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「目のかすみがひどい…」老眼のせいと放置→数年後、“黒い墨のようなモノ”が視界に広がり始め…50代男性を襲った“恐ろしい病気”

  • 2026.4.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「最近目のかすみがひどい。老眼が進んでいるのかもしれないが、ひとまず目薬で様子を見よう」。50代の会社員Gさんは、健診で血糖値の異常を指摘されていましたが、食事に気を付けることにして放置していました。

しかし、数年後。Gさんの視界に突然、黒い墨のようなものが広がり病院へ駆け込みました。診断は「増殖糖尿病網膜症」による出血でした。現在は眼への注射やレーザー治療を繰り返し、いつか光を失う恐怖に怯えながら、読書や運転という当たり前の楽しみを奪われた日常に後悔を募らせています。

皆様こんにちは。糖尿病の恐ろしさを日々目の当たりにしている麻酔科専門医の松岡です。糖尿病を放置すると、眼の手術や足の切断などが必要になってしまいます。この記事を通じてぜひ対応を確認しましょう。

高血糖は目の奥の血管を蝕む「静かなる脅威」

目のかすみを年齢や疲労のせいだと考えて目薬を使うのは、よくあることです。
しかし、 原因が「高血糖」である場合、目薬では改善できません。目の奥にある「網膜」には、光を感じるための大変細く繊細な血管のネットワークが張り巡らされています。

【高血糖が失明を引き起こすフロー】

  1. 慢性的な高血糖が、眼底の極細の血管にダメージを与えてボロボロにする
  2. 血流が途絶えて酸欠になり、栄養を補おうとする
  3. 「新生血管」が勝手に作られるが、これは突貫工事のように作られたもので脆い
  4. この急造された脆い血管は、ちょっとした血圧の変化で容易に破裂する
  5. 眼球の内部で大出血を起こし、ある日突然、視力を完全に奪い去る

    この病気は、血管が破綻するギリギリまで「痛みが全くない」のが特徴です。

「ただの老眼」という思い込みと高血糖の罠

「スマホの見過ぎで目が疲れただけだ。市販の目薬で乗り切ろう」。50代になり、体の不調を年齢や疲れのせいだと解釈するのは、人としてごく自然な心理です。少し目が見えにくいことで、糖尿病による合併症を疑うことは難しいかもしれません。

ただし、 視力低下を明確に自覚した時には、すでに病状がかなり進行してしまっています。特に、手元の健診結果で「HbA1cが6.5%以上」や「空腹時血糖値が126mg/dL以上」であれば、すでに治療介入すべき糖尿病の基準を満たしてしまっています。
※HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は数ヶ月の血糖値の推移を代表した値と考えてください。
※健康診断の日は食事を取らないはずなので、単に「血糖値」と書いてあっても空腹時血糖値のことだと考えてください。

さらに、血糖値が高めなのに「タバコ」を吸い、「高血圧」も放置している場合、血管にとっては非常に過酷な環境といえます。これらが重なると、血管の破壊は一気に加速します。

一度失われた視力や血管は完全に元には戻りません。しかし、適切なタイミングで眼科を受診し、進行を食い止めることができれば、大切な光を守ることは十分に可能です。少しの知識と受診のきっかけさえあれば進行を抑えることがきっとできたでしょう。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

「ただの疲れ目」と誤認して眼底の血管を限界まで追い込まないよう、以下の症状を見逃さないでください。

1.飛蚊症(目の前に小さなゴミや虫のようなものが飛んで見える)

眼底で微小な血が漏れ出し、その光が網膜との間に割り込んで影となって見えている「飛蚊症(ひぶんしょう)」という出血の初期サインです。生理的なものもありますが、最近気になるという場合には注意が必要です。

2.直線のはずの柱やカレンダーの線が、ゆがんで見える

血管へのダメージが蓄積する結果、血管が水分を保持できなくなります。血管から水分が漏れ出し、網膜にある物を見る中心部分(黄斑)に水ぶくれ(黄斑浮腫)が生じている証拠です。

3.視界の一部が黒く欠けたり、カーテンがかかったように暗く見えたりする

眼底での大出血や網膜剥離が起きかけている、極めて危険なサインです。網膜が剥がれるとその部分の視野が欠けてしまいます。すぐに眼科を受診してください。

まとめ

眼の症状が気にはなっていたのに、目薬でやり過ごして受診が遅れ、失明に向かってしまう。診断後に振り返るとこの事実は非常につらいものです。眼の症状に心当たりがある場合にはまず血糖値を確認してみましょう。

一方で、血糖値が高いからと焦って極端な糖質制限などを始め、「自己流で急激に血糖値を下げる」と、かえって網膜症が悪化し失明を早める危険性があります(糖尿病網膜症は血糖値の「変動」がリスクになってしまいます)。そのため、医師の指導のもとで安全に数値を下げる必要があるのです。

あまり知られていないことですが、糖尿病と診断されたら、「自覚症状がなくても必ず眼科を受診する」ことが推奨されています。糖尿病の眼の症状は着々と進行していく恐ろしさがありますが、だからこそ良きパートナーとして医療を活用してください。目薬をさすのと同じくらい気軽に、ぜひ医療を頼ってください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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