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切符を買いたい外国人観光客。駅員が“券売機”に案内すると…直後、外国人が“激怒した予想外のワケ”に「深く考えさせられた」

  • 2026.4.19

 

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に経験した「よかれと思って起きたトラブル」をご紹介します。接客の難しさを痛感した出来事です。

『窓口より券売機へ』という駅の案内方針

都心部のターミナル駅でのことです。その駅はあまりにも窓口の利用客が多く、待機列が長すぎて2時間以上の待ち時間となることもありました。そこで、待機列に並ぼうとするお客さまから先にご用件をお伺いし、券売機で対応できる場合は券売機へご案内する係を配置していました。

私もたまにこの案内係をしていたのですが、案内係よりは窓口にいたほうがいくらか楽でした。窓口にはきっぷの購入に来られるお客さまばかりなのに対し、案内係はネット予約の案内や忘れ物の対応、道案内、さらにはご意見の対応まで1人で行わなければならないためです。

券売機も多機能化のためのシステム更新を繰り返しており、昨日はできなかったはずのことが今日はできたり、反対にできていたはずの機能がいきなりなくなったりします。ただの案内係ひとつ取っても、膨大な専門知識と経験を要するのです。

外国語にも対応している券売機

係員ですら慣れていなければ使いこなせない券売機なのですから、お客さまが進んで使うはずもありません。

「その駅までのきっぷなら券売機で買えるので、窓口ではなく券売機に並んでください。券売機の前にも専門の係員がいます」

と案内して、ようやくお客さまは窓口に並ぶのを諦めてくれます。

ある日、日本語をまったく話せない外国人観光客が窓口の前に現れました。どうやらきっぷを買いたいようで、目的地は券売機で購入可能なところでした。案内係の私は券売機を指差し、英単語の羅列と身振り手振りで券売機に並ぶよう促しました。

英語でのご案内は難しいようでしたが、身振り手振りでなんとかニュアンスは伝わったようです。厳密にはもちろん、目の前のきっぷ売り場できっぷを買うことはできるのですが、「待ち時間が短いため券売機をおすすめしている」とまで説明できる能力を私は持っていませんでした。

また戻ってきた

ところが10分ほど経つと、券売機の案内係が先ほどの海外からのお客さまを私のところまで連れてきました。お客さまの手にはスマートフォンがあり、誰かと通話しているようです。券売機係の駅員が言います。

「なんか、電話の相手が変われと言っているそうなので、お願いできますか?」

なにかトラブルになったのだな、と直感しました。電話を受け取ると、意外にも日本語が聞こえてきました。ネイティブな発音ではありませんでしたが、電話口からは流暢な日本語が聞こえてきました。

その電話口の方はたいそうお怒りで、私に現在の状況を説明してきました。それによると、どうやら券売機が対応している言語は標準語のようなもので、このお客さまが話している言語とは名前は同じでもまったく異なる言語である、とのことです。

収まらぬ怒り

どうしても券売機へ案内されたことが我慢ならなかったようなので、私は途中で券売機をおすすめするのをやめ、

「わかりました。では時間はかかると思いますが、きっぷ売り場に並んでいただきます」

と返しました。しかし「はいそうですか」とは返ってきません。

「なぜ初めからその案内をしないのですか?なぜこちらに従わないのですか?」

電話口の向こうの方にとってこの目の前のお客さまがどのような方なのかはわかりませんが、まったく話が終わる気配がしません。

他のお客様さまの列も急激に伸びて業務に支障が出始めており、これ以上の電話対応は難しいと判断しました。大変心苦しい思いを抱えながらも『電話はお返ししますね』と伝え、窓口をご案内しました。

2時間待っても「人」がいい?

この駅では券売機が窓口の3倍から4倍ほど設置されています。それにもかかわらず、たった1ヶ所、数ブースしかない窓口に時間をかけて並ぶお客さまは後を絶ちません。

理由はどうあれ、お客さまは駅員によるきっぷの販売を望んでいるのだと思います。

一方で鉄道会社は現場の人員不足を把握していながらも、恐らく人員を増やすための人件費を捻出することさえ難しいのが現状でしょう。そこで「人にやってもらいたい」お客さまと「機械にやってもらいたい」鉄道会社の齟齬が生まれてしまっているのだと思います。

システム化を進めざるを得ない会社の事情も理解できますが、システムの多言語対応などが追いついていない現状では、そのしわ寄せが現場の駅員とお客様に向かってしまいます。

誰にとっても優しい鉄道サービスのあり方とは何なのか、深く考えさせられた出来事でした。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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