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父の死後、“残高3,000万の口座”が凍結→銀行へ行くも「お金は引き出せません」との回答…遺された家族が直面した“遺産トラブル”

  • 2026.6.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関勤務のおがわ163です。20年間、金融機関の窓口で資産運用や家計相談に携わってきた経験をもとに、お金にまつわるリアルなエピソードをお届けしています。

「相続ってもめると大変」という話はよく耳にしますが、実際に預金口座が凍結されたまま生活費にも困るという状況が、窓口でも少なくありません。今回は、父の死後に遺産分割協議が長期化し、1年半にわたって口座が凍結されたままになってしまった50代女性Aさんのエピソードをご紹介します。

「父の口座からお金が引き出せない…」

父が亡くなり、相続手続きを進めようとした50代のAさん。父の預金残高は約3,000万円でしたが、金融機関に死亡の連絡をした時点で口座は凍結されてしまいました。

「遺産分割協議書が完成するまで、口座からお金は引き出せません」と窓口で説明を受けたAさん。しかし問題はここからでした。
父の相続人はAさん(娘)と弟(息子)、そして高齢の母の3人。しかし遺産分割協議を始めるやいなや、弟から思わぬ主張が飛び出しました。

「お母さんはいいとして、姉と自分が半々はおかしい!生前に姉がもらっていた援助分を考慮すべきだ!」

弟の言う「援助」とは、Aさんが生前に父から受けていた生活援助のことでした。民法上、相続人が生前に被相続人から受けた特別な利益は「特別受益」として遺産分割の際に考慮される場合があります。弟はこれを主張し、「納得できなければ家庭裁判所に申請する」とまで言い出しました。

「まさかこんな形でもめるとは…」とAさん。自分への援助を問題視されるとは思っていなかっただけに、弟の主張には驚きを隠せませんでした。

「家裁に申請する」と言いながら1年半が経過

しかし弟は仕事が多忙で、家庭裁判所への申請も実際には全く進まない状況が続きました。話し合いをしようとしても「仕事が忙しい」と先延ばしにされ、かといって協議が完全に決裂したわけでもなく、宙ぶらりんの状態が続きました。

気がつけば父が亡くなってから1年以上が経過。その間、父名義の口座は凍結されたまま、一切引き出せない状態が続いていました。
深刻だったのは、高齢の母の生活費の問題でした。父の年金収入がなくなり、母の年金だけでは毎月の生活費が足りない状況に。「お父さんが残してくれたお金があるのに、なぜ使えないの?」と母は困惑していました。

Aさん自身も「このままでは母の生活が立ち行かなくなる」と焦りを感じ、銀行窓口に相談に来ました。

「遺産分割前の預貯金の払戻し制度(仮払い制度)」という救済策

窓口での相談で、Aさんは「遺産分割前の相続預金の払戻し制度(仮払い制度)」という解決策があることを初めて知りました。
この制度は、遺産分割が完了する前でも、相続人のひとりが単独で預金の一部を払い戻せる制度です。2019年の民法改正(民法第909条の2)により設けられました。

払い戻せる金額は「口座残高×3分の1×法定相続分」で計算されます。Aさんの場合、父の口座残高は3,000万円。Aさんの法定相続分は4分の1(配偶者である母が2分の1、子2人が残り2分の1を均等に分けるため)です。

3,000万円×3分の1×4分の1=250万円

なお金融機関ごとに150万円が上限となるため、Aさんは1つの金融機関から150万円を払い戻し、母の当面の生活費に充てることができました。この仮払い分は相続分の前払いとして扱われ、最終的な遺産分割の際に自分の取り分から差し引かれます。

「こんな制度があるとは知らなかった」とAさん。「もっと早く窓口に相談していれば、こんなに不安な思いをせずに済んだかもしれない」と話してくれました。

その後、弁護士を間に立てて話し合いを進めた結果、父が亡くなってから約1年半後にようやく遺産分割協議が成立。口座の凍結がようやく解除されました。

相続が発生したら、早めに専門家に相談を

では、同じ状況を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。

相続人間で意見がまとまらない場合は、以下の点を確認しておくことをおすすめします。

  • 遺産分割協議が長期化すると、故人の口座は凍結されたまま生活費の工面が難しくなる場合がある
  • 「遺産分割前の預貯金の払戻し制度(仮払い制度)」を活用すれば、遺産分割前でも相続人のひとりが単独で預金の一部を払い戻せる(上限:口座残高×3分の1×法定相続分、かつ金融機関ごとに150万円が上限)
  • 遺産分割協議がまとまらない場合は、早めに弁護士などの専門家を間に立てることで解決が早まる場合がある
  • 生前に遺言書を作成しておくことで、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができる
  • 生前に子どもへの援助がある場合、「特別受益」として相続時にトラブルになる可能性があるため、贈与契約書を作成するなど記録を残しておくことをおすすめする

「うちの家族は仲がいいから大丈夫」と思っていても、実際に相続が発生すると意見が食い違うケースは少なくありません。相続について不安を感じる方は、ぜひ早めに専門家や窓口へご相談ください。


執筆:おがわ163
金融機関勤務(勤続20年)。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。窓口業務・資産運用相談の現場経験をもとに、生活に役立つお金の知識をわかりやすくお届けしています。

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