアニスト角野隼斗のツアーに密着!

  • 2026.4.28
WAKABA NODA (tron)

2021年のショパン・コンクールで一躍注目を集め、ニューヨークへ拠点を移した角野隼斗は、その革新性と音楽性によって世界から熱視線を浴びるピアニストだ。

現代のクラシック音楽界では少数派となった、作曲を手がけるコンポーザー・ピアニスト、幼い頃から音楽と数学を愛し、東京大学大学院で情報工学を学んだ研究者、YouTubeを通じて155万人ものファンに音楽を届けるアーティスト・・・。 そうした横顔はすべて、彼の音楽や活動の多様性につながっている。カーネギーホール公演を絶賛されながら、大学在学中に結成したバンドでも日本武道館に行くアーティストなど、ほかに聞いたことがない。

ロックやポップスの大御所たちもファンを公言するピアニストはしかし、20歳くらいまで人の思考や内面にあまり関心がなかった、と語る。表現を模索しながら、音楽と人間の関わりについて考察を重ねた彼はこの春、原点であるショパンを主役にしたツアー「角野隼斗 全国ツアー2026 “Chopin Orbit” supported by ロート製薬」を完走した。愛知公演の翌日、その音楽の現在地について尋ねた。

憧れのアーティストが愛知公演に飛び入り参加!

1~3月、全国13カ所をまわり16公演を行った「角野隼斗 全国ツアー2026 ”Chopin Orbit” supported by ロート製薬」。ELLEは愛知公演直前のリハーサルに密着。 WAKABA NODA (tron)

ELLE 愛知公演は驚異的でした。クラシック・コンサートのラストで、まさかジョーダン・ルーデス(※) との白熱のセッションに立ち会えるとは。笑顔から楽しさが伝わりましたが、即興中はどんなことを考えているのですか?

(※プログレッシブ・メタルバンド「DREAM THEATER」のキーボード奏者。“キーボードの魔術師”の異名を持つ)

角野 セッションを思いついたのは、開演の1時間前です。「よかったら即興しませんか?」とメッセージを送ったら、快諾してくださって。ニューヨークでも何度かご一緒していたので、考えることといえばピアノの上下の入れ替えや、ラストのタイミングのことくらい。あとはただ、そこにある音に瞬時に反応していただけです。いかに五感をフルの状態にしておくかが、大切だと思っています。

ELLE ルーデス氏は、中学時代からの憧れだったそうですね。DREAM THEATERの音楽に出会ったきっかけはなんだったのですか?

角野 友だちに「The Dance of Eternity」のベースを耳コピしてほしい、と頼まれたのがきっかけです。(フレーズを歌う角野)。こういうかっこいいソロで、それに続くピアノ・ソロを、僕も弾きたくなった。変拍子のテクニカルな音楽が好きだったので、心に刺さったんだと思います。

ELLE 「音」への愛着が先だったのですね。今回のツアーもやはり、ショパンの「音」そのものを慈しむような構成。さまざまな鍵盤楽器を駆使したこれまでのツアーと異なる、ピアノ1台の潔さも印象的でした。

角野 今回の全国ツアー「Chopin Orbit」は19世紀のサロンで演奏しているショパンをイメージしていたので、クラシカルなスタイルでまとめました。2025年のツアー「Human Universe」やKアリーナで実験的な音楽を展開できたので、ここで一旦、原点に立ち返ろうと思ったんです。

WAKABA NODA (tron)
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ELLE 昨秋のカーネギーホールにつづいて挑んだ、Kアリーナでのリサイタルですね。動員数はもちろん、音と光が連動する舞台演出も話題になりました。

角野 オファーをいただき、巨大アリーナでピアノ・リサイタルを成立させるには何をすべきか、と考え込みました。幸運なことに同時期、クリエイターの真鍋大度さんと出会ったんです。Perfumeのステージ演出などを手がける真鍋さんとコラボレートして、音を視覚的に演出できたら、新しい可能性が広がるんじゃないかと思いました。スタインウェイのピアノ「Spirio」との出会いも大きかったですね。Spirioは鍵盤を弾くとタッチがデータ化されるので、リアルタイムで音と連動した映像が映し出せます。

ELLE バッハの《パルティータ第2番》や、ジョン・ケージの《プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード》を弾いたときの、音が視覚化されていく演出ですね。

角野 はい。バッハやケージの曲は、初見では難しめに聴こえます。けれど、聴き方のヒントが映像で提示できれば、それが入り口になって楽しめる人もきっといるはずだという期待がありました。それは自分がYouTubeを始めたときにも考えていたこと。音だけでは伝えられない情報が、動画では伝わる。演奏曲の調性や番号をリールに書くとか、そういう些細なことを含めて、動画のフォーマットを生かしてたくさんの人に音楽を届けたいと、ずっと考えてきました。

WAKABA NODA (tron)
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ELLE 昔、ピアノを習ったけどクラシックは敬遠している。そんな人が角野さんを動画で知り、公演に足を運び、たとえば爆発的なヒナステラに出会ってイメージを変えていく。そうした出会いは、クラシック音楽の未来にとって必要不可欠なものです。

角野 もともと、自分が社会に対してできることは、(情報工学の)研究と音楽をつなぐことだと思っていました。2018年、「ピティナ・ピアノコンペティション」でグランプリをいただいた頃から少しずつ変化し、'20年に大学院を卒業する頃には、やりたいことは音楽になっていた。クラシックで培ったものと、即興や編曲の活動を融合していくことに独自の方向性を見出したわけですが、やはりどこかで、異なるものをつなぎたいという思いはあるのかもしれません。

ELLE 伝統はそうした新しい視点によって継承されると思うのですが、多くの人にリーチした結果、勝手にラベリングされてしまう難しさもありますね。

角野 そうですね。僕自身も本来、演奏者は作品に対して透明であるべきという思いは強いです。音楽は、純粋に音楽であってほしい。楽譜を通して、作曲家が伝えたかったことのみを伝えたい。しかし今後、楽譜を正確に再現することはAIでもできるようになるでしょう。客観性を保ちすぎると、人間が演奏する意味がなくなってしまう。難しい問題です。

WAKABA NODA (tron)
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ELLE 人間が音楽を演奏する意味は、どこにあるのでしょう?

