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亀梨和也さんと野村萬斎さんが語る「組織論」と「世代の壁」とは?|ドラマ「ストーブリーグ」

  • 2026.3.27
撮影=セドリック・ディラドリアン

2026年3月28日より映像配信サービスLemino・WOWOWにて一挙放送・配信がスタートするドラマ「ストーブリーグ」。

亀梨和也さん演じる野球未経験のGM(ゼネラルマネージャー)が万年最下位のプロ野球チームの再建に挑み、オフシーズンの球団運営フロント陣の奮闘が描かれます。

そんなGMと対峙する球団社長を演じるのは野村萬斎さん。現代における組織とは? 人間関係とは? 話題の配信ドラマで物語の鍵を握るおふたりが、それぞれの思いを語ります。

見たことも聞いたこともなかった野球の裏側

─GMの桜崎凖を演じる亀梨和也さんと、球団社長・根岸壮を演じる野村萬斎さんは、野球界の内側のドラマをどのように捉えたのでしょうか。

撮影=セドリック・ディラドリアン


亀梨和也さん(以下、亀梨) 僕は野球少年でしたし、スポーツキャスターとして10年以上、野球の取材も重ねてきました。でも、そもそも日本のプロ野球においてGMという役職を設けている球団も少ないですし、人物像を作り上げるのは難しかったですね。

スポーツニュースの取材で話を聞く対象は選手が圧倒的に多いので、契約や経営陣とのバトルなど、見たことも聞いたこともない部分が多かったです。野球監修の方に相談しながら撮影を進めていきました。

細かい部分までリアルに感じていただきたいというこだわりから、野球監修のスタッフの人数は撮影が進むにつれて倍ぐらいに増えて、ずいぶん助けられましたし、僕自身も選手たちに、「実際はどういう感じなの?」などとヒアリングすることもありました。

一方で、ドラマなので現実的にありえない部分もあえて残しています。リアリティとドラマ的なフィクションの融合を楽しんでいただけたらと思います。

野村萬斎さん(以下、萬斎) 草野球ですが、私も少年時代に少しやっていたことがあります。野球中継もよく見ますよ、何しろいまは大谷選手も活躍していますし。

亀梨 僕が演じる桜崎凖は、野球未経験ながら万年最下位のプロ野球チーム・ドリームズのGMになって、不正ドラフト、裏金疑惑、戦力外通告、年俸交渉、スター選手の闇など、球団改革の前に立ちはだかる問題の数々と向き合い、闘っていく役です。

撮影=セドリック・ディラドリアン

萬斎 私が演じた球団社長の根岸は、球団オーナー役の吉田鋼太郎さんと GMの桜崎凖役の亀梨くんとの間に挟まれる立場。

実はドラマの中では私は、亀梨くんと吉田鋼太郎さん、安井順平さんというオーナー親子以外の役者さんとは、ほとんど絡んでいないんです。その分、朝から晩まで熱い駆け引きを繰り返しました。撮影した令和7年の夏はとにかく熱く、暑かった。

亀梨 熱量もですが、現場は本当に暑かったんです(笑)。「ストーブリーグ」は冬のオフシーズンのドラマですが、撮影は真夏で、コートを着てのシーンもあり大変でした。

萬斎 しかも、何十ページもの膨大な台詞量でね。

亀梨 まとめて撮影しなければならない事情もあって、さっきまでぶつかり合っていたのに休憩後は腹の探り合いをするような、静かな場面の芝居をしなければならないなど、気持ちを作るのがハードな時もありました。

でも、萬斎さんがアイデアを出してくださったこともあって、空気感を共有しながらお芝居をさせていただけたので、出来上がったところを見ると2人の場面は作品の見どころになっていると思います。

野球文化の違い?オリジナルの韓国版と見比べる楽しみも

─「ストーブリーグ」オリジナル版は、2019年に韓国SBSで放送され、最高視聴率20.8%を記録、社会現象を巻き起こしました。人気ヒューマンドラマを日本版にリメイクするにあたり感じたことは?

