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栃木県とホンダモビリティランドが「包括連携協定」を締結。モビリティと自然が交差する里山で描く、新しい地域の形

  • 2026.3.20

2026年3月18日、栃木県庁の特別会議室。烏山和紙で作られた真新しい協定書に署名がなされると、少しの緊張感が漂っていた部屋の空気はふっと和らいだ。

協定締結式に臨んだ、栃木県知事の福田富一さん(左)と、ホンダモビリティランド株式会社・代表取締役社長の斎藤毅さん(右) 【撮影=藤巻祐介】
協定締結式に臨んだ、栃木県知事の福田富一さん(左)と、ホンダモビリティランド株式会社・代表取締役社長の斎藤毅さん(右) 【撮影=藤巻祐介】

この日、栃木県知事の福田富一さんとホンダモビリティランド株式会社・代表取締役社長の斎藤毅さんが出席し、スポーツや観光の振興、子どもの教育、防災・災害対策など5つの分野にわたる包括連携協定を結んだ。1997年の「モビリティリゾートもてぎ」の開業(※「ツインリンクもてぎ」として開業、2022年に開場25周年を機に「モビリティリゾートもてぎ」に改称)以来、茂木町の里山に根を下ろし、モータースポーツの聖地として、また豊かな自然を育む場として歩んできた彼ら。最先端のモビリティと深い森が共存する場で重ねられてきた経験やアイデアは、これからどのように地域を豊かにしていくのだろうか。当日の様子を振り返りながら、両者が思い描く未来の姿をお伝えする。

和やかな歓談に滲む、確かな信頼と未来への決意

今回、協定書に用いられた「烏山(からすやま)和紙」は、およそ1200年の歴史を持つ栃木県那須烏山市の伝統工芸品だ。良質な楮(こうぞ)を原料とした手漉きの和紙は、厚手で破れにくく、なんとも温かみのある風合いを持っている。

協定書にサインをする福田知事(左)と、ホンダモビリティランドの斎藤社長(右) 【撮影=藤巻祐介】
協定書にサインをする福田知事(左)と、ホンダモビリティランドの斎藤社長(右) 【撮影=藤巻祐介】

そんな強靭で柔らかな和紙のように、両者の強固で温かい関係性を垣間見るようなやり取りが、式の前後に設けられた歓談の時間にはあふれていた。

終始和やかな雰囲気で行われた歓談。国内外のモータースポーツの最新動向から、イベントの裏話まで、多岐にわたる話題で笑顔の花が咲いた 【撮影=藤巻祐介】
終始和やかな雰囲気で行われた歓談。国内外のモータースポーツの最新動向から、イベントの裏話まで、多岐にわたる話題で笑顔の花が咲いた 【撮影=藤巻祐介】

話題はまず、モータースポーツ界の最新の動向から。鈴鹿で開催されるF1日本グランプリの注目度の高さやインバウンドニーズ、海外でのモータースポーツの人気度合いなどが語り合われた。また、近藤真彦さんが会長を務める株式会社日本レースプロモーションが運営する国内トップレース「スーパーフォーミュラ」の開幕戦が、モビリティリゾートもてぎで行われることにも話がおよび、福田知事が「近藤さんがU字工事さんと栃木のテレビ番組に出るとか。もてぎさんのおかげですね」と笑いを誘う一幕も。

斎藤社長は、「県民の皆様の支えに心から感謝申し上げます。若年層や女性ファンが増える世界的トレンドを捉え、地域と協力して最高の受け入れ環境を整えていきたい」と、抱負を語った 【撮影=藤巻祐介】
斎藤社長は、「県民の皆様の支えに心から感謝申し上げます。若年層や女性ファンが増える世界的トレンドを捉え、地域と協力して最高の受け入れ環境を整えていきたい」と、抱負を語った 【撮影=藤巻祐介】

