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23年前に出版された“映画化、絶対不可能”小説「まさか実写化するとは」子役から活躍の“名俳優”主演の新作映画に期待

  • 2026.5.14

久坂部羊の小説デビュー作『廃用身』(幻冬舎文庫)は、2003年に出版された際、「映画化、絶対不可能!」が宣伝文句だったという。それから23年の時を経て、𠮷田光希監督、染谷将太主演で、ついに映画化が実現。“廃用身”とは、麻痺などが原因で、回復する見込みがなくなった手足のこと。その廃用身を切断する“医療”を“サービス”として提供する、危うい領域へと踏み込んでいく医師・漆原糾。そんな主人公を染谷が怪演するのが、映画『廃用身』だ。

リアルなヒューマンサスペンス映画『廃用身』

本作の原作者である久坂部羊は、外務省医務官を経て、現在は在宅訪問医として活躍している。小説『廃用身』は超合理的な内容の医療ミステリーで、強烈すぎる設定と、ギミックの効いた構成によって、世間をざわつかせることとなった。だが、現在の超高齢社会の日本においては、小説の中の物語が現実味を帯び、実際にあり得るかもしれないと思えることが怖い。まずは、映画『廃用身』の公式サイトから、ストーリーを紹介しよう。

ストーリー
<画期的な>デイケアを行う「異人坂クリニック」。“身体のリストラ”をされた老人たちは、身も心も軽くなる…?
ある町のデイケア「異人坂クリニック」に通うお年寄りの間で、漆原院長(染谷将太)が考案した“画期的な”治療が密かに広まっている。究極のコスパの良い介護を目指すその医療行為は、<廃用身>(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)をめぐる、従来の常識を覆すものだという。その結果、「身体も心も軽くなった」、「厳しい性格が柔らかくなった」などと予想外の“好ましい副作用”が現れたという。噂を聞きつけた編集者・矢倉は、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかける。しかしやがて、デイケアに関するとある内部告発が週刊誌に流出。さらに、患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していくーー。
出典:映画『廃用身』公式サイト
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廃用身を切断する“介護ケア”を、“Aケア”(Aは切断を表すAmputationの頭文字)と名付けた漆原。彼は“Aケア”が、当人と家族、さらに看護師や介護人にとって、物理的かつ経済的負担を減らす効果があると提案。切断は残酷だと思えるが、良い効果があるなら悪いことではないのかもしれないと思えてきてしまう。染谷が演じる漆原の穏やかな笑みは、相手に安心感を抱かせ、切断してもいいと思わせる説得力がある。

小説の読者からは「映画化に驚き」「まさか実写化するとは」という声がSNSに上がる一方、未読の人たちから「すごく気になる」「怖いけど観たい」「すごいテーマ」といったコメントが。染谷が主演を務めることについては「実力派俳優の演技はやっぱり安心感が違うよね」など、映画化への期待が高まっている様子だ。

まるでドキュメンタリーのような説得力がある作品

漆原は、老年期医療に可能性を感じ、“年だから治らない”と切り捨てず、高齢者の満足を追求しようと模索する。廃用身を切除すれば、身体が軽くなり、床ずれも減らすことができ、介護する家族や看護師の負担が軽減すると考えついた漆原。彼に説得され、手や足を切断することを決意した患者は、“憑き物がとれたみたい”だと喜んだり、“心も軽くなった”と笑顔になった。

そういった成功例が続く中、編集者の矢倉俊太郎(北村有起哉)は漆原の信念に惹かれ、彼に老年期医療の常識を揺るがす本を出版しようと持ち掛ける。漆原と矢倉からは、純粋な気持ちと熱意が伝わってきて、“Aケア”はとても良いものだと、どんどん思えてくる。主演の染谷と、共演の北村の熱演は、演技とは感じさせないリアルさがあり、まるでドキュメンタリーのようだ。

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だが、“Aケア”に揺るぎない信念を持つ漆原が、自信を抱くようになる一方、クリニック内には不信感を持ったり、心配したりするスタッフが現れる。それは、“Aケア”が良いものだと信じ始めた観客を我に返らせるきっかけとなる。

観る者を引き付け続ける名俳優・染谷将太

現在、放送中のNHK連続テレビ小説『風、薫る』に、ナイチンゲールが大好きな“看護婦見習い”東雲ゆき役で出演している中井友望。彼女は、映画『廃用身』で、廃用身の切断に積極的な漆原に不安を感じる看護師の内野を演じている。漆原を体現する染谷の名演技に引き込まれながら、中井が扮する内野は、観客を現実に引き戻す効果をもたらしていると感じた。

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子役から活躍してきた染谷は、2011年に映画『ヒミズ』で、第68回ヴェネツィア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞。当時19歳だった彼にインタビューしたのだが、物凄くしっかりとしたビジョンを持っていて、話の内容も興味深く、15年経っても忘れ難い取材となった。その後も、染谷にインタビューする度に、学ぶことが多い話を聞かせてもらえて、彼が名優だと実感する。

放送中のTBS金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』では、冷静沈着だが、内面に静かな狂気のようなものを秘めたキャラクターを演じている染谷。過酷な運命の中、優しさと家族愛を持つ人物像を見事に表現している。NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』では、喜多川歌麿を好演したことも記憶に新しい。さまざまな作品で観る者を引き付け続けている染谷の最新主演映画『廃用身』は、心に突き刺さる必見作だ。


※制作の裏側についてはプレス資料・公式サイトより引用

映画『廃用身』5月15日(金)公開
出演:染谷将太、北村有起哉、瀧内公美、廣末哲万、中村映里子、中井友望、吉岡睦雄、六平直政
原作:久坂部羊『廃用身』(幻冬舎文庫)
監督・脚本:𠮷田光希
配給:アークエンタテインメント
公式サイト:https://haiyoshin.com/
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ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X:@KumikoShimizuWP

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