©FANY Studio

亀梨 野球界が本質的に抱えている問題に挑んでいくストーリーは、オリジナル版から引き継いでいます。

ただ、韓国の野球文化と日本の野球文化の違いについては、どのように日本版の作品としてアレンジしていくのかプロデューサーや監督と話し合い、撮影の中で日々やりとりしながら積み上げていきました。

オリジナル版には日本のドラマではなかなか起きないような展開もあるので、その検証も必要でした。

萬斎 私も韓国版の作品があるのはもちろん知っていましたが、それを見てあまり引っ張られてしまうのはどうかなと思って、自分の演じる部分と同じシーンだけを確認したくらいです。ストーリーが決まっているなかでも、私の役は韓国版とはちょっと設定も異なるので。

©FANY Studio

亀梨 球団の経営陣の皆さんの役は、日本版としてのオリジナリティが強いですからね。

萬斎 オリジナリティをどう出すかを考えつつも、韓国版をご覧になっているファンの方たちが日本版を見てくださった時にどう感じるかと思うと、そのバランスは難しかったですね。

亀梨 リメイク作品って、どこまで変えるかの加減が難しいですよね。僕はオリジナル版を演じた韓国人俳優のナムグン・ミンさんが魅力的だったので、そのニュアンスを取り入れて、佇まいや目線を参考にさせてもらった部分もありました。

萬斎 私もオリジナル版の飄々としたキャラクターは若干意識しました。飄々としながら意地悪になっていったり、弱い部分を見せたり、そういう意味ではカメレオン的な役でしたね。

あまり喋るとネタバレになってしまいますが、序盤では企業人としての理念を桜崎GMに押し付けていたのが、物語の展開とともに関係が変化していきます。

亀梨 完成した作品を見ると、裏に何かを抱えている者同士の関係が変わっていくなかですごく切ない部分もあって、人間の深さと面白さを感じました。みなさんも見終わった後に最初からもう一度見直していただくと、2人のやりとりの景色が変わって見えるかもしれません。

古典芸能もエンタメも人を感動させるのは、人であり思い

─「ストーブリーグ」における改革の中で繰り広げられる人間関係は、野球の世界だけでなく、私たちの社会生活のあらゆる場面に当てはめることができそうです。

撮影=セドリック・ディラドリアン

萬斎 古い体質と新しい発想の対比が描かれているわけですが、最終的には何が真実で誰が幸せになるかが重要。

「ストーブリーグ」の場合は、幸せになるのは選手でありファンであるべきというプロスポーツの根幹がドラマになっています。結局、人を感動させるのは企業の論理ではなく、人であり思いなんですね。

亀梨 エンタメの世界にも置き換えられることかもしれないですね。

萬斎 古典芸能にだって置き換えられますよ。自分一人の中でも、一座を抱える立場としてのありようと、実際にお客様を前に演じる役者としての視点は違います。新人類と言われた私の世代も還暦近くなり、いまやZ世代が社会に参加している時代ですしね。

亀梨 世代だけでなく、経営者とプレイヤー、それぞれの立ち位置によって見えていない部分があり、見えるからこその難しさもある気がします。

僕自身も昨年、事務所から独立して個人で活動するようになり、これまでとは違う役割も担うようになったので、そんな立場からもこのドラマは沁みる部分がありました。

萬斎 トップに立つ人、挟まれる人、現場の人、三者三様のどこかに、皆さんも共感できるのではないでしょうか。

写真撮影=セドリック・ディラドリアン

亀梨 ビジネスの世界だけでなく、家庭を運営するのだって理想と現実のギャップはありますよね? 僕はまだ親になったことはないですが、もしかしたら子どものころの僕が知らないところで、経済的な事情があったかもしれない。ですから、この作品は誰が見ても、どこかに自分の過去だったり未来だったりを投影できると思います。

萬斎 それぞれの立場に「ご事情」や「ご都合」がある中で、僕は企業の「ご事情」に翻弄される役。組織の中で過ごしていると、そういうものだと思い込んでしまって簡単には方向転換できないんです。同調圧力に対して疑念を持って覆すのは、結構大変なことなので。

亀梨 流れに逆らって自分を押し通すのって、体力がいりますからね。

萬斎 いままでの自分を否定することは受け入れ難いので、逆に相手を否定して引っ張り込もうとする。それが権力というものの実態でもあります。このドラマでは、そんな権力側の嫌な部分を散々演じました。

芸能界の変化を実感。相手の意志の尊重を

─長年にわたってエンターテインメントの第一線を走り続けてきたおふたりですが、年齢とキャリアを重ねたいま、それぞれの日常の中で「変化」「進化」を感じる場面はありますか。

亀梨 萬斎さんのように歴史ある狂言の家に生まれると、伝統やしきたりに反発したこともありましたか?

