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80代母の介護で“費用360万”を立て替え→『近くに住んでいるから』と対応してきたが…母の死後、50代長男が直面した“想定外の事態”

  • 2026.6.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 IFAの石坂です。

親の介護が始まると、施設への支払い、通院費、薬代、日用品代など、さまざまなお金が必要になります。そのとき、近くに住む子どもが「とりあえず自分が払っておこう」と対応することがあります。家族のための支払いだからこそ、細かく記録しないまま進めてしまうケースもあるでしょう。

しかし、そのお金が「親の費用を一時的に立て替えたもの」なのか、「子どもが自分の意思で出した援助」なのかが曖昧だと、相続の場面で問題になることがあります。

今回は、母親の介護費を月10万円ほど負担していた50代会社員の事例から、家族間のお金の扱い方を考えます。

善意で払った月10万円…相続で問われた「証拠」の有無

50代男性会社員の

Aさんは、80代の母親の介護に関する支払いを引き受けていました。

母親の年金は月12万円ほどです。

一方で、入居先の施設利用料、通院費、薬代、日用品代などを合わせると、月20万円前後になる月もありました。

足りない分について、Aさんは自分の給与口座から支払っていました。「近くに住んでいる自分が対応するしかない」と考えていたためです。負担額は毎月おおむね10万円。この状態が3年ほど続いたため、合計では約360万円になります。

Aさんには弟と妹がいました。

ただ、2人とも遠方に住んでいたため、母親の施設との連絡、通院の付き添い、日々の支払いは、ほぼAさんが担っていました。Aさんは、母親が亡くなった後の相続で、自分の負担をきょうだいが理解してくれると思っていました。

ところが、母親の預貯金約1,200万円を分ける話し合いになったとき、弟と妹の反応は想定と違いました。

「兄さんが自分で出すと決めたお金ではないのか」

「母のための支払いだと分かる資料はあるのか」

「介護を手伝ったことと、相続分を増やすことは別ではないか」

Aさんは、施設利用料の領収書は一部残していました。しかし、日用品代、交通費、細かな現金払いについては、十分な記録がありません。通帳には毎月10万円前後の出金がありました。ただし、その出金だけでは、母親の介護費に使ったと明確に説明するには不十分でした。

Aさんは「自分だけが長年負担してきた」と感じました。一方、弟と妹は「急に360万円と言われても確認できない」と受け止めました。こうして、母親のために払ってきたはずのお金が、相続時の不信感につながってしまったのです。

立替金なのか、寄与分なのかで扱いは変わる

親の介護費や医療費を子どもが払っていたとしても、それだけで当然に相続分が増えるわけではありません。

ここでは、まず「立替金」と「寄与分」を分けて考える必要があります。立替金とは、本来は親が負担する費用を、子どもが一時的に代わりに支払ったお金です。

この場合、「相続で多くもらう」というより、相続人同士の話し合いで、その支払いをどのように整理するかが問題になります。ただ、立替金として扱ってもらうには、支払いの内容を説明できる資料が欠かせません。

施設や病院の請求書、領収書、銀行振込の履歴、支払い内容を記したメモなどがあると、話し合いが進めやすくなります。さらに、親の判断能力があるうちに、「この支払いは立替である」と家族で共有しておくと、後の誤解を減らせます。

一方、寄与分は別の考え方です。

寄与分は、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した場合に、相続分を調整する制度です。介護でも寄与分が問題になることはあります。

ただし、通常の親族間の助け合いを超える事情が必要です。たとえば、単に費用を出していた、通院に付き添っていた、近くで様子を見ていたというだけで、必ず認められるものではありません。

また、相続人ではない親族が介護などで特別に貢献した場合は、一定の要件のもとで、特別寄与料という制度が問題になることもあります。ただ、今回のAさんは母親の子どもであり、相続人です。そのため、中心になるのは、立替金として説明できるか、または寄与分として評価される事情があるかという点です。

介護が始まった段階で、誰が何を払うのかを家族で確認しておくことが重要です。親の年金や預貯金から出す費用、子どもが一時的に払う費用、子ども自身の負担として出す費用を分けておくと、相続時の説明がしやすくなります。

介護費を揉め事にしない準備

FPの立場で見ると、介護費の問題は「誰がどれだけ払ったか」だけではありません。大切なのは、お金の流れを家族が後から確認できる状態にしておくことです。親の介護に関する支払いは、可能であれば親本人の口座から行う方が分かりやすくなります。親の収入や預貯金から支払われていれば、後で通帳を見たときにも流れを確認しやすいためです。

子どもが一時的に支払う場合は、簡単な記録を残しましょう。必要なのは、日付、金額、支払先、内容です。たとえば、「5月10日、施設利用料8万5,000円をAが振込」「5月18日、通院時のタクシー代4,200円をAが支払い」といった形です。

大げさな管理表を作る必要はありません。ノート、表計算ソフト、スマートフォンのメモでも十分です。何も残っていない状態と比べれば、家族に説明できる材料になります。

また、月に1回程度、きょうだいへ支出内容を共有しておくことも有効です。相続が起きた後にまとめて説明するより、介護中から情報を共有していた方が納得を得やすくなります。

介護では、近くに住む家族へ負担が集中しがちです。時間の負担、手続きの負担、お金の負担が重なると、不満も生まれやすくなります。だからこそ、「家族だから分かってくれる」と考えるだけでは不十分です。家族だからこそ、支払いの理由と金額を見える形で残しておく必要があります。

親のために払ったお金を、後から家族間の争いにしないためにも、介護が始まった早い段階で、支払い方法と記録の残し方を整えておきましょう。

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