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突然、“激しい腰と背中の痛み”で救急搬送→緊急手術で一命を取り留めるが…50代男性に告げられた“恐ろしい病”【医師は見た】

  • 2026.6.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。緊急手術をはじめとして大血管の危機に日々向き合う麻酔科専門医の松岡雄治です。今回は、腹部の大動脈が膨らみ、破裂してしまったケースをご紹介します。

「のけぞるようにするとお腹がドクドク脈打つように感じるけど、痛くはないな。お腹が動いているだけだろう」
50代男性の会社員Aさん(仮名)は、仕事の合間に喫煙所で伸びをしてふと思いました。同僚と話している間に、そのことも忘れ、気にも留めずにいつも通り忙しい毎日を送っていました。

しかし、数年後、突然の激しい腰と背中の痛みに襲われ救急搬送されます。医師から「腹部大動脈瘤の破裂」と告げられ、緊急手術の末、一命は取り留めました。現在は、厳格な血圧管理のもと社会復帰しましたが、再発の恐怖を感じています。なぜ「痛くないお腹のしこり」がこれほどの悲劇を生んでしまったのでしょうか。

「痛みのないしこり」が脈打ち、破裂する仕組み

なぜ「痛くないお腹の拍動」が、「大出血によるの命の危機」を招くのでしょうか。それは、お腹の中心を通る一番太い血管が、風船のように限界まで膨れ上がり、破裂するためです。

【腹部大動脈瘤が破裂するフロー】

  • 血管壁の劣化(瘤の形成):高血圧や加齢によって大動脈の壁が脆くなり、血圧に耐えきれなくなると、加熱したお餅のように一部が膨らんで瘤(こぶ)ができます。
  • 無症状での増大:瘤が大きくなっても痛みはありません。仰向け時に「心臓の鼓動に一致してドクドクするしこり」として触れる程度で静かに進行します。
  • 限界を超えた大破裂:血管の壁の限界を超えて膨らみ、血管が破裂すると、お腹の中に大量の血が噴き出し、瞬く間に命を脅かすショック状態へ陥ります。

「ただのしこり」という思い込みと、破裂を早める危険な習慣

「お腹がドクドクするのは胃腸が動いているだけだ」「痛くもないから大丈夫、ただのしこりだろう」。そう考えて、受診をためらうのは無理もないことです。

心臓から出て、全身に血液を運ぶ血管のうち、最も太い血管である大動脈は木の幹のようなものです。通常、胸の部分では3cm、お腹の部分では2cm程度の太さがあり、これらがそれぞれ1.5倍を超えると胸部大動脈瘤(腹部大動脈瘤)として扱われます。

そんな太い血管が破裂してしまうと、そこからは瞬く間に多量に出血してしまいます。実際に、腹部大動脈瘤が破裂した場合、病院にたどり着く前に命を落とすことも多く、全体の死亡率は80〜90%に達します。運良く緊急手術を受けられたとしても、決して救命の保証はないという恐ろしい病気なのです。

さらにここに拍車をかけるのが、タバコです。喫煙は血管を痛めつけ、破裂リスクを非喫煙者の5倍まで跳ね上げます。

重症化を防ぐために、確認すべき3つのサイン

破裂する前に、ご自身のお腹の状態を振り返ってみてください。以下のサインがある場合、それは胃腸の問題ではなく、大血管がパンパンに膨れ上がっているサインかもしれません。

1. 仰向けや、後ろに反った姿勢で、おへその周りに脈打つ「しこり」がある

膨張した大動脈瘤が、皮膚越しに直接触れている危険なサインです。

2. ご家族に腹部大動脈瘤の既往がある

ご家族に同じ病気の方がいらっしゃる場合には、発症のリスクが高くなるとされています。気になることがあれば検査を受けてみましょう。

3. お腹の違和感とともに、「強い腰・背中の痛み」がある

すでに瘤から血液が漏れ出し始めている(切迫破裂)極めて緊急性の高いサインかもしれません。

サインに気がついたらすぐに病院へ

「痛くないから放っておこう」と考えてしまうことは無理もありません。またこの病気は、自覚症状に乏しい特徴もあります。そのため、ほとんどの方は健康診断や、他の病気について受診して検査をする過程で見つかっているのが実情です。

一方で、破裂した場合には半数は病院に辿り着けずに亡くなってしまう病気でもある、非常に怖い病気だということを覚えておいてください。

腹部大動脈瘤は、破裂する前に超音波検査などで早期に発見すれば、血圧管理や、お腹を切らないカテーテル治療(ステントグラフト内挿術など)で安全に破裂を防ぐことができます。「お腹のドクドクが気になるな」と感じたら、まずはお近くの循環器内科や血管外科にお気軽にご相談ください。何もなければそれに越したことはありません、命のやり取りになる前に早めに対応できるよう、不調や違和感を大切にしましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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