角野 突きつめると、自分が何を表現したいか、という欲につながるのかもしれません。実は僕は、20歳くらいまで人間の思考や内面にあまり関心がありませんでした。音楽を聴くときも、音や和声進行に夢中で、作曲者や演奏者のバックグラウンドは考えていませんでした。でも、音楽家として生きていこうと思い始めたとき、初めて「先人たちは何を思ってきたのだろう」ということに興味が湧いた。音楽だけじゃなく、高校の頃は何が楽しいのだろうと思っていた文系科目――歴史や地理や政治や言語にも興味を持つようになりました。そうしたら、音楽の聴き方が劇的に変わったんです。

ELLE どんな背景で、何を考え、どう表現したか、という視点が加わったのですね。

角野 はい。たとえばショパンは200年前の人ですが、その作品は言葉を語っているようです。それは作品や演奏者の力でもあると思うのですが、語った瞬間の呼吸と温度感が、そのまま作品に込められている感じがする。自分が演奏するときも、それを失いたくない。それを伝えるのが自分の役割だと、今は思います。もちろん、今もよく和声にグッときますが(笑)。どっちの聴き方がいいとかじゃなくて、複数の視点を持っていると、聴き方の幅が広がると思っています。

決断することが多いので、生活にはルールを決めています

WAKABA NODA (tron)

ELLE 2021年、初めてインタビューをしたときの「発信者の責任は、自分が音楽的に面白いと思ったことを妥協しない誠実さ」という言葉を思い出しました。

角野 自分が見つけた多方向の面白さを知ってもらうようなきっかけを、これからも作りたいです。

ELLE その芯は揺らがないと信じています。ところで、当時は朝が苦手だと言っていましたが、今朝の撮影は万全ですね。

角野 そうですね(笑)。ずっと「規則正しい生活」と縁遠く生きてきたのですが、今は時差移動も多いので、自然と朝型になりました。人生って、決断することが本当に多いですからね。考えなくても体が動くようにしないと壊れてしまいそうなので、決まりを大切にしています。

愛知公演翌日は、念願だった、1900年以上の歴史を誇る「熱田神宮」(愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1 <a href="https://www.atsutajingu.or.jp/" data-vars-ga-outbound-link="https://www.atsutajingu.or.jp/" data-vars-ga-ux-element="Hyperlink" data-vars-ga-call-to-action="https://www.atsutajingu.or.jp/">https://www.atsutajingu.or.jp/</a>)へ。神聖な空気のなかリフレッシュする時間に。 WAKABA NODA (tron)
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ELLE 具体的に聞かせてもらえますか?

角野 まず朝は8時に起きたい。9時近くになることもあるけど、8時台。ホテルの朝食は食べる。家にいるときはもっと簡素ですが、ヨーグルトかプロテインでタンパク質をとる。そして10時までにピアノの前へ。3時間練習して、ランチ。お昼寝30分。また3時間練習。夜は、ホテルのジムで30分くらい運動する。

ELLE 本当に規則正しい! 最近の滞在先で、印象的だった場所はありますか?

角野 ローマです。公演の合間、その日も午前・午後と練習したかったのですが、ローマでは2時から5時は昼休みで、スタジオが空いていない。空白の3時間で、街の中心部にある動物園に行きました。客も飼育員もまったくいなくて、動物だけが元気。孔雀が優雅に道を歩いている、ちょっと不思議で、幸せな空間でした。レスピーギのローマ三部作も聴きました。旅先で聴いた音楽は特別ですよね。

WAKABA NODA (tron)
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ELLE これから行ってみたい場所はありますか?

角野 南大西洋に浮かぶ孤島、トリスタンダクーニャ。海と山が同時に存在する場所が好きなので、シチリアも再訪したいです。瀬戸内海にある猫の島にも、いつか行ってみたい。

ELLE 音楽が生まれそうな風景ばかりですね。新たな音楽と、挑戦が楽しみです。

角野 ありがとうございます。これからも、出会いと発見を重ねていきたいです。

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角野隼斗/1995年、千葉県生まれ。3歳からピアノを始め、東京大学大学院在学中の2018年、ピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリを受賞し、演奏活動を本格化。'21年、ショパン国際ピアノコンクールのセミファイナリスト。'24年、ソニー・クラシカルとワールドワイド契約を結び、世界デビュー・アルバム『Human Universe』をリリース。'25年、初のカーネギーホール公演のほか、Kアリーナ横浜公演が屋内ソロピアノ公演のチケット販売最多数でギネス世界記録に認定。'26年は、1月に発売したアルバム『Chopin Orbit』を引っさげ、1月~3月、「角野隼斗 全国ツアー2026 “Chopin Orbit” supported by ロート製薬」を開催。その後、海外ツアーで世界をまわっている。

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エル・ジャポン6月号は現在発売中

角野隼斗が登場したエル・ジャポン6月号では、誌面だけでしか見れないカットも! ぜひチェックしてみて。

スウェットシャツ¥154,000 シャツ¥159,500 ジーンズ¥159,500 スニーカー¥121,000 (すべて予定価格)/以上セリーヌ(セリーヌ ジャパン)

photo WAKABA NODA/tron styling HARUNA KONNO hair & makeup MAIMI text MAI TAKANO editor KANAKO TAKAHASHI

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