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「富士山が見たい。席を移動させて」“安全運行のため”断ると「前はできた」→空気を変えた機長の“粋な提案”とは…?

  • 2026.5.9
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

皆さま、こんにちは。大手航空会社で10年間、CAとして勤務しておりましたSAKURAです。

お客様と接していると、「前はしてくれたのに」というお言葉をいただくことがあります。

接客業の方なら、一度は経験があるのではないでしょうか。

ある日のフライトで、富士山を見たいと座席の移動を希望されたお客様

安全上の理由でお断りすると、以前はできたことに納得いただけず、機内には重い空気が流れていました。

しかし、その窮地を救ったのは、コックピットから届いた意外な一言でした。

今回は、「NO」で終わらせず、ルールを守りながらお客様の期待に応える「代替案」が、お客様の感動に繋がったエピソードをお話しします。

抱いていた期待と、譲れない「安全」

それは地方発の、羽田空港に夕方頃到着する便でのことでした。

前方座席のご年配の女性二人連れが、お手洗いに立たれた際に「あそこの空いている席に移動して、富士山を見たい」と希望されました。

確かに、機内後方にある窓側の二席が空いています。

しかし、その日は機材が小さかったこともあり、安全運航に欠かせない機体のバランス調整のため、その便では前方から後方への座席移動が一切できない状況でした。

理由を添えて、移動ができない旨を丁寧にお伝えしたものの、返ってきたのは「前はしてくれたわよ」という言葉。

念のため機長にも確認しましたが、やはり答えは「NO」でした。

納得いただけないまま、機内には何とも言えない重い空気が漂い始めました。

窮地を救った、コックピットからの「一言」

間もなく富士山も通り過ぎてしまうし、このまま到着するのか。

何もできないままそんなことを考えていたところ、機長から到着情報の連絡が入りました。

そしてインターホン越しに話を聞いていると、機長から思いもしなかった言葉が届いたのです。

「今の予定であれば、羽田に着陸後、女性お二人の座席の窓から富士山が見えるはずだよ」

そうだ、羽田空港でも富士山が見えるポイントがあったのだ。

私はすぐにお客様のもとへ行き、機長からの情報をお伝えしました。

お二人は半信半疑のご様子でしたが、夕暮れ時の富士山がいかに幻想的かを知っていた私は「絶対に喜んでいただける」と確信していました。

「NO」を「感動」に変えた瞬間

到着後、お二人は弾むような足取りで私のもとへ来てくださいました。

「あんなに綺麗な富士山初めて見たわ。感動した。ありがとう」と、夕焼けに浮かぶ美しい富士山の写真を、嬉しそうに見せてくださいました。

まさにチームの連携により、「NO」をお客様の「期待を超える感動」に変えることができた瞬間でした。

「代替案」が期待を超えるとき

ルールがある以上、たとえ「前はしてくれた」という切実なお声をいただいても、できないことは「NO」とお伝えしなければならない場面があります。

お客様の期待を裏切る心苦しさを抱えながらも、安全を守り抜くこと。

それが私たちの譲れない一線だからです。

けれど、そこで諦めてしまうのではなく、「今の状況で何ができるか」をチームで考え、別の形でお客様の心に寄り添うこと。

その一歩踏み込んだ「代替案」こそが、時に「期待以上の感動」を生むのだと、私は確信しています。


ライター:SAKURA * 心を読む元国際線CA

日系大手航空会社にて10年間、客室乗務員(CA)として勤務。国内線・国際線を経験し、多種多様なお客様と接する中で「感情を読み解く力」を磨く。客室責任者としてVIP対応や後輩育成に携わる傍ら、社内の人材教育やグループ会社での業務にも携わり、多角的な視点から接客のあり方を見つめてきた。

現在は、その鋭い洞察力を活かし、言葉だけでない、「心理的・物理的アプローチによるクレーム回避術」を発信するライターとして活動中。国内線での細やかな気配りから国際線での難しい状況判断まで、現場での実体験に基づいた「心に届く接客のヒント」を言語化し、接客業にとどまらず、人と人とがよりよい関係を築けるサポートをしている。


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