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豊かな自然の恵みを未来へと紡ぐ。旅してでも訪れるべきスイスの3つ星レストラン4選

  • 2026.4.5
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美しい自然が育てたスイスの食文化も、変わりつつあります。世界中の食トレンドを追い続けるフードジャーナリスト、仲山今日子さんによる連載【至福の食体験】では、スイスが誇る3つ星店4店舗「l'Hôtel de Ville de Crissier(ロテル・ド・ヴィル・ド・クリシェ)」「Schloss Schauenstein(シュロス・シャウエンスタイン)」「Cheval Blanc by Peter Knogl(シュヴァル・ブラン・バイ・ピーター・クノーグル)」「Sven Wassmer Memories(スヴェン・ワスマー・メモリーズ)」にフォーカスしながら傾向を読み解いていきます。

山と湖の恵みと文化の交流が生み出したスイスの食文化

古くは18世紀から、ヨーロッパの山岳リゾートとして知られてきたスイス。1815年に永世中立国として認められ、その安全性から富裕層がスイスの銀行に資産を預けるようになりました。さらに2008年から富裕層向けのビザを発行し始めたことをきっかけに世界各地から著名人や富裕層が移住すると、美食家に向けたレストランも充実するように。

スイスは国土の約7割が山岳地帯のため、質の高い乳製品、そしてキノコやジビエなど山の幸、そして湖が多いことから川魚も豊富です。また、フランス、イタリア、ドイツ、オーストリア、リヒテンシュタインという5つの国に囲まれていることから、さまざまな国の影響を受けながら食文化を確立してきました。現在、ミシュラン3つ星店は、フランス側に1店、ドイツ側に3店の計4店。今回はそれぞれの特徴をご紹介していきます。

1. 【ロテル・ド・ヴィル・ド・クリシェ】スイスの美食に革新をもたらした巨匠、ジラルデ シェフの味を継承

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スイスの美食といえば、スイスの美食を世界的に有名にしたフレディ・ジブラル シェフの想いを継承し、1994年から30年以上にわたり3つ星を獲得し続けている「ロテル・ド・ヴィル・ド・クリシェ」は外せません。現在92歳のご本人は引退をされていますが、1993年にジラルデ シェフが受け取った3つ星を3人のシェフが受け継ぎ、代々その星を守り続けています。

レストランが位置するのは、スイス西部・ローザンヌ近郊の小さな街、クリシェの中心部。ジラルデ シェフの父親が食堂を営んでいた町役場が原型という美しい邸宅風の建物では、いまも変わらず世界中から訪れるゲストを迎えています。ちなみみ、店の前の広場は、シェフの功績を讃えて「フレディ・ジラルデ広場」と名付けられたそうです。

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1928年に歴史的建造物として認定された優美な外観は開業当時と変わらないものの、内部はベージュ色の絨毯をはじめ、ニュートラルな色合いの落ち着いた邸宅風に改装されています。ダイニングルームには、ストリート感ある作品で知られているフランス人アーティスト、ヴァレンティン・カヴァリなど、定期的に作家とコラボレーションしながらムードを変えているそうです。

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独学で料理を学び、小さな食堂を世界からゲストが集まるファインダイニングにまで高めたという異色のジラルデ シェフ。「キュイジーヌ・スポンタネ」という言葉通り、その日市場から届く食材で当意即妙につくられる料理はゲストにとっても新鮮に映り、「スイス銀行の金庫を破るよりも予約を取るのが難しい」といわれるほどの大人気店に。

星の伝統を受け継ぐ4代目のフランク・ジョバンニーニ シェフは、「ゴ・エ・ミヨ」の今年のシェフとして選ばれたほか「ECKART 2019 FOR EXCELLENT CULINARY ART(エッカート優秀料理芸術賞)」を受賞するなど多くのコンテストを制し、「ボキューズ・ドール」ではスイスチームを初の表彰台に押し上げるなど、数々の功績を残してきました。加えて「歴代シェフの中でも抜群の美意識を持っているシェフ」だと周囲が舌を巻くほど美しいプレゼンテーションで、訪れる人を魅了しています。

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年に5回変わるメニューは、どれも季節の食材を活かし、食感や温度感にもこだわった繊細なもの。鮮やかな色合いで立体的な盛り付けは360度どこから見ても美しく、ジョバンニーニ シェフの高い美意識が特に感じられます。

フランスで伝統的に愛されてきたフォアグラのトーション仕立てにポートワインのソースという組み合わせ、そこにレストランのあるクリシェ近郊の名産の洋梨の魅力をさまざまな調理法を使って添えています。また、自家製マヨネーズで正確な放射状に描いた線が印象的な盛り付けは、このお店の高い技術と美意識を裏付けるものでしょう。