萬斎 上の世代に向けての反発というよりも、自分の世代に向けて発信しファンを作っていかなければ、という思いを抱いていました。もちろん型は習い守っていくわけですが、アップデートしないと未来に続いていかないのではないかとは思っていました。

ただ、ウチは曾祖父が明治維新、祖父が第二次世界大戦という大きな社会の変わり目を経験しているので、アップデートが必要ということはすでに伝統になっていて、私は色々な活動がしやすかったんです。

撮影=セドリック・ディラドリアン

亀梨 萬斎さんが継承している伝統を前には偉そうなことは言えないですが、僕が芸能界に入ってからの30年近くの時間でも、人間関係、上下関係はずいぶん変わって柔らかい世界になりました。芸能界に限らず学校や会社でも、昔はもっと厳しい人がいましたから。

人と人の距離感が変わりましたね。僕たちは先輩にこちらから電話番号を教えてくださいなんて言えなかったですが、最近は名前すら知らない若い後輩に、初対面でいきなり「LINE交換してください!」と言われて、「君は誰なの?」となることもあります(笑)

僕は先輩にご飯に誘っていただくのが嬉しいタイプでしたが、昔もいまも嫌だと思っていても言えない人もいるはずですよね。

萬斎 無理に誘うと、何らかの「ハラスメント」になってしまうこともあるしね。

撮影=セドリック・ディラドリアン

亀梨 とにかく相手の意思を確認することが絶対ですよね。昔以上に丁寧にコミュニケーションをとる必要を感じます。

本作で共演したINIの木村柾哉くんと話していても、20代の彼らは選択肢がものすごく多様。僕らのころはニュースといえばどの新聞をとってる? 朝は何チャンネルを見てる?という程度でしたが、いまはネットも含めて情報源が無限にあります。

ドラマにしても配信で見る方も多いから同じ時間に誰もが同時進行で見ているわけではないですし。同じ常識を共有しにくい時代に、どうやってコミュニケーションをとれば良いのかは考えないといけないですね。

このドラマも、ほぼ全世界で配信されますが、海外の作品を気軽に見られるという、これもまた選択肢の進化です。

萬斎 「ストーブリーグ」は世界配信なの?

亀梨 プロモーション用に「Bonjour!」とか「Ola!」とか、各国に向けた挨拶動画も撮影したんですよ。

世界には野球の盛んな地域もそうじゃない地域もありますが、日本でも韓国でも、そして世界でも、多様化する価値観の中でそれぞれの人にどんな見方をしていただけるのか楽しみです。

萬斎 チームが一丸となっていく面白さを、どなたでも自分に近い立場で共感できる作品ですからね。企業人から現場に近い人まで、群像劇としての厚みを感じていただけるといいなと思います。

▶亀梨和也さん×野村萬斎さんギャラリー

亀梨和也
かめなしかずや○1986年生まれ。1999年活動開始。また、山下智久との期間限定ユニット修二と彰として2005年にシングル「青春アミーゴ」をリリース。

俳優として、ドラマ『ごくせん』(2005年)、『野ブタ。をプロデュース』(2005年)、『サプリ』(2006年)など話題作に出演し、その後も『事故物件 恐い間取り』(2020年)、『怪物の木こり』(2023年)など多数出演。2010年4月よりスポーツ・ニュース番組『Going!Sports&News』でキャスターを務める。

野村萬斎
のむらまんさい○1966年生まれ。祖父・故六世野村万蔵および父・野村万作に師事。3歳で初舞台。東京芸術大学音楽学部卒業。

「狂言ござる乃座」主宰。国内外で多数の狂言・能公演に参加、普及に貢献する一方、現代劇や映画・テレビドラマの主演、舞台『敦-山月記・名人伝-』『マクベス』『子午線の祀り』「能 狂言『鬼滅の刃』」をはじめ、古典の技法を駆使した作品の演出など幅広く活躍。

現代に生きる狂言師として、あらゆる活動を通し狂言の在り方を問うている。石川県立音楽堂アーティスティック・クリエイティブ・ディレクター。 東京藝術大学・日本大学芸術学部客員教授。重要無形文化財総合指定者。

ドラマ「ストーブリーグ」

Lemino・WOWOWにて2026年3月28日(土)13時より配信・放送開始

Hearst Owned

出演:亀梨和也 長濱ねる 葉山奨之 梶原善 木村柾哉(INI) 板尾創路 勝地涼 甲本雅裕 剛力彩芽 吉田鋼太郎 野村萬斎 ほか

撮影=セドリック・ディラドリアン

亀梨和也さん
ヘアメイク=豊福浩一 (Good) スタイリスト=佐藤美保子

野村萬斎さん
ヘアメイク=奥山信次(barrel) スタイリスト=中川原寛(CaNN)

文=清水井朋子 編集=井本茜(婦人画報編集部)

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