さらに、F1を統括するアメリカの大手メディア「リバティメディア」がMotoGPの運営にも参画したことについても、熱を込めて語られた。現在、F1はNetflixのドキュメンタリーなどを通じて人間ドラマを描く演出が当たり、ファンの半数近くを35歳以下や女性が占めるなど、世界的な人気を集めているという。斎藤社長は「今のF1のように、いろいろなドラマやエンターテインメントへのニーズが高まってくる」と先を見据える。「LRT(宇都宮ライトレール)ができたので、うまく連携しながらインバウンドの呼び込みに強力に取り組みたい」と、この「スポーツエンターテインメント化」の流れをMotoGPにも持ち込む戦略を明かし、「皆様方のご協力なくしてできない面が多いですから、ぜひ知事含めてご支援をいただけるとありがたい」と協力を求めた。

「モビリティリゾートもてぎの魅力を活かし、MotoGPなどのスポーツ観戦をフックにして県内の観光周遊へとつなげていきたいですね」と福田知事。観光・インバウンドへの期待を寄せていた 【撮影=藤巻祐介】
「モビリティリゾートもてぎの魅力を活かし、MotoGPなどのスポーツ観戦をフックにして県内の観光周遊へとつなげていきたいですね」と福田知事。観光・インバウンドへの期待を寄せていた 【撮影=藤巻祐介】

この熱意に対し、福田知事も笑顔でうなずき「栃木県は観光地や温泉などにも力を入れています。スポーツ観戦に来ていただいた方に県内を少し周遊していただき、観光につなげたい。モビリティリゾートもてぎは観光施設としても非常に魅力的な場所ですから、MotoGPをフックにしながらうまくインバウンドを集客していきたいですね」と、モータースポーツを通じた地域活性化への強い期待を口にした。

「モビリティリゾートもてぎには、素晴らしい自然と『本物志向』が凝縮されています。これからのよい季節、ぜひ足を運んでリアルな感動体験を味わっていただきたいですね」と、多くの人に来場を呼びかける斎藤社長 【撮影=藤巻祐介】
「モビリティリゾートもてぎには、素晴らしい自然と『本物志向』が凝縮されています。これからのよい季節、ぜひ足を運んでリアルな感動体験を味わっていただきたいですね」と、多くの人に来場を呼びかける斎藤社長 【撮影=藤巻祐介】

モビリティリゾートもてぎで開催されるイベントの話にも花が咲いた。年間多くのメジャーなレース大会が行われている同施設だが、夏と冬の花火大会についても和やかな談笑が交わされる。今年の1月2日に開催された冬の花火大会はあいにくの雪となったが、「お客様の立場に立つべきだと思ってずっと外で見てましたけど、寒かったですね。雪と花火という貴重な体験にはなりましたが、来場いただいた皆様には感謝しかありません」と、寒さの中で観覧した来場者へ深い感謝を寄せていた。

雪の中で開催された冬の花火大会の裏話や、周辺地域との心温まるエピソードなども飛び出し、両者の間に築かれた強固な信頼関係が垣間見えた 【撮影=藤巻祐介】
雪の中で開催された冬の花火大会の裏話や、周辺地域との心温まるエピソードなども飛び出し、両者の間に築かれた強固な信頼関係が垣間見えた 【撮影=藤巻祐介】

和やかな空気の中にも、公式挨拶で語られた言葉には強い使命感が滲む。福田知事と斎藤社長により、スポーツ、観光、教育、防災・災害対策など5分野での連携強化があらためて確かめられた。福田知事は、これまでの両者の歩みを振り返りながら感謝と期待を込めて語る。

「MotoGPでの観光ブース出展やSNSの撮影協力など、これまで県政へさまざまなご支援をいただいてきました。地元の伝統や材料を活かした社会貢献活動にも、心から敬意と感謝を申し上げます」と、これまでの歩みに感謝を伝えた知事は、さらに未来への期待を込めて言葉を続けた。

「長年培われたノウハウや発信力を活かした事業展開が期待される、大変ワクワクする内容です。共に創る『人も地域も輝く元気な栃木』の実現に向け、いっそう寄与するものと心強く思っています」