「l'Hôtel de Ville de Crissier(ロテル・ド・ヴィル・ド・クリシェ)」
予算/CHF 260(約¥51,836)
所在地/Rue d'Yverdon 1, 1023 Crissier, Switzerland
TEL/+41 21 634 05 05
URL/www.restaurantcrissier.com/en

2.【シュロス・シャウエンスタイン】12世紀の城を改装したオーベルジュでいただく最先端のガストロノミー

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以前はフランスに近い西部に多かった美食のレストランも、最近では東のドイツ側にも増えています。その代表ともいえるのが2010年に3つ星となった「シュロス・シャウエンスタイン」。スイスの美食の伝統をよく知る前出のジョバンニーニ シェフが「東部の立役者ともいえるのがシュロス・シャウエンスタイン」と絶賛するほどのオーベルジュです。

人口200人余りの小さな街、フュルステナウにアンドレア・カミナーダ さんが2003年にオープン。自然豊かな場所柄を反映し、敷地内にある5ヘクタールの自家農場からの食材を反映して日々変わる料理を提供しています。街のすぐそばを走る幹線道路がかつてはイタリアとスイスをつなぐスパイス交易のルートでもあったことから、こういった地元の食材にアジアや中東、中南米など、遠く離れた国の料理や味わいをアクセントに使った料理が食通の注目を集め、2010年からミシュラン3つ星に輝き続けています。

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アートコレクターでもあるオーナーシェフのカミナーダさんは、城の内部をミュージアムのように改装。店内は、長い歴史を物語る木製の階段と、モダンアートが織りなす独自の世界観が広がっています。歴史的建造物のため内部の構造は昔のままに保存する必要があるため、ダイニングルームは小さな部屋に分かれています。そんなこぢんまりとしたるくりと暖炉の火も相まって、温かな雰囲気を醸し出しています。

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フュルステナウから車で20分ほどの街、ラア出身のカミナーダ シェフは、13歳の時に職業体験としてレストランで働き、その温かな雰囲気が気に入って料理の道に入ったそうです。カナダでのホームステイを経て、スイスの高級ホテルの厨房に入り、チャールズ皇太子など世界のセレブリティに料理をつくるなど研鑽を積みます。そして、ドイツのミシュラン3つ星店「Bareiss(バレイス)」などで腕を磨きます。故郷ラアに戻って開業しようと考えていたところ、このフュルステナウに12世紀に建てられた城に魅せられ、開業を決めたのだといいます。アートと建築をこよなく愛するカミナーダさんは、この城をオーベルジュに改装するだけでなく、付近一帯を買い取り、著名な建築家でもある親戚のギオン・カミナーダさんと共に宿泊施設もオープンさせたというわけです。

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「ここで提供する料理はモードの最先端」だと自身が語るように、繊細で緻密な料理は、大自然に囲まれた場所とは思えないほど都会的な感覚を備えたガストロノミー。自家農園では世界各国のハーブや野菜なども栽培し、インスピレーションの源にしているというカミナーダ シェフ。特にシグネチャーとして親しまれている「チコリー(ラディッキオの別名)」は、この地の名産であるラディッキオがもつ品のある苦味やナッツの香り、繊細な酸味などを持つ野菜の旨みが感じ取れる一皿に。ラディッキオの葉の下に、じっくりと煮込んだラディッキオが敷かれ、葉キクイモと角切りにした洋梨が添えられています。クリーミーな食感のラディッキオのソルベとチリソースを入れたソースで仕上げられた、素朴でありながらも野菜のさまざまな表情が引き出された料理だといえます。

「Schloss Schauenstein(シュロス・シャウエンスタイン)」
予算/CHF 266(約¥53,032)
所在地/Obergass 15, 7414 Fürstenau, Switzerland
TEL/+41 81 632 10 80
URL/www.schauenstein.ch/heim

3.【シュバル・ブラン・バイ・ピーター・クノール】クラシックさと驚きを両立、ソースを大切にしたフレンチレストラン

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フランス、ドイツと国境からも程近い国際都市バーゼルで1681年に創業した、ヨーロッパ最古のラグジュアリーホテル、「Grand Hotel Les Trois Roisグランド ホテル レ トロワ ロア」。ナポレオンやピカソなど、名だたる有名人が訪れたホテルで、歴史を感じるエレガントな雰囲気は唯一無二。そのメインダイニングが「シュヴァル・ブラン・バイ・ピーター・クノール」です。

2007年にピーター・クノールシェフが就任し、わずか7カ月でミシュラン1つ星、翌2008年に2つ星、そして2015年には3つ星に輝きました。それだけではなく、最新版のLa Liste(ラ・リスト)では、99.5という世界最高の評価を受ける注目店です。

