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『退職金2,000万』を受け取り→住宅ローンの完済に充てるが…4年後、60代男性を直撃した“想定外の大誤算”【お金のプロは見た】

  • 2026.6.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、家計・資産形成・相続など、お金に関するご相談をお受けしている、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

退職金が入ると、まず住宅ローンや借入金をなくしたいと考える方は多いものです。返済が消えれば、毎月の家計は軽くなり、「これで老後は安心」と感じやすくなります。

しかし、退職後の生活では、毎月の支出だけでなく、数年に一度の大きな支払いにも備える必要があります。住宅の修繕、家電の買い替え、医療や介護に関する費用などは、ある日まとまって出てくることがあります。

今回は、退職金で借入金を完済したあと、手元資金の少なさに不安を感じた60代夫婦の事例を紹介します。

返済は消えたのに、通帳残高を見るのが怖くなった

Aさんは64歳で定年退職し、退職金として約2,000万円を受け取りました。妻は62歳で、夫婦2人で持ち家に暮らしています。

退職した時点で、自宅の住宅ローンは約1,080万円残っていました。返済期間はあと9年、毎月の返済額は約10万2,000円です。数年前に組んだリフォームローンも約230万円残っており、こちらは毎月約2万8,000円を返していました。

つまり、2つのローンを合わせると、毎月約13万円が返済に出ていたことになります。

Aさん夫婦は、年金生活に入る前に借金をなくす方が安心だと考えたそうです。そこで、退職金から住宅ローン約1,080万円とリフォームローン約230万円を一括で返済。合計約1,310万円を完済に充てました。

その後も、退職直後の出費が続きます。古くなっていた浴室の修理に約75万円、冷蔵庫とエアコンの買い替えに約42万円、親族へのお返しや夫婦での旅行に約85万円を使いました。

退職金2,000万円のうち、1年ほどで使った金額は約1,512万円です。手元に残ったお金は約488万円でした。

ローン完済後、毎月約13万円の返済はなくなりました。Aさん夫婦の年金収入は合計で月約22万5,000円です。一方で、食費、光熱費、通信費、保険料、車の維持費、固定資産税などを含めると、生活費は月約26万円かかっていました。

毎月の不足は約3万5,000円。1年では約42万円です。それでもAさんは、借金がなくなり、退職金もまだ500万円近くあるため、しばらくは問題ないと考えていました。

ところが、退職から4年目に支出が重なります。屋根の補修に約145万円、給湯器の交換に約29万円、妻の白内障手術や通院、付き添い交通費などに約18万円、車検とバッテリー交換に約19万円、洗濯機の買い替えに約16万円が必要になりました。

これらを合計すると約227万円です。さらに、退職後3年間で毎月の不足分として約126万円を取り崩していたため、手元資金は約135万円まで減ったそうです。

借金はゼロです。毎月の返済もありません。それでもAさんは、通帳残高を見ながら「返済をなくしたはずなのに、どうしてこんなに心配なのか」と感じるようになりました。

老後資金は「返済後の残高」で考える

退職金で住宅ローンを返すこと自体は、間違いではありません。毎月の返済がなくなれば、家計の固定費は下がります。金利負担を減らせる点も利点です。

ただし、退職金の多くを一度に返済へ回すと、自由に使える現金が大きく減ります。老後の家計では、この現金部分がとても重要です。

注意したい支出は、たとえば次のようなものです。

  • 屋根や外壁などの住宅修繕で100万円以上かかることがある
  • 給湯器、エアコン、冷蔵庫などの交換で20万〜50万円程度かかることがある
  • 入院や通院、介護用品、住宅改修、介護保険の対象外費用が出ることがある
  • 持ち家でも固定資産税、火災保険料、修繕費は続く

毎月の返済がなくなっても、急な支払いに使える現金が少なければ、安心感は長く続きません。

Aさん夫婦の場合、完済によって毎月約13万円の返済は消えました。一方で、退職後1年ほどで手元資金は約488万円まで減っています。その後、毎月の赤字と大きな修繕費が重なり、数年で現金は大きく減りました。

老後の安心は、「借金がないこと」だけでは決まりません。いざというときに使えるお金をどれだけ残せるかも、同じくらい大切です。

退職金の使い道は順番が大切

退職金でローンを返すかどうかを考えるときは、先に「返した後の生活」を見ておく必要があります。

確認したいのは、主に次の3点です。

  • 完済後に、少なくとも生活費1年分、できれば1〜2年分の現金が残るか
  • 近いうちに住宅修繕、車の買い替え、医療や介護の支出が見込まれないか
  • 年金収入だけで毎月の生活費をどこまで払えるか

夫婦の生活費が月26万円なら、1年分で312万円、2年分で624万円です。さらに住宅修繕や医療・介護の予定があるなら、その分は別に考えておきたいところです。

金利が高いローンや返済期間が長く残るローンでは、繰上返済の効果が大きくなる場合があります。一方、金利が低く、返済額も家計に無理のない範囲であれば、全額返済ではなく一部だけ返す方法もあります。

退職金は、受け取ったあとに同じ規模で再び入ってくるお金ではありません。だからこそ、借金をなくすことだけを目的にせず、返すお金と残すお金のバランスを見ながら使い道を決めることが大切です。

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