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春ドラマ大活躍俳優も出演、ネトフリ週間ランキングTOPを席巻し“世界的”大ヒットを果たした【傑作ドラマ】

  • 2026.5.2

2023年にNetflixで独占配信された全5話の連続ドラマ『幽☆遊☆白書』(以下『幽白』)は、アクションもストーリーもハイクオリティの仕上がりとなっており、国内外で大ヒットした。

【Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)1位】
【Netflix週間グローバルTOP10、英語を含む全言語シリーズ2位】
さらに、【世界92の国・地域で今日のシリーズTOP10入り】の快挙! 出典:「幽☆遊☆白書」 Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)初登場1位 さらに、英語を含む全言語シリーズ作品で 日本発シリーズ歴代最高 全世界2位の快挙!」(2023年12月21日投稿 より)

※以下本文には配信内容が含まれます。

本作は霊界探偵に任命された不良少年の浦飯幽助(北村匠海)が仲間と共に妖怪たちと戦う姿を描いたアクションドラマだ。
原作は、1990~94年に『週刊少年ジャンプ』で連載された冨樫義博の大ヒット漫画。
『幽白』は鳥山明の『DRAGON BALL』、井上雄彦の『SLAM DUNK』と並ぶ90年代の少年ジャンプを代表する人気漫画である。そのため、今も熱狂的なファンが多いのだが、だからこそ映像化のハードルはとても高かった。
しかし、ドラマスタッフは、真正面から実写映像化に挑戦し、高いクオリティの作品に仕上げた。

実写版『幽白』に実在感を与えた俳優たち

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北村匠海 (C)SANKEI

まず、本作を観て驚いたのが俳優たちの熱演だ。
主役の幽助を演じた北村匠海は、現在は月9(フジテレビ系月曜夜9時枠)で放送されている連続ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』で主人公の教師を演じているが、当時は映画『東京リベンジャーズ』シリーズで演じた不良高校生のイメージが強く、不良学生役と言えば北村という印象だった。『幽白』でも、少しひねくれているが、実は優しい不良少年の幽助を、見事に演じ切っていた。
幽助をライバル視する悪友の不良少年・桑原和真を演じた上杉柊平もハマっており、人情に熱い泥臭い男を好演。桑原の持つムードメーカーとしての明るさが滲み出ていて、登場するだけで心が和んだ。
この二人の演技がリアルに寄せているのに対し、幽助の仲間となる蔵馬を演じた志尊淳と飛影を演じた本郷奏多は、それぞれ妖怪ということもあってか漫画のキャラクターに寄せたセリフ回しや表情となっており、ケレン味のある振り切った芝居となっていた。

対して、ラスボスとなる妖怪・戸愚呂弟を演じた綾野剛は、VFXで展開された筋肉が肥大したラスボスを見事に演じており、クライマックスを盛り上げた。
日常の芝居とアクションに加え、VFXを用いたシーンも多いため、通常の実写作品の何倍も手間暇がかかっている本作だが、巨漢の怪物に変身する戸愚呂弟はもっとも撮影が大変だったのではないかと思う。ラスボスとしての戸愚呂弟の禍々しいビジュアルを描くことは、本作最大の課題だったと思うが、綾野剛の圧倒的強者の凄みと哀しみが滲み出た芝居によって、見事達成できたと言えるだろう。

そして、もっとも印象深かったのが、左京を演じた稲垣吾郎である。
バトル面でのラスボスが戸愚呂弟だとすれば、左京は思想面でのラスボスだ。彼は物語の黒幕として様々な悪事をおこなってきたが、その行動原理は謎で、腹の底が見えない。 彼は生粋のギャンブラーだが、危険な賭けを楽しむ姿には、どこか破滅願望のようなものがにじみ出ている。
原作漫画では悪役の描写を得意とする冨樫義博作品ならではの魅力的なキャラクターだったが、稲垣が淡々と演じる左京は、原作とは異なる不気味さがあり、マイルドな語り口の奥底にある世界に対する凄まじい悪意が伝わってきた。

全5話の中に原作漫画の魅力が詰め込まれた純度の高い映像化

本作は全5話という短いため、全エピソードを描くには尺が足りない。
こういう場合は人気エピソードに焦点を当てることが定番だが、三嶋龍朗の脚本は実に見事で、各エピソードから原作のエッセンスを抽出し、とても純度の高い『幽白』に仕上げている。
また、本作の監督は、映画『君の膵臓をたべたい』や連続ドラマ『そして、生きる』等の作品で知られる月川翔が担当しているのだが、日常生活のディテールが丁寧に描かれているため、妖怪が登場するファンタジックなドラマでありながら、地に足のついたリアリティが存在する。
特に第1話と第2話は、日常の中に非日常の存在である妖怪が浸食して来るという構成だからこそ、物語の基盤となる日常描写が必要となるのだが、幽助たちの日常の描き方が実に巧みだった。日常描写を通して、幽助たちに守るべき大切な存在がいることを序盤ではっきりと描いているからこそ、妖怪と戦う姿に説得力が宿っていた。 そして、『幽白』の最大の見せ場は妖怪とのバトルだが、『HiGH&LOW』シリーズを手掛けた大内貴仁がアクション監督を務めており、第1話の魔回虫という妖怪に取りつかれた人間と幽助が住宅街で戦う場面や、第2話で妖怪・剛鬼(勝矢)と幽助が廃車置き場で戦う場面は、ロケーションを活かしたリアルなバトルが展開されており、とても見応えがあった。
逆に4~5話で展開される妖怪たちと幽助たちの戦いは、VFXを駆使することによって、原作漫画のファンタジックなバトルに迫ろうと挑戦していたが、妖怪たちの不気味な造形や、幽助たちの必殺技がカッコよく描かれており、原作ファンとして、とても嬉しかった。

少年漫画の映像化という意味では間違いなく到達点と言える本作だが、同時に様々な表現に挑戦した壮大な実験作と言えるドラマだった。
おそらく『幽白』の映像表現は、今後、Netflixで作られる少年漫画の実写化の基準となっていくのだろう。もちろん『幽白』自体も、まだ描かれていないエピソードがあるため、いつか続編が作られることを楽しみにしている。


ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。