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「親権争いは母親が有利」子どもを連れて実家へ帰った妻→2週間後、裁判所から届いた“1通の郵便”とは【弁護士が解説】

  • 2026.5.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

円満だと思っていた夫婦生活でも、育児や家事の負担から亀裂が入ることは少なくありません。

特にお子さんの親権を巡る争いでは、「親権争いは母親が有利」という通説を信じ、感情的な行動に出てしまうことがありますが、そこには大きな落とし穴があります。

本記事では、ある夫婦の事例を通じて、親権争いにおいて何が重視され、どのような行動が不利を招くのかを詳しく解説します。

円満な夫婦生活と家事・子育ての分担

5年前に結婚したXさん(妻)とYさん(夫)は、仲の良い夫婦で、結婚して1年後に男の子を授かりました。

XさんもYさんも仕事を持っていましたが、Yさんは、家事や子育てをXさんに任せきりにすることはなく、家事全般を行い、息子のAくんのお風呂や寝かしつけ、食事のサポートなども積極的に行っていました。

XさんもYさんも忙しくて、保育園にAくんをお迎えに行けないときには、近所に住むYさんの母親が代わりにお迎えに行ってくれたりしました。

夫婦関係の変容と突然のXさんの行動

しかし、そのうちXさんとYさんは家事や育児の分担でもめることが多くなり、夜中に激しい口論をするようになっていきました。

そんなある夜のこと、いつものように喧嘩をしていたら、YさんがXさんに向かって「離婚したらAは自分が引き取る」と言いました。これを聞いたXさんは、かわいい息子のAくんをこのままでは取られてしまうと思いました。

そして、翌朝、衝動的にAくんを連れて遠方の実家に帰ったのでした。会社には体調不良を理由に有給休暇を申請しました。

Yさんが、離婚してもAくんの親権はXさんに渡すと約束しない限り帰るつもりはありませんでした。

Yさんから申し立てられた審判とその結果

2週間ほど経ったある日、裁判所からXさん宛に郵便が届きました。

なんと、Yさんが「子どもの引き渡し」と「子どもの監護者指定」という審判を起こし、AくんをYさんに引き渡すよう求めていることがわかりました。

Xさんは、ネットで「子どもの権利を争ったら母親が強い」という話を聞いたのを思い出しました。母親の自分が負けるわけがないと思いました。

さらに2週間後に審判が開かれ、裁判官から詳しい事情を聴かれました。その後、別の日には、家庭裁判所の調査官という人からやはり事情を聴かれました。そしてその結果、2回目の審判の日に、裁判官からAくんをYさんに返すよう促されたのです。どうやら、Aくんを保育園や周りの友達、育ってきた環境などから突然引き離したことがマイナスに評価されたようでした。

そしてここで拒否しても、同じ内容の審判を出すことになると思うとも言われました。そこで、泣く泣く、Xさんは一旦、AくんをYさんに返したのでした。

Aくんを諦めきれないXさん…離婚調停・訴訟を提起することに

しかし、Xさんは、Aくんと離れて暮らし続けることが我慢できませんでした。そこで、離婚調停を起こし、Aくんの親権を主張することにしました。

Xさんは、1か月後にすぐに離婚調停を起こしました。第1回の調停はその1か月後に行われました。Yさんは親権を譲る気配はありませんでした。2回目で調停は不成立に終わりました。

裁判は、弁護士に依頼することにしました。弁護士は「子どもさんはまだ小さいし、通っている保育園が変わらない場所に住めるようにするのであれば、親権を取る余地はある」と言いました。そこで、調停不成立から2か月後に離婚訴訟を起こし、そこでも親権の主張をしました。

YさんはやはりXさんに親権を譲るつもりはありませんでした。Xさんは、二度と実家にAくんを連れ帰ったりしないこと、自分が親権を取っても、Yさんに毎週会わせることなどを主張しました。一方、Yさんは、自分とその母親で、Aくんをしっかり養育できていること、Aくんも精神的に安定しており、養育環境を変える必要はないことなどを主張しました。

過信が招いた後悔の結末

ついに下された判決は、Xさんにとって極めて厳しいものでした。

結果として、Xさんは親権を勝ち取ることができませんでした。「母親だから有利」という考えに甘んじ、現状を打破しようとした強引な行動が、かえって「子供の利益を損なうもの」と判断されたのです。

感情に任せた一度の行動が、かけがえのない我が子との生活を失うという、取り返しのつかない結果を招いてしまいました。

親権争いで忘れてはならない視点

「母親であれば親権争いに勝てる」という思い込みは、現代の司法判断においては通用しない場合があります。

裁判所が最も重視するのは「子供にとっての幸福(子の福祉)」であり、今の生活環境を維持する「継続性の原則」が尊重されます。

どれほど不安や怒りがあっても、独断で子供を連れ去るような行動は、後に大きな不利益を招くリスクがあることを深く理解しておく必要があります。

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