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『築35年の一戸建て』で暮らす70代父→「実家は長男に譲る」と言っていたが…父の死後、50代長男を待ち受けていた“相続の盲点”

  • 2026.6.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

親が元気なうちに「実家は長男に譲るつもりだ」と話していても、その言葉だけで相続の手続きが決まるわけではありません。特に、財産の中心が自宅不動産で、預貯金が多くない家庭では、家を引き継ぐ人と現金を受け取れない人の間で不満が出やすくなります。

今回は、父の生前の言葉を信じていた家族が、相続後に思わぬ対立に直面した事例をもとに、実家相続で見落としやすい点を解説します。

父の「長男に渡す」が、兄弟げんかの始まりに

70代の父は、地方にある築35年の一戸建てで暮らしていました。相続人は、50代の長男、40代の次男、40代の長女の3人です。

長男は父の家から車で約20分の場所に住んでおり、週に2〜3回ほど様子を見に行っていたそうです。月2回の通院では、病院への送迎や薬の受け取りも長男が担っていました。一方、次男と長女は県外に住んでおり、実家へ戻るのは年に1〜2回ほどでした。

父は親族が集まるたびに、「この家は長男に任せるつもりだ」と口にしていたそうです。長男も、その言葉を聞いていたため、将来は自分が実家を引き継ぐものだと思っていました。

しかし、父が亡くなったあと、法的に有効な遺言書は見つかりませんでした

残された財産は、評価額の目安で約1,200万円の実家と、預貯金約300万円です。
実家には、固定資産税が年約8万円かかっていました。火災保険料や小さな修繕費を含めると、維持費は年間15万円前後です。

さらに、葬儀費用として約150万円、未払いの医療費や施設利用料として約30万円が必要になりました。その結果、手元に残る預貯金は約120万円です。

実家1,200万円と預貯金300万円を単純に合わせると、財産は約1,500万円になります。相続人が3人であれば、1人あたり約500万円が一つの目安です。

ただし、実際には葬儀費用や未払い費用、不動産の評価方法などを踏まえて考える必要があります。

長男は「父は自分に家を渡すと言っていた」と主張しました。これに対し、次男は「口約束だけで実家を全部もらうのは納得できない」と反発します。長女も「介護を長男に任せていた面はあるが、相続分がほとんどないのは不公平だ」と感じました。

長男としても、数年間にわたって通院や買い物を手伝ってきたため、「実家を引き継ぐのは自然な流れではないか」という思いがありました。

長男が実家を受け取るなら、次男と長女とのバランスを取るために、代償金の話が出る可能性があります。しかし、長男の貯蓄は約200万円です。自宅の住宅ローンも残っていたため、次男と長女から数百万円から約700万円(次男・長女に各350万円程度)の支払いを求められても、すぐに用意できる状況ではありませんでした。

実家は、現金のようにきれいに3等分できません。売れば分けやすくなりますが、長男は「父の思いを考えると売りたくない」と考えています。一方で、次男と長女は「住まない家の税金や修繕費まで負担したくない」と感じていました。

こうして、実家を残すのか、売却するのか、誰が費用を負担するのかをめぐり、兄弟の話し合いは長期化してしまいました。

口約束では決まらない…実家相続の盲点

親が生前に「家は長男に」と話していても、それだけで相続手続きが完了するわけではありません。正式な遺言書がなければ、相続人同士で財産の分け方を話し合う必要があります。

特に注意したいのは、財産の大半が不動産に偏っているケースです。預貯金が十分にあれば、長男が実家を取得し、次男と長女が現金を受け取る形にしやすくなります。

しかし、今回のように実家の評価額が約1,200万円、預貯金が約300万円という内容では、家を受け取る人に財産が大きく寄りやすくなります。

そこで検討される方法の一つが、代償分割です。これは、実家などの分けにくい財産を一人が受け取り、その代わりに他の相続人へ金銭などを渡して調整する方法です。ただし、支払う側に十分な資金がなければ、現実には使いにくい方法でもあります。

また、「とりあえず兄弟で共有にする」という選択にも注意が必要です。共有にすると、その後の売却、修繕、管理費の負担などで全員の意見をそろえる必要が出てきます。その場では決着したように見えても、次の相続で関係者が増え、問題が複雑になることもあります。

実家を残すなら、元気なうちの準備が重要

実家相続では、「親が誰に渡したいか」だけでなく、「他の相続人がどこまで納得できるか」を考えておく必要があります。
父が本当に長男へ実家を引き継がせたいのであれば、遺言書を作っておくことが現実的な対策になります。

もっとも、遺言書があれば必ず揉めないわけではありません。仮に父が「実家は長男に相続させる」と書いていたとしても、他の子どもには遺留分(一定の法定相続人に最低限保障されている遺産の取得割合)があります。そのため、特定の相続人に財産を多く渡したい場合は、他の家族への配慮も欠かせません。たとえば、長男が実家を受け取る代わりに、生命保険や預貯金で次男・長女に渡せる資金を用意しておく方法があります。

また、生前に話し合うなら、「誰が家を受け取るか」だけで終わらせないことが大切です。
代償金を払えるのか、売却する場合は誰が手続きを進めるのか、空き家になったときの税金や修繕費を誰が負担するのかまで確認しておく必要があります。

「家族で話しているから大丈夫」と考えるだけでは、相続後に意見が分かれることがあります。遺言書、現金の準備、不動産の扱いを早めに整理しておくことが、実家相続の争いを減らす第一歩です。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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