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数学的にはタイムトラベルはパラドックスなしに行える可能性

  • 2026.4.25
タイムトラベルはパラドックスなしに行えると数学的に証明
タイムトラベルはパラドックスなしに行えると数学的に証明 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

私たちが知る限り、過去へのタイムトラベルに成功した人間は存在しません。

しかし、タイムトラベルの研究は、理論物理学の限界を探る試みとして現在でも盛んに行われており、多くの優れた科学論文が発表されています。

ただタイムトラベル理論には共通して「祖父殺しのパラドックス」問題がついてまわります。

タイムトラベルを行った人が、過去の世界で、まだ子供である祖父を殺してしまった場合、「祖父は存在しないはずの孫によって殺された」ことになり、因果の崩壊が起きてしまうからです。

しかしオーストラリアのクイーンズランド大学(UQ)で行われた研究によると、タイムトラベルで過去に行った人間は自らの自由意思に従って行動することが可能なものの、パラドックスを起こすような行動は修正され、パラドックスが発生しない結果に落ち着く可能性があるという。

しかし、過去でやりたい放題できるのに、なぜパラドックスは起きないのでしょうか?

今回はタイムトラベルの基礎理論を解説しつつ、研究成果の紹介を行っていこうと思います。

研究内容の詳細は、2020年9月21日に重力と時空理論の科学雑誌『Classical and Quantum Gravity』に掲載されています。

目次

  • タイムトラベルの基礎理論と自由意志の問題
  • 過去でなんでもできるがタイムパラドックスは起こらない

タイムトラベルの基礎理論と自由意志の問題

タイムトラベルの基礎理論と自由意志の問題
タイムトラベルの基礎理論と自由意志の問題 / Credit:Canva

タイムトラベルの基礎理論

タイムトラベルの理論的な基礎は、アインシュタインの考案した一般相対性理論に存在します。

一般相対性理論では「重力が空間や時間を歪める」とされており、時間は絶対的な「神様の時計」によって流れが一定に決められているのではなく、相対的であることが示されています。

以前に行われた研究でも、地表から数ミリほど原子時計を上昇させて地球の重力の影響をほんの僅かに弱めただけでも、時間の流れが加速していることが示されています。

(※強い重力圏の中では時間の流れが遅くなります)

では、重力が時間や空間を歪められるならば、重力の操作を工夫することで、世界線の開始点と終結点が繋がっている、ループ世界を作ることはできないのでしょうか?

一般相対性理論に従えば答えは「可能」であるようです。

右側が普通に時間が経過する世界線、左側が開始と終結が繋がっている閉じた世界線
右側が普通に時間が経過する世界線、左側が開始と終結が繋がっている閉じた世界線 / Credit:Benjamin K Tippett, David Tsang . The Blue Box White Paper

1949年、ゲーデルは一般相対性理論の方程式から、世界線の開始点と終結点が繋がっている閉じた世界線(時間的閉曲線)を可能にする解(ゲーデル解)を発見することに成功しました。

世界線が閉じている世界では、世界線の終わりを迎えた直後に世界線の開始地点に戻される、ある種のタイムトラベルが発生します。

そのため理論物理学では、タイムトラベルが可能であれば閉じた世界線を作成することも可能であると考えられています。

このゲーデル解はその後も研究が進められ、大質量の円筒を高速回転させることで時空を歪ませ特定の未来を過去の世界線に繋げる「ティプラーの円筒」の概念や「通過可能なワームホール」の理論が発見されることになります。

これらの成果は、一般相対性理論に関する限り、重力を制御することができればタイムトラベルが可能であることを示します。

理論物理学者たちが真剣にタイムトラベルを研究しているのも、理論的な裏付けが存在しているからだと言えるでしょう。

(※一般相対性理論の解から現れる時間的閉曲線(閉じた世界線)は、新たな視点から重力を解釈する量子重力理論や素粒子論によって将来的に排除されると考えている研究者たちもいます)

しかし既存の理論ではタイムトラベルに付随する「祖父殺しのパラドックス」を解決することはできませんでした。

祖父殺しのパラドックスはアインシュタインの方程式を検討したり重力制御装置を開発したりするのとは別次元の、人間の自由意志にかかわる問題だったからです。

私たちは過去改変を自由意志で行えるのか?