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歴史あるホテルのメインエントランスを抜けると現れるレストランは、メインダイニングにふさわしい威厳を感じさせます。天井が高く見事なシャンデリアが飾られたダイニングルームにはアンティークの家具がアート作品のように飾られています。昼間は明るい日差しが入る開放的な空間、夜はろうそくに照らされた落ち着いた照明が、とてもロマンティックなムードを醸しています。

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ドイツのバイエルン地方出身のクノール シェフは、ミシュラン3つ星の評価を受けたミュンヘンの「Tantris(タントリス)」の故・ハインツ・ウィンクラー シェフに師事します。当時ウィンクラー シェフが監修していたスペインのレストランで9年間働き、地中海の味わいやスパイス使いも学んできました。自らの料理を「フレンチクラシックの再解釈」と語るクノール シェフは質の高い食材とソースに焦点を当てた料理にこだわり、「ソースをしっかり味わって欲しい」という思いから全ての料理にスプーンを添えているそうです。

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上質な食材の良さを引き立てるだけでなく、食感や温度感にもこだわり、一口ごとに驚きをもたらす料理は、まさに“上質”の一言。特徴的なのは酸味で、柑橘などのほか、日本の三杯酢を使うこともあるといいます。食材は、国際都市らしく、世界各国から届く良いものを選ぶそうで、例えば生で使う魚介類は日本から、加熱する魚はフランスから、というふうに使い分けているそうです。人気の一皿、キャビアを乗せた「ブルターニュ産のヒラメ」には、魚の骨から取った出汁を使い、柑橘の酸味を効かせたブールブランソースに、さらに赤ワインソースをかけるという、ダブルソース仕立てというサプライズを提供しています。

「Cheval Blanc by Peter Knogl(シュバル・ブラン・バイ・ピーター・クノール)」
予算/CHF 285(約¥56,823)
所在地/Blumenrain 8 CH-4001 Basel, Switzerland
TEL/+41 61 260 50 07
URL/www.chevalblancbasel.com/en

4.【スヴェン・ワスマー メモリーズ】アルプスの山々の記憶を現代に受け継ぐ次世代フレンチ

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13世紀に地元の猟師によって温泉が発見されて以来、湯治場として広く知られるバー・ラガッツ。その中でも特に著名なリトリートが、「Grand Resort Bad Ragaz(グランドリゾート・バート・ラガッツ)」。巨大な屋外温泉やスパなどが揃っています。その中に2019年にオープンしたのが2022年にミシュラン3つ星の評価を得た「スヴェン・ワスマー・メモリーズ」です。開業後わずか3カ月で1つ星、2022年に3つ星とグリーンスターに輝いた、スイスで最も新しい3つ星店です。

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風水を信じるスヴェン・ワスマー シェフが大切にしているのは、店の中を良い気が流れる、風通しの良さ。石や木など、天然素材の良さを生かした店内は広々としていています。特に緩やかに厨房と客席がつながった空間は、まるでシェフの自宅に招かれたかのように寛げる柔らかい雰囲気を放っています。

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チューリッヒ近郊の街出身のワスマー シェフは、幼い頃の記憶の中にある「高山の料理」をモダンに表現しています。城を改装し、オーベルジュスタイルで営業する前出の「シュロス・シャウエンスタイン」で2年ほど働いた経験を持つことから、「ストランは料理はもちろん、ホスピタリティ全体で体験を生み出す」という考えに影響を受けたそうです。その後ロンドン、スイスの高級ホテル「7132 Hotel」のメインダイニングをミシュラン2つ星と評価されるまでに導いたのち、同店をオープンする話が飛び込んできたのだといいます。

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食材を制限することで逆にイマジネーションが広がると語るシェフは、使う食材は主にはスイス、その他も国境を接する6カ国からのものにこだわっています。そういった身近な食材に発酵の技法を抱き合わせ、味噌やガルム(魚醤の一種)をつくり、懐かしさの中に新しい味わいを散りばめるのがワスマーシェフ流。代表的なのが、素朴なジャガイモ料理とされる「山のジャガイモのミルフィーユ」。スイスの山あいで収穫される小粒でねっとりとした甘みのあるじゃがいもは、千切りにしてフライパンなどで焼く「ロスティ」という伝統料理にするのが一般的ですが、同店では薄切りにしてミルフィーユのような美しい山を描き、そこへ自生ワイルド・ガーリックのソースを合わせることで“高山の味わい”を引き立てているそう。次世代の味わいを楽しめる新生3つ星店にご注目ください。

「Sven Wassmer Memories(スヴェン・ワスマー メモリーズ)」
予算/CHF 279(約¥55,627)
所在地/Bernhard-Simon-Strasse 20 7310 Bad Ragaz, Switzerland
TEL/+41 81 303 30 36
URL/memories.ch

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