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2026年「アジアベスト50」結果速報! 香港のレストランがワンツートップを独占

  • 2026.3.26
©50 best

2026年の「Asia’s 50 Best Restaurants」の受賞発表アワードが香港で開催された。今回は香港のレストランが1位と2位を独占する快挙を達成。日本勢も常連から初登場まで続々ランクイン。気になる結果を「エル・グルメ」ならではの視点でお届け!


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飲食業界にとって「3月末のお約束」といえば、そう、「Asia’s 50 Best Restaurants(アジアベスト50)」の発表だ。2026年は2年続いたソウルから場所を移し、香港で開催された。推しのレストランが入ったかなとか、アジアのトレンドはどうなってるとか、個人賞はどの店のシェフが獲るかとか、見どころは人によって違うかもしれない。しかし私は言いたい。結果リストから透けて見える時代の趨勢ってものがあることを。すでにオフィシャルサイトでも順位は発表されたが、そこをちょっと斜め&ウラ読みする結果速報をセレモニー後の熱気冷めやらぬ今、お伝えしたい。

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舞台は香港! 飲食最強帝国が湧いた夜

今年も「アジアベスト50」のアワードセレモニーが開催された。筆者は「エル・グルメ」編集部に在籍していた2015年から退職後の今日に至るまで、毎年ではないが取材してきた。たった11年、されど11年。結果を見る限り相当変化した。

ランクイン店も大きく入れ替わったが、それ以上に50軒のリストにはフードトレンドやそこに商機を見いだそうとする国々の思惑が見え隠れする。10年前は日本の食材や調理法のフィーチャーに多くのシェフが夢中になっていた印象があった。それが時代を経て「魅力的な食が国に人を連れてくる! 外貨を稼ぐ手段だ!」と理解した国々が、必死で自国の飲食業界にテコ入れするようになった。タイのバンコク、韓国のソウルなどはその筆頭格だ。そこに中国やインドも本格参戦しているのが現在で、中国に返還されて久しい香港が2026年「アジアベスト50」の舞台となったわけだが、まさにアジアの勢力図が塗り替えられるのを目の当たりにした夜だった。

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ワンツートップを香港勢が独占!

本年度の1位を獲得したのは香港の「チェアマン」。オーナーでもあるダニー・イップシェフ(左から3番目)は、2021年にもこの座についており、5年ぶりの王座奪還に感無量の面持ちながら、「私の誇る“ヴィーンテージチーム”です」と壇上でチームを紹介。若い頃、一度は料理の道を退いてIT企業を立ち上げ上場させるほどに成長させた後、料理への思いを募らせ再び厨房に戻ったという経歴を持つ。が、苦労を重ねた63歳の表情はどこまでも穏やかだ。香港で最も予約の取りにくい店だとここで紹介したのが2019年だが、今はさらに予約困難度が増しているに違いない。

惜しくも2位に入ったのも香港の「WING」で、こちらは若きヴィッキー・チェンシェフがオーナーも務めるイノベーティブ中国料理店。昨年度は3位で、さらに「世界ベスト50」でも11位に輝いたあたり、その人気が世界中のフーディーに届いている証拠であり、今後の伸びしろはまだかなりありそう。

ちなみに、たった2年前の2024年、ワンツートップを射止めたのは日本だった(1位が東京「セザン」、2位が東京「フロリレージュ」)。世界はわずか2年でがらりと変わるのだ。恐ろしい。

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大阪の「ラシーム」が日本勢ナンバーワンに

日本のレストラン勢の結果について一気に語ると、トップニュースは大阪のイノベーティブフレンチ「ラシーム」が日本トップの13位にランクインしたことだろう。フォーマルでもカジュアルでも少々の寒さでも短パン姿が代名詞の高田裕介オーナーシェフは、壇上から名を呼ばれた瞬間、隣のゲストに肩を叩かれ(シェフ、呼ばれてますよ!!)、信じられないといった表情で登壇された姿が印象的だった。

Mayuko Yamaguchi

筆者にとって「ラシーム」での食事は、“ものを食べる”というよりは何か不思議で美しいものを体験するというような時間。かと思えば、ミニャルディーズに大阪名物ビリケンさんのグミ(だったと思う)が出てきたり、奄美大島ご出身で大阪をこよなく愛するシェフの情熱が、精緻な料理の中にもしっかりと感じられる。この感覚を、きっと多くのフーディーや50のボーター(チェアマンからレストラン投票を任命された人)たちも共有しているのだろう。

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その他のランクイン店と新チェアマンにも注目

他の日本の顔ぶれを見てみよう。16位「セザン」(ダニエル・カルバートシェフは3月31日で同店を退職して新たな道に進む)、21位に「茶膳華」(川田智也シェフ)、28位「MAZ」はこれまで率いてきたサンティアゴ・フェルナンデスシェフ(前列右から5番目)に代わり4月からは中村侑矢さん(後列左から3番目)がヘッドシェフに、カルラ・フェレイラさん(後列左から2番目)がホスピタリティ&カルチャー統括担当に就任する。

続いて31位に「フロリレージュ」の川手寛康シェフ(後列右から4番目)、33位に昨年ミシュランガイド東京でも新三つ星店に昇格して話題になった「明寂」(中村英利料理長)、34位に「Crony」の春田理宏シェフ(後列右)、38位には2013年の「アジアベスト50」開始以来、連続ランクイン記録を誇る「NARISAWA」(成澤由浩シェフ)が入った。ちなみに22位には台北「Logy」を率いる日本人の田原諒悟シェフ(後列右から2番目)も。