私たちは過去改変を自由意志で行えるのか?
私たちは過去改変を自由意志で行えるのか? / Credit:Canva

祖父殺しのパラドックスが根深い問題であるのは、古典物理において基礎となる原因と結果の関係を破壊してしまうからです。

祖父殺しのパラドックスが起きてしまうと「祖父は子孫を残さず「未来の子孫に」殺された」という、滅茶苦茶な結果がうまれてしまいます。

このような因果の破綻は、タイムトラベルの基礎となる一般相対性理論をも否定することにつながります。

この厄介な問題に対処するために考案されたのが「ノヴィコフの首尾一貫の原則」です。

この仮説では、タイムトラベラーが何をしようと、その全ては既に歴史の一部として織り込まれているとされています。

宇宙が誕生してから銀河や星ができて、生命が誕生し、人類がうまれる全ての過程が運命づけられているのだから、人類がこれから何を行おうともパラドックスは発生しないという決定論的な考えです。

ノヴィコフの首尾一貫の原則では、人間の自由意志は幻であるとされており、ある人間がどんなに滅茶苦茶な行いに出たとしても、宇宙開闢と星々の形成に続く、予定された出来事とみなされます。

確かに私たちの脳の神経回路は、宇宙の物理法則に従って動いており、私たちが自由意志と思っている何かは、投げたボールが落ちるように宇宙の運命の一部なのかもしれません。

しかし新たに行われた研究では、タイムトラベルっで過去に行った人間の自由意志とパラドックスの問題を同時解決することが目指されていました。

過去でなんでもできるがタイムパラドックスは起こらない

時空間連続体は任意の数の決定論的プロセス(運命)を内包できる
時空間連続体は任意の数の決定論的プロセス(運命)を内包できる / Credit:Canva

新たに行われた研究はタイムマシンの作り方を発表しているわけではありません。

代わりに、開始と終結が繋がっている閉じた世界線(時間的閉曲線)で自由意志にもとづいて行動した場合の、世界線に与える影響について数学的な解明を行っています。

アインシュタインの方程式によれば、閉じた世界線の存在はタイムトラベルの可能性へとつながります。

そのため閉じた世界線での人間の自由意志を数学的に解明できれば、タイムトラベルに付随する祖父殺しのパラドックスを理解することが可能です。

結果、閉じた世界線(時間的閉曲線)は非常に複雑なシステムを構築可能であり、タイムトラベルでも自由意志による選択が可能だと判明します。

(※より専門的には「時空間連続体は任意の数の決定論的プロセス(運命)を内包できる」となります)

ただし同時に、閉じた世界線やタイムトラベルがどんな選択をしても、世界の出力が固定されている限り、タイムパラドックスは起こらないことも明らかになりました。

例えば、もしある人間が過去に戻って新型コロナウイルスの最初の感染を阻止したとしても、新型コロナウイルスは別の感染者を通じて感染をはじめるため、結局は世界的なパンデミックは防げないことになります。

もし未来が変わってしまった場合、そもそもタイムトラベラーが過去へ行く動機自体が失われてしまいますが、ここではタイムトラベラーは過去に行って感染を阻止するという動機も失われないため、タイムパラドックスは回避され続けます。

研究者たちは「タイムトラベラーは過去で好きなことを自由に行えますが、常に調整の力が介入して、パラドックスが回避される」と結論しています。

数学的な話ではありますが、ドラえもんのエピソードなどを思い出すと、過去にタイムスリップして未来を変えようとした行動が逆に裏目に出て、変えたかった未来に繋がってしまう、なんて展開が描かれているので、人間が自由意志で行動しても未来が変わらないという状況はイメージしやすいかもしれません。

参考文献

Young physicist ‘squares the numbers’ on time travel
https://www.uq.edu.au/news/article/2020/09/young-physicist-squares-numbers%E2%80%99-time-travel

元論文

Reversible dynamics with closed time-like curves and freedom of choice
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6382/aba4bc

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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