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対立中に「泣く」ことは、相手と自分の評判を損なう“諸刃の剣”だった

  • 2026.4.14
言い争いで泣くと、自分と相手の評判を損なう / Credit:Canva

会社や学校、親族の集まりなどで、誰かと言い争いになったり、対立したりするかもしれません。

そんな時に「泣く」ことは、当人と相手にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

アメリカ・ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)の研究では、対立の場で泣くことは、自分の評判を下げる一方で、相手の評判も下げやすい傾向があることが示されました。

まさに、自分も相手も傷つけうる“諸刃の剣”だったのです。

この研究は2026年3月24日、学術誌『Evolution and Human Behavior』に掲載されました。

目次

  • 冷静に振る舞う人の評判は守られ、泣いたり怒ったりする人の評判は下がる
  • 「涙」は自分の評判が傷つくが、相手の評判も傷つける

冷静に振る舞う人の評判は守られ、泣いたり怒ったりする人の評判は下がる

人と人との対立には、感情がつきものです。

腹が立って声を荒らげることもあれば、悲しさや悔しさがこみ上げて涙が出ることもあります。

これまでの研究では、泣いた人や怒った人が周囲からどう見られるかが主に調べられてきました。

今回の研究が新しいのは、その反応が「相手の印象」まで変えるのかを調べた点です。

研究チームは、3000人を超えるアメリカの成人を対象に、5つの研究を行いました。

最初の3つの研究では、参加者に職場、恋人関係、友人関係、近隣トラブル、チーム内の衝突など、さまざまな対立場面を読んでもらいました。

そこで登場人物が示す反応だけを、「怒鳴る」「泣く」「冷静に振る舞う」の3種類に分けて比較したのです。

参加者はその後、感情を表した本人と、その相手の両方について評価しました。

職場の場面では「どれだけプロらしく見えるか」、私的な場面では「どれだけよい関係相手に見えるか」、さらに「どちらが責められるべきか」といった点も調べています。

結果はかなり一貫していました。

まず本人の評価については、最も高く評価されたのが「冷静に振る舞った人物」でした。

泣いた人物はその次で、最も低く評価されたのは怒鳴った人物でした。

つまり今回の研究では、泣いたり怒鳴ったりする反応は、冷静な反応よりも本人の評判を下げやすかったのです。

ところが、相手側の評価を見ると別の傾向が現れました。

泣いた人物がいると、その相手はより悪く見られやすかったのです。

周囲は「泣いた人」だけでなく、「その人を泣かせた相手は何をしたのだろう」とも考えるためです。

研究はここで終わりません。さらなる実験と結果を次項で見ていきましょう。

「涙」は自分の評判が傷つくが、相手の評判も傷つける

続く研究では、参加者に「もし自分がその対立の当事者だったら」と想像してもらい、自分が泣くか、怒鳴るか、冷静でいるかを考えさせました。

さらに、それぞれの反応が自分と相手の評判にどう響くと思うかも答えてもらいました。

すると参加者は、冷静でいることが最も自分の評判を守りやすいと考えていました。

一方で、泣くことは自分の評判を下げるものの、相手の評判を最も傷つけやすいと予想していました。

つまり人々は直感的に、「冷静さは自分を守るが、涙は相手にも不利益を与えやすい」という構図をある程度わかっていたのです。

さらに最後の研究では、参加者に実際の過去の対立経験を思い出してもらいました。

相手が泣いた場面、怒鳴った場面、冷静だった場面を振り返ってもらい、その時に自分がどれほど罪悪感を抱いたか、また中立的な第三者なら自分と相手をどう見ると思うかを答えてもらったのです。

その結果、相手が泣いたときには、参加者はより強い罪悪感を感じやすくなっていました。

また、中立的な観察者から見ても、自分のほうが不利に見られるだろうと感じる傾向も強くなっていました。

これらの結果をまとめると、少なくとも今回の研究では、冷静に振る舞う反応は自分の評判を比較的守りやすいこと、泣く反応は自分にも不利益をもたらしつつ、相手の評判まで下げやすいことが示されています。

反対に、怒鳴る行為は評判という面では最も不利で、相手の評判を下げる効果もあまり強くありませんでした。

もちろん、この研究には限界もあります。

前半の研究の多くは想定シナリオを使っており、現実の対立の激しさや複雑さをそのまま再現したものではありません。

また、参加者はすべてアメリカ在住であり、感情表現への評価は文化によって変わる可能性もあります。

研究チームは、今後はより現実に近い状況や、文化の異なる集団でも確かめる必要があると述べています。

それでもこの研究は、対立の場で流れる涙は、自分の評判を傷つける一方で、相手の評判まで揺らしかねない、まさに“諸刃の剣”であることを教えてくれます。

仮に、自分の評判を気にしない”捨て身の人”であれば、「涙」は相手を陥れる最強の武器となるかもしれません。

参考文献

Crying during a conflict damages your opponent’s reputation at a cost to your own
https://www.psypost.org/crying-during-a-conflict-damages-your-opponents-reputation-at-a-cost-to-your-own/

元論文

Stoic displays have reputational benefits but fail to undermine adversaries
https://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2026.106858

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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