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「市販薬でも塗っておこう」脇腹にできた“湿疹”を放置→数ヶ月後、絶叫するほどの痛みに襲われ…50代女性に起きた“身体の異変”

  • 2026.5.2
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出典元:photoAC(※画像はイメージです

「肌荒れかしら、市販の塗り薬でも塗っておけばいいわ」。

初夏のある日。50代の女性Sさんは、左脇腹にできたピリピリする赤い湿疹を肌荒れか何かだろうと気にも留めていませんでした。

数ヶ月が経って、湿疹は消え皮膚は元通りの状態になりましたが、焼けつくような激痛が残りました。現在でも、服の布地が擦れるだけで絶叫するほどの痛みに襲われます。夜も眠れず、趣味の旅行にも行けない苦痛の日常に悩んでいます。

皆様こんにちは、周術期の痛みはもちろん、難治性の痛みとも日々向き合う麻酔科専門医の松岡です。

ただの湿疹ではない。神経にダメージを与えるウイルスの暴走

帯状疱疹は、実は単なる皮膚の病気ではなく、体の奥深くで進行する神経の病気です。これを皮膚だけで起こっているトラブルだと勘違いすることが悲劇の始まりとなります。

【帯状疱疹が一生の激痛を残すフロー】
・小児期の初感染と潜伏:子どもの頃に「水ぼうそう」として感染。治った後も、ウイルスは死滅せずに神経の根元に静かに潜伏し続ける
・ウイルスの再活性化:数十年後、加齢や疲労で免疫力が落ちた隙を突き、潜んでいたウイルスが目覚めて神経を激しく破壊しながら増殖する
・発疹の出現:ウイルスは神経を通り道にして皮膚の表面に到達し、赤い水ぶくれ(帯状疱疹)が現れる
・運命の72時間(治療の分岐点):発疹が出てから72時間以内に「抗ウイルス薬」を内服すれば、ウイルスの暴走をストップさせ、神経へのダメージを最小限に抑えられる
・激痛の固定化:破壊された神経が、異常な痛みの回路を形成するため、帯状疱疹後神経痛(PHN)として湿疹が消えた後も一生残る可能性がある

「忙しいから市販薬で」という自然な心理と危険な罠

発疹が出たときに、「とりあえず手持ちの塗り薬を」と考えるのは無理もありません。実際に、塗り薬で問題がないこともあります。また、仕事や家事で忙しい毎日のなかで、湿疹のために病院に行くわけには行かないと思うこともまたありえることです。

ただし、ぜひ知っておいていただきたいのは、帯状疱疹の発疹が出ている時、皮膚の下ではウイルスが神経のケーブルにダメージを与えつつ、その中に潜伏し始めているということです。市販の塗り薬は皮膚の表面を保護するだけで、神経周囲で暴れるウイルスには効きません。

初夏は気温の変化などで自律神経のバランスが崩れ、免疫力が著しく低下しやすい時期です。ここに睡眠不足やストレスが重なると、免疫力が低下し、ウイルスの増殖は一気に加速します。発疹が出てから72時間以内に専用の抗ウイルス薬を内服してウイルスの増殖を止めないと、神経は修復不可能なダメージを受けます。異常な痛みの回路が形成されてアロディニア(異痛症)と呼ばれる状態になると、服が擦れるといったわずかな刺激を激痛として脳に伝達してしまうようになります。一度、この状態に移行してしまうと、ペインクリニックの専門的な治療をもってしても、痛みの完全な除去は極めて困難になります。
ただの湿疹だと自己判断することの危険性はまさにここにあるのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

ただの湿疹という誤認で神経を限界まで破壊されないよう、帯状疱疹ならではの特有のサインを見逃さない配慮が必要です。

1.体の左右どちらか片側だけに、身体の真ん中を跨がないように、帯状に赤い発疹が出ている

ウイルスは特定の神経に沿って移動するため、体の中心線を越えて両側に発疹が出ることは稀です。

2.発疹が出る数日前から、服が擦れるだけでピリピリ、チクチク痛む

皮膚に症状が出る前に、すでに奥の神経がウイルスに攻撃され始めていることを示す危険な警告サインが出ることがあります。

3.市販の虫刺され薬や湿疹の薬を塗っても、痛みが全く引かない

表面の炎症ではなく、神経そのものがダメージを受けている影響です。

まとめ

ただの湿疹だろうと判断したことで介入のタイミングを逃したばかりに、一生続く激痛に悩まなければならなくなるというのはあまりに重い代償です。
帯状疱疹だと気づき、適切に受診するためにも、身体(湿疹)の観察と痛みに注目することから実践してみましょう。
毎日の入浴時や着替えの際に、体の片側だけに不自然な発疹や痛みがないか簡単に確認する習慣をつけましょう。さらに、疑わしい発疹や痛みを感じた際は決して自己判断で放置せず、直ちに皮膚科や内科を受診することが不可欠です。早期の抗ウイルス薬の投与が、神経を守る方法となります。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など

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