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乗客「遠回りして稼ぎたいのか!」目的地で15分間の泥沼クレームに…“良かれと思った対応”がトラブルを招いたワケ

  • 2026.4.18
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現役タクシードライバーのけんしろです。

タクシーの仕事をしていると、酔ったお客さまや急いでいるお客さまなど、さまざまな方に出会います。中でも気をつけなければならないのが、運賃に関するトラブルです。

その日のお客さまは、年配のご夫婦でした。平日の夜、スナックからのご乗車です。

乗り込まれてすぐ、「大変な仕事だね」と声をかけてくださいました。こうして気遣っていただけると、それだけで少し救われる気持ちになります。

私もそのときはうれしくなって、「ありがとうございます」と返しました。たぶん、その一言でどこか気が緩んでしまったのだと思います。

たった一言の確認不足

目的地までは、大通りを通るか、一本西側の交通量の少ない道を通るかの二通りがありました。
私は一本西側の道を選びました。距離としてはほとんど変わらず、運賃に大きく影響するような遠回りではなかったからです。

ところが後部座席から、こんな声が聞こえてきました。

「あら、この運転手、遠回りするつもりよ」
「そうだな」

その言葉を聞いた瞬間、「まずいな」と思いました。

本来なら、出発前に「こちらの道でよろしいですか」と一言確認しておけば済んだ話です。

たとえ自分の中で遠回りではなくても、お客さまにとっていつもの道と違えば不安になります。
しかもタクシーはメーターが上がっていく仕事です。少しでも違和感があれば、「余計に取られるのではないか」と疑われても不思議ではありません。

そう考えると、原因は私の確認不足でした。

「払わない」と言われた15分

目的地に到着すると、案の定、ご夫婦は強い口調でおっしゃいました。

「この道は違うでしょう」
「そんなことまでして売り上げを上げたいのか!」

しかも、お二人が続けて言葉を重ねるので、その場の空気は一気に険しくなりました。
こちらとしては、「そんなつもりではありません」と言いたい気持ちもありました。実際、わざと遠回りしたわけではありません。

メーターは1300円でしたが、お客様は『いつもは1000円くらいだ』とご納得されません。

私は「では1000円で結構です」とお伝えし、何とかその金額で納得していただけないか交渉しました。
自分にも確認不足があった以上、少しでも納得していただける形にしたかったからです。

ところが、それにも応じていただけませんでした。

「払わない!」

私は誠心誠意ご説明し、謝罪を重ねましたが、車内の空気は重くなる一方でした。

最終的にこの件は会社にも報告し、私自身も会社から厳しく指導を受けるなど、非常に苦い経験となりました。

信頼は、出発前の一言で変わる

正直に言えば、かなりこたえました。
自分としては大きく間違った運転をしたつもりはなかったのに、結果として「信用できない運転手」と見られてしまった。
そのことが何より堪えたのです。

でも、あの出来事を振り返るたびに思うのは、タクシーでは少しの確認漏れが、そのまま大きなクレームにつながるということです。

「この道でよろしいでしょうか?」

たったそれだけで、防げるトラブルがあります。

あの夜の悔しさは今でも覚えています。
でも同時に、確認とは単なる作業ではなく、お客さまとの信頼をつくる第一歩なのだと痛感しました。

タクシー運転手にとって大切なのは、ただ目的地まで運ぶことではありません。安心して乗っていただくこと。

そのための確認を、私はこれからもおろそかにしてはいけないと思っています。


ライター:けんしろ

現役タクシードライバー。
日々さまざまなお客様と向き合う。現場での経験をもとに、移動の裏側にある人間模様や、サービス業における対応力について発信。密室空間だからこそ見える感情の機微を大切に、実体験をもとにしたコラムを執筆している。


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