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父の言葉の意味が分かるまで、数十年かかりました。一杯のコーヒーに込められた『人生の楽しみ方』

  • 2026.4.7

家族の習慣に、戸惑った経験はありませんか? 当たり前のように続いている行動も、本人でないとその良さが分からないことがありますよね。けれど時が経つと、その意味が少しずつ見えてくることもあるものです。今回は、筆者がコーヒー好きの父を見て感じたエピソードをご紹介します。

画像: ftnews.jp
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静かな朝に響く音

実家に住んでいた頃、休日の朝になると決まって聞こえてくる音がありました。キュイーンという、少し大きな機械の音です。

その正体は豆を挽く音。父は決まって豆からコーヒーをいれていました。
休日の静かな朝に突然響くその音を、当時の私はあまり好きではありませんでした。

けれど本人は、そんなことはお構いなし。嬉しそうにコーヒーをカップに注ぎながら、必ずこう言うのです。

「いい香りでしょう」

そう言われても、その良さがまったく分かりません。「はいはい」と軽く流していました。

心に残った光景

砂糖を入れて、ティースプーンでゆっくりかき混ぜる。そして最後にミルクをカップの縁からそっと垂らします。するとミルクがくるくると円を描きながら広がっていきました。

その様子をぼんやり眺めていると、不思議と穏やかな気持ちになったのを覚えています。

それから時が経ち、気がつけば私もコーヒーが好きになっていました。父の影響を受けていたのかもしれません。

今では父も年を重ね、以前のように車でお気に入りの豆を買いにでることはなくなりました。

今なら分かる、父が楽しんでいた時間

そんな様子を見て、私は近くのカフェに誘います。
「コーヒー、飲みに行かない?」

その提案に、どこか嬉しそうな表情を見せます。父はカフェでコーヒーを飲みながら、必ず味の感想を言います。
「これは、酸味があるね」
「香りが独特でいいね」

自分なりの感じ方を、ゆっくり話してくれるのです。

同じ時間を、分かち合えるようになってから

本当は、もっと有名なお店や、遠くの専門店にも連れて行ってあげたい。
けれど今の私には、そこまで余裕があるわけではありません。

だからせめてもの気持ちで、近くのカフェでごちそうします。特別なものではない一杯ですが、とても嬉しそうに飲んでくれます。

若い頃は分からなかった、あの過ごし方。今では、その楽しみを少しだけ一緒に味わえている気がします。

近くのカフェでコーヒーをごちそうすること。それが、今の私にできるささやかな親孝行です。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。

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