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「地図上では最寄り駅なのに…?」元駅員が明かす、通学定期券の販売窓口で起きる“複雑すぎる”トラブル

  • 2026.5.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に体験した「通学定期券のトラブル」をご紹介します。通学定期券は安い代わりに複雑なルールがあり、発売するときにはチェックすべき点があるのです。

通学定期券の購入について

通学定期券の価格は、同じ区間・同じ有効期間の通勤定期券と比べて大幅に割引されています。便利に使える反面、学生であればどのような定期券も自由に買えるというわけではありません。

基本的には「学生証の有効期間内に、自宅最寄り駅から学校最寄り駅までの間を利用する」学生さんにのみ発売します。この特性上、通学定期券はなかなか自動券売機に任せきりにできません。窓口で係員が学生証や通学定期券購入申込書を確認し、1枚ずつ発売しなければいけないのです。

4月に駅の窓口が混雑する理由のひとつは、通学定期券の新規発売と継続発売が一斉に行われるためです。

通勤定期券と違い、4月から有効の通学定期券を新しく買ったり、継続して購入したりするには、新年度から有効の学生証が配布されるのを待たなければいけません。学生証を1年ごとに更新する学校が近い駅では、窓口前の通路を塞いでしまうほどの長蛇の列ができてしまいます。

無理がある? 運用方法

混雑する駅で長時間にわたって列に並ぶお客さまも大変ですが、通学定期券を販売する駅員も必死です。

校長先生の印鑑が押されていない、別の鉄道会社の申込書を持ってきているなどの基本的な間違いを見つけることから、読み仮名の「ン」と「ソ」、「コ」と「ユ」、「カ」と「ヤ」のように、どちらとも読める文字の判別まで行わなければいけません。

最寄り駅かどうかの確認も忘れてはいけません。自宅最寄り駅は検索のしようがないので

「この駅がご自宅の最寄り駅で間違いないですか?」

と尋ねることで「確認した」ことにできます。

しかし問題は学校のほうで、学校ごとにあらかじめ決めた最寄り駅になっているか全部確認しなければいけません。

当時の係員用端末のデータベースは最新の学校情報が反映されていないこともあり、検索してもヒットしないケースが度々ありました。

そのため、結局は一つひとつ地図アプリで照合するという、非常にアナログで時間のかかる確認作業を強いられていたのです。日々膨大な数の学生が訪れる中、この厳格なルールを窓口で運用し続けることの限界を感じていました。

最寄り駅はどっちだ…?

そんな私に罰が当たったのか、ある日、例によって学校最寄り駅を検索すると、2つの駅のちょうど中間あたりに学校を発見しました。

この専門学校に通うお客さまは自宅最寄り駅から見て遠い方の駅を申込書に書いていましたが、もし指定されている学校最寄り駅がひとつ前の駅なら、申込書を書き換えて販売する必要があります。

上司や先輩に相談してみましたが、どちらとも判断がつきませんでした。

こういうときは本社の専門社員に電話で相談するのですが、このときはあいにく日曜日だったので本社は休みでした。通学定期券は学校が休みの日に両親に付き添われて購入するお客さまも多いのですが、こればかりはどうしようもありません。

学校から通学時の利用駅について案内はなかったか尋ねたのですが、お客さまの返事もはっきりしたものではありませんでした。学校から指示があったかわからず、ほかの生徒の通学ルートも把握しておらず、地図アプリで見てもよくわからない。完全に手詰まりでした。

使い勝手が悪すぎる資料

ちなみに、係員用の端末には学校の最寄り駅を一覧表にした資料もありました。そのため、本来なら私のように1校ずつ学校名を地図アプリに入力して目視確認する必要はないはずなのですが、私はあまりこの資料が好きではありませんでした。

というのも、あまりに使い勝手が悪すぎたのです。いつ作成されたのかわかりませんが、学校名を入力して検索してもヒットしないことが度々ありました。

このときも地図上で判断できなかったのでこの資料を開いたのですが、やはり検出されませんでした。私の使い方に問題があったのかもしれませんが、少なくとも相性が悪かったのは事実です。

最終的に「もし間違っていたら、後日連絡するかもしれません」と言って、申告通りの区間で発売しました。お客さまに記入いただいた申込書は、ルール適用に誤りがないか、社員が不正に発券していないかなどを本社が後日確認します。もし案内が間違っていれば、本社から駅にお叱りの電話がくるというわけです。

まさかの後日談

数日後、出勤した私を上司が呼び止めました。通学定期のことと言われ、

「二択を外したか、運がなかったな」

と思ったのですが、よくよく聞くとさらに驚くべきことがわかりました。

なんと、指定の最寄り駅は私が迷っていた2駅のどちらでもなく、離れた駅から出ている『スクールバスの乗車駅』だったのです。地図上の距離だけで判断してしまった私の完全な盲点でした。

お客さまの保護者さまに連絡したところ、できるだけ早く駅へ差し替えにきていただくようお願いし、ご承諾いただきました。

お客様にはご迷惑をおかけして猛省するとともに、マニュアルや地図上の情報だけでなく、お客様との対話の中で『実際の通学手段』をしっかり確認することの重要性を痛感した出来事でした。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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