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「犬を移動させてください」救急隊員のお願いに「うちの家族です!」と激昂…→凍った場を一変させた"一言"とは?

  • 2026.5.7
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ライターのとしです。

50代男性の腹痛で救急要請が入った際、現場で空気が変わったのは、傷病者の状態そのものではなく、玄関先にいた飼い犬への対応でした。

救急隊としては、安全確保のためにペットを移動してほしいとお願いしただけでしたが、そのひと言に対して家族が強く反応したんです。

必要なお願いでも、相手にとって大事な存在が関わると、受け取り方はまったく違ってくる。

そんな難しさを感じた現場でした。

玄関先の飼い犬が活動のしづらさにつながった

今回の要請は、50代男性の腹痛によるものでした。

通報したのは奥さまで、私たちが現場に到着すると、玄関先には飼い犬がいて、こちらに向かって強く吠えている状態でした。

もちろん、犬に悪気があるわけではありません。

ただ、これから傷病者の観察や搬送判断を進めていく中では、隊員の安全確保も必要ですし、落ち着いて対応できる環境を整えることも大事になってきます。

そのため、まずはご家族に、ペットを別の場所へ移動させてほしいとお願いしました。

「うちの家族です」と返されたひと言

こちらとしては、活動を進めるために必要なお願いのつもりでした。

ところが、その言葉に対して奥さまはすぐに感情をあらわにし、「うちの家族です」と強い口調で返してきました。

その場の空気が一気に張りつめたのを覚えています。

救急隊にとっては安全確保のための調整でも、ご家族にとっては、大切な存在を邪魔者のように扱われた感覚があったのかもしれません。

いったんその場は、傷病者ご本人が「すいませんね。今、別の場所に移動させますから」と間に入ってくれたことで落ち着き、私たちは観察に移ることができました。

近くにいてもらうだけでも活動に影響が出ることがある

ただ、そのあとも奥さまはペットを抱えたまま、すぐ近くで私たちの対応を見守っていました。

奥さまとしては、傷病者のそばにいたい気持ちもあったはずです。

一方で救急隊としては、犬が吠える可能性や急な動きへの警戒が残る中で、観察や声かけを続ける形になりました。

現場では、ほんの少し注意がそれるだけでも活動全体に影響することがあります。

傷病者の表情や訴え、腹部の状態などに集中したい場面で、周囲への注意が増えるだけでも、やはりやりにくさは出てきます。

そのため、あらためて活動への支障があることを伝え、別の部屋への移動をお願いしました。

最後は本人のひと言で状況が動いた

ただ、そのお願いもすぐには受け入れてもらえませんでした。

現場の空気は落ち着いているようでいて、どこか張ったままです。

そんな中で、最後に状況を動かしたのは、傷病者ご本人の少し強いひと言でした。

「いいから、隣のケージに入れといてくれよ!」
その言葉を受けて、奥さまはしぶしぶという様子ではありましたが、ペットを別の部屋へ移してくれました。

そこからようやく、私たちも落ち着いて観察と搬送準備を進めることができました。

その後は医療機関へ搬送し、大きな混乱なく引き継ぎを終えました。

必要なお願いほど伝え方の難しさが出る

今回の現場で印象に残ったのは、救急隊として必要なお願いであっても、相手にとって大事な存在が関わると、受け取り方ひとつで空気が大きく変わるということでした。

安全確保や活動環境の調整は、現場では欠かせません。

ただ、その正しさだけで進めようとすると、かえって相手の感情を強く揺らしてしまうことがあるんですよね。

とくにペットのように、家族の一員として大切にされている存在が関わる場面では、言葉の選び方が想像以上に重く響くことがあります。

必要なお願いほど、どう伝えるかが難しい。

そんな基本を、あらためて考えさせられた事案でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。  


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