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父の死後に“アパート6棟”を引き継ぎ→「資産として数億円」のはずが…10ヶ月後、50代息子を襲った“悲劇”【元銀行員は見た】

  • 2026.4.26
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出典元:photoac(※画像はイメージです)

銀行員時代に担当した55歳の男性・Aさん(仮名)。85歳のお父さまが亡くなり、相続手続きのため来店されました。

Aさんのお父さまは実家以外に6棟の賃貸物件を所有しており、土地・建物すべてお父さま名義。相続人はAさん1人でした。

不動産の評価額も申し分なく、資産としては数億円に上る規模。しかし、Aさんは相続税を支払えず「延納」することに……。

問題は、現金が十分に残っていなかった点でした。

所有地にアパートを建設すると節税効果を得られる?

不動産の相続税は、土地や建物の評価額によって決定されます。

所有する土地にアパートなどの賃貸物件を建てると「貸家建付地」となり、ただ土地を所有しているよりも評価額が低くなります。

そのため、更地を所有している人は「相続税対策」として賃貸物件を建て、相続時の評価を低くしようと考えるケースも少なくありません。

Aさんのお父さまは実家以外の土地すべてに賃貸物件を建てており、相続税対策には問題がないようにも思えます。では、なぜ期限までに相続税を支払えなかったのでしょうか。

「節税(評価額を下げること)」と「納税(現金を確保すること)」は全くの別物です。多くの方が『評価額が下がれば安心』と考えがちですが、評価額を下げすぎて手元の現金までアパート経営に投じてしまうと、今回のような『資産はあるが税金が払えない』という本末転倒な事態を招きます。

相続税の納付は「現金一括」が基本!手元資金がない場合は要注意

相続税は現金一括納付が基本であり、相続開始から10ヶ月以内に納める必要があります。

今回のケースでは、賃貸物件の修繕費やローン返済、空室による収入減などが重なったことから、現金として相続する資産は4000万円程度。

相続税を支払うには、数千万円以上不足していました。

Aさんの希望は、お父さまから受け継いだ不動産を手放さずにアパート経営を続けること。

しかし、10ヶ月以内に多額の相続税を支払うための現金を用意するのは難しいと判断し、結果として「延納」を選択することになったのです。

相続税を納付できない場合はどうする?

相続税の納付が難しい場合、以下の3つの手段がありますが、どれも一筋縄ではいきません。

  • 延納:相続税を分割払いで支払う
  • 売却:不動産を売却して納税する
  • 物納:不動産そのものを納める

Aさんは不動産を手放さずに相続税を分割払いするため「延納」を申請しましたが、手元の現金をすべて納税に充てても不足する場合に、税務署の厳しい審査を経て初めて認められる救済措置です。また、延納には「利子税」がかかります。

また、「売却」は買い手が限られるほか、現金化までには時間がかかることも。

さらに、延納・売却によっても対処できない場合には最終手段として「物納」も可能ですが、国による審査は非常に厳格です。特に賃借人がいる物件は『物納不適格』として却下されるリスクが高く、実際には選べないケースがほとんどです。

もっとも安心できるのは、生前から相続税に充てる資金の確保について考えておくことです。

Aさんのように「資産があるから大丈夫」と考えていても、資金不足で行き詰まるケースは珍しくありません。

不動産は流動性が低い資産であることを念頭に置き、できるだけ早くから納税資金の工面方法を検討しておくとよいでしょう。


※相続税の延納要件や、生命保険の加入可否、贈与税の加算ルールなどは、個別の状況や最新の税制改正により大きく異なります。具体的な対策については、必ず税理士や弁護士などの専門家にご相談ください。

ライター:元銀行員・ikebu

元銀行員・行政書士資格保有の金融・法律ライター。一種外務員資格(証券外務員一種)、行政書士資格を保有。

大学では法学部・法律学科に在籍し、卒業後は地方銀行に入行。個人リテール業務において、投資信託・生命保険商品の販売を中心とする資産運用のサポートのほか、住宅ローンや相続などの幅広い業務に携わる。

法人営業では、事業性融資や法人向けの運用商品販売を担当。現在は金融・法律ジャンルを中心にライターとして活動。銀行員時代の経験や保有資格を活かし、専門的な内容を分かりやすく丁寧に解説することを得意とする。