「観光ブース出展やSNS撮影協力など、これまでの多大なご支援、そして地元の伝統や材料を活かした社会貢献活動に心から感謝申し上げます」と感謝の意を伝えた福田知事 【撮影=藤巻祐介】
「観光ブース出展やSNS撮影協力など、これまでの多大なご支援、そして地元の伝統や材料を活かした社会貢献活動に心から感謝申し上げます」と感謝の意を伝えた福田知事 【撮影=藤巻祐介】

そして、斎藤社長も未来への決意を力強く言葉にする。「約30年にわたり培ってきた施設運営や交通安全教育の知見を最大限に活かし、すでに協定を結んでいる茂木町や芳賀町などとも協力しながら、栃木県全体の価値向上に貢献していきたい。今日は、ともに地域の未来を作るための新たな決意を共有する場。今後も共創のパートナーとしてしっかりと取り組んでいきます」

「我々の事業は地域の協力なくしては成り立ちません。連携を強化し、観光振興の面で貢献できる。本日の締結に至り、大変うれしく思います」と語った斎藤社長 【撮影=藤巻祐介】
「我々の事業は地域の協力なくしては成り立ちません。連携を強化し、観光振興の面で貢献できる。本日の締結に至り、大変うれしく思います」と語った斎藤社長 【撮影=藤巻祐介】

その力強い言葉の後に見せた二人の笑顔からは、ともに新しい地域を創り上げていくという確かな熱が伝わってきた。

交差するモビリティと自然、そして地域の未来

圧倒的な熱量で世界中の人々を惹きつけるサーキット。レーシングマシンが風を切り、すぐ隣りの森では子どもたちが逞しく育ち、多様な生き物たちがひっそりと命をつなぐ。一見相反するような最新のテクノロジーと原風景のような自然環境が、もてぎの里山では見事に調和し、共存しているのだ。

地域を活気づける「スポーツ・観光振興」と、本物の自然体験を通して生きる力を育む「子どもの教育」。同社が開業以来、真摯に積み重ねてきた活動の実績が県から高く評価されたことが、今回の包括連携協定へとまっすぐにつながっているのだろう。

式の終了後、報道陣の取材に応じた斎藤社長は、これまでの歩みを振り返りながら、あらためて地域への感謝と恩返しの思いを口にした。「我々の事業は、地域の皆さんのご協力なくしてはできないものです。少しでも地域にお返しをしたいという気持ちがあり、観光振興の面で我々が貢献できることがあると考えました。モビリティリゾートもてぎには、素晴らしい自然環境の中に、ハローウッズやホンダコレクションホール、本物のサーキットといった『本物志向』が凝縮されています。ぜひ足を運んでいただいて、本物の体験、リアルな感動体験を味わっていただきたいですね」

【写真】協定締結式の出席者。写真左から、栃木県 生活文化スポーツ部長の中村和史さん、栃木県知事の福田富一さん、ホンダモビリティランド株式会社・代表取締役社長の斎藤毅さん、同執行役員・モビリティリゾートもてぎ総支配人の稲葉光臣さん、同地域・アライアンス担当 マネージャーの宮崎昌道さん 【撮影=藤巻祐介】
【写真】協定締結式の出席者。写真左から、栃木県 生活文化スポーツ部長の中村和史さん、栃木県知事の福田富一さん、ホンダモビリティランド株式会社・代表取締役社長の斎藤毅さん、同執行役員・モビリティリゾートもてぎ総支配人の稲葉光臣さん、同地域・アライアンス担当 マネージャーの宮崎昌道さん 【撮影=藤巻祐介】

心を揺さぶるスポーツの感動、世界と地域をつなぐ観光の広がり、そして未来を担う子どもたちの生きる力を育む教育。人と地域と自然が交差する場所から、新しい栃木の物語が、いま力強く走り出そうとしている。

取材・文=北村康行、撮影=藤巻祐介

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