さらに、昨年まで13年間「世界ベスト50」「アジアベスト50」の日本評議委員長(チェアマン)を務めた中村孝則さん(前列右から2番目)が卒業し、イエール大学卒の頭脳派熱血レストランフリークである浜田岳文さん(前列左から2人目)が就任して初の回でもあった。

Mayuko Yamaguchi

毎回恒例、オフィシャル日本酒パートナー「獺祭」ブース前での鏡開きでは、新チェアマンである浜田岳文さん(右)が流暢な英語で指揮をとり、場を盛り上げたり整えたり。著書『美食の教養』では、昨今のガストロノミーを「食の文化人類学」と喩え、本サイトでもまるで教授のようにわかりやすく教えてくれた浜田さんだが、意外に兄貴っぽいリーダーシップのある方だ。

たまたま少し前に食事の席でご一緒することがあり、その時に聞いた話が今も頭に残る。曰く、「日本が何位を獲るかに注目するのではなく、これまで知られていなかった日本の名店や地方の店がどれだけ活躍できるかにも今後は注力したい」とのこと。その上で、51位から100位までも含めて今回の結果を眺めてみると、日本から1店舗も10以内に入らなかったことさえ、大したことではないと思えるのだ。

ここで51〜100位の日本のレストランについても振り返ろう。

51位 傳(東京)
60位 Goh(福岡)/集合写真一番左が福山剛シェフ
63位 鮨しゅんじ(東京・初登場)/集合写真中列左が橋場俊治シェフ
72位 鮨さいとう(東京)
76位 Cenci(京都)/集合写真後列右から3番目が坂本健シェフ
81位 Villa Aida(和歌山)/集合写真前列左が小林寛司シェフ
82位 片折(金沢・初登場)
92位 レスピラシオン(金沢・初登場)/集合写真前列右から3番目が八木恵介シェフ、4番目が梅達郎シェフ
93位 出羽屋(山形県西川町・初登場)
97位 L’evo(富山県・南砺市)

地方からのランクインや初登場の店も多い。これこそが、日本のレストランがネクストステージへと歩を進めた証ではないだろうか?

Mayuko Yamaguchi

初お目見えのレストランをチェック!

初登場店から、3軒のシェフにコメントをいただいた。まずは東京「鮨しゅんじ」の橋場俊治さんと、妻でソムリエの彩子さん。「鮨さいとう(72位)」で修業し、認められた腕前は言わずもがなで、寿司を握る時の鋭い眼光とトロトロ笑顔のギャップ、滋味深く美しい寿司が海外のシェフからも絶賛されている。

「出来るだけうちを体験していただけるよう、多少の無理をしても店を開けて対応してきました」と打ち明けてくれた。

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金沢からは2軒が同時に初登場。うち1軒が北陸発のイノベーティブスペイン料理店「レスピラシオン」だ。シェフは3人。八木恵介シェフ(右)、梅達郎シェフ(左)、北川悠介シェフは幼馴染みで、「いつか世界と勝負だ!」と挑戦し続けるストーリーにも胸を打たれる。

「僕たちの料理をどうすれば世界のお客さまに届けられるか、ずっと考えています。ミシュランガイド金沢は不定期刊行ですが運良く最初に二つ星が取れた。食べログも今ではいい点をいただいている。ならば50も狙いたい……ということで、ここ数年は世界とのつながりを意識してきたんです」と語ってくれた。

Mayuko Yamaguchi

そして山形県西川町の老舗料理宿「山菜料理 出羽屋」の佐藤治樹さんだ。山形駅から車で30分ほど行った里山にある店で、佐藤さんは4代目を任う30代。東京の大学を出て「つきじ田村」で修業中、尊敬する祖父の逝去を受けて山形に戻ることに。「アジアベスト50」にオンリストされるシェフはさまざまだが、「山菜という山形の伝統食材や食文化を途絶えさせない」という目標を掲げて料理を続ける人は、おそらく佐藤さんだけだと思う。料理に向き合う以上に、山菜やきのこを摘む農家、川魚やジビエを狩る漁師・猟師とも協業して町を盛り上げる努力を続ける。

「100以内に入ったと知らせがきた時は、雪かき中でしたね。NISHIKAWAという自分の町の名が世界のレストランリストに掲載されたことが何よりうれしいです」とほのぼの口調でおっしゃるが、去年その「出羽屋」シェフズテーブルでいただいた「山菜のデギュスタシオン(という料理名ではなかったけれど)」は、苦味、酸味、滋味、早春の野のえぐみなどが舌の上で次々と入れ替わる、これまでにない体験だった。

今や飲食業界にはさまざまなレストランガイドやコンペティションが百花繚乱で、そのどこに自身の店が向いているのか悩むシェフ、どのガイドやリストが自分の好みに合うのかわからない食べ手が大勢いることだろう。一つ言えるのは、「50」はおいしさだけを世に問うコンペティションではないということ。伝えたいこと、感じたいこと、考えていることを突き詰め、それを料理やサービスで自己表現できる店が選ばれる。もちろん、近年では店を盛り立てる自治体や国の援助も欠かすことの出来ない存在となっている。世界屈指の飲食店数を誇る日本ながら、他国に比べ自営かつ小規模で運営する飲食店が多いのも特徴だ。私たち食べ手の素直な好奇心、適度なミーハーマインドが増せば増すほど、実は日本の飲食業を応援することになるのではないかなと思いながら、もう来週の食計画を練り始めている。この素晴らしい世界、味わいが褪せることはない。

アジアベスト50 オフィシャルサイト
https://www.theworlds50best.com/asia/en/

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