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「丁寧な暮らしには憧れるけど」 他人のSNSを見て“自己否定”に陥る罠……脳の健康を守るポイントは?

  • 2026.4.11
【脳科学者が解説】SNSの理想と現実のギャップで自分を追い込んでいませんか? 心が疲れるメカニズムと、脳に過度なストレスを与えないための考え方について、分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)
【脳科学者が解説】SNSの理想と現実のギャップで自分を追い込んでいませんか? 心が疲れるメカニズムと、脳に過度なストレスを与えないための考え方について、分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)

SNSなどで「キラキラした暮らし」や「お手本のように丁寧な暮らし」を見て、それを実現している人に憧れを抱く方は少なくありません。毎日の暮らしの中で夢や目標を持つこと自体は、前向きな行動につながる、よいことです。しかし「自分もそうなりたい」「そうならなければならない」と強く思い過ぎると、そうなれない自分に嫌悪感を覚え、脳に悪い影響を及ぼすことがあります。

理想を追うことのリスクと注意点について、考えてみましょう。

理想と現実のギャップに苦しむ脳……脳内物質から見る抑うつの仕組み

理想と現実のギャップが大きいほど、ストレスは強くなります。ひどい場合は、心の病につながってしまうこともあります。多くの方が何となく知っている「うつ病」は一般的には「心の病気」と言われますが、正確には「脳の機能の病気」です。

嫌なことがあったときに気分が落ち込む状態は「憂鬱(ゆううつ)」と呼ばれ、これは正常な心(脳)の反応です。むしろ、嫌なことがあっても何も感じないほうが不自然でしょう。通常は、問題が解決したり、別の楽しいことに意識が向いたりすることで、憂鬱な気分は自然に和らぎます。

一時的に落ち込んだ気分が再び元に戻れるのは、脳の中でノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質が働くからです。これらの物質は、気分を持ち上げる役割を担っています。

しかし、理想と現実のギャップを繰り返し感じ続け、頻繁に憂鬱な気分になっていると、これらの働きに限界が生じることがあります。その結果、問題が解決したり、喜ばしい出来事があったりしても気分が回復せず、なぜか意欲が低下した状態が続くことがあるのです。このような状態は「抑うつ」と呼ばれ、うつ病の典型的な症状です。

まじめで理想を追う人ほど要注意? 「自分はだめだ」と自己否定に陥る危険性

うつ病は誰にでも起こりうる脳の病気ですが、ストレスをきっかけに発症することが多く、性格によってなりやすさに違いがあります。

うつ病になりやすい性格としては、

・社交的で陽気、現実的・実際的で環境に順応しやすい人
・几帳面で物事に熱中しやすい人
・「人の役に立ちたい」と考え、自分の存在意義を他者への貢献に見いだすことを生きがいとし、秩序を重んじる人

などが挙げられます。

これらの性格の人は、まじめでよく頑張り、周囲からも「いい人」「尊敬できる人」という高評価を得ることが多いと思います。なぜよくないのか、不思議に思われるかもしれません。しかし、まじめに努力し、完璧を目指すほど、うまくいかないときのストレスは大きくなります。「人のために」と思う気持ちが強いほど、役に立てなかったときに強い喪失感を抱き、「自分はだめだ」と自己否定に陥りやすくなるのです。

うつ病につながる強いストレスは、出来事そのものだけでなく、その人の心の持ちよう・受け止め方によっても生じます。うつ病までいかなくとも、脳に疲れを蓄積しないために、傾向を理解し、対策すべきでしょう。

キラキラした理想ですり減らないために大切な「自分らしい生き方」の軸

以上を踏まえると、他人への憧れに振り回されて心をすり減らさないためのヒントが見えてきます。「キラキラした暮らし」に憧れること自体は悪いことではありません。ただし、それを強く求め過ぎると、実現できない自分を過小評価する原因になります。

私自身、科学者として日々さまざまな研究に取り組んでいます。毎年ノーベル賞の発表時期になると、受賞者に「すごいなあ」と憧れの気持ちを抱きますが、同じようになろうとは思いません。トップの後追いをしても、トップにはなれないからです。自分にしかできないことは何かを考え、別の道を歩もうと考えることを大切にしています。

SNSで他人の暮らしを見て、同じようになろうと無理に後追いをするのはやめてみませんか。あなたには、あなたにしかできないことがあるはずです。他人の評価にとらわれ過ぎず、もっと「気楽」に、自分の好きなことをやりたいように取り組み、小さな成功体験や満足感を積み重ねていくことが大切です。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。

文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)

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