1. トップ
  2. 深夜ドラマ“だからこそ”実現できた異色の青春ドラマ 宗教を題材とした“歪な関係”に一気に引き込まれた第1話

深夜ドラマ“だからこそ”実現できた異色の青春ドラマ 宗教を題材とした“歪な関係”に一気に引き込まれた第1話

  • 2026.4.9

深夜ドラマには、少年少女の鬱屈とした心情に寄り添った青春ドラマの傑作が多い。
現在放送中の『るなしい』も宗教の要素を入れた異色の青春ドラマとなっており、第1話を観て一気に引き込まれた。

※以下本文には放送内容が含まれます。 

undefined
(C)「るなしい」製作委員会

高校生の郷田るな(原菜乃華)は、「火神の子」として、おばば(根岸季衣)と営む鍼灸院で、自分の血を入れたモグサを用いて「自己実現」を売る信者ビジネスをおこなっていた。
そのため、クラスメイトから気持ち悪いと思われており、陰湿ないじめに遭っていた。
そんな彼女を理解して手を差し伸べてくれたのは、幼馴染で同級生の石川スバル(本島純政)。るなはスバルの所属する文芸部の部室でお灸をすることで、自分の居場所を作っていた。
ある日、るなは学校の人気者・成瀬健章(窪塚愛流)にいじめから庇ってもらい、やがて彼に恋をする。
「火神の子」にとって恋は許されないことだった。それでも、るなは自分の気持ちが抑えられず、健章に告白するのだが、「火神の子」としてのるなを尊敬していた健章は幻滅する。
失恋したるなは、健章に復讐するために「火神の子」としての務めに、より深く没入し、健章を信者ビジネスに引き込んでいく。

深夜ドラマだから描けた暗黒青春ドラマ

本作は『小説現代』で連載されていた意志強ナツ子の同名漫画をドラマ化したものだ。
漫画には思春期の少年少女の鬱屈した内面を描いた暗黒青春漫画の名作がいくつか存在し、深夜ドラマ枠で定期的に映像化されている。

たとえば今クールでは、押見修造の暗黒青春漫画『惡の華』が、鈴木福とあののW主演で深夜ドラマ化される。田舎の中学を舞台に思春期の少年少女の鬱屈した心情をこれでもかと描いた『惡の華』は、思春期の少年少女が抱え込んでしまう切実な心情を描いた作品で、決して万人が感情移入して楽しめるような物語ではない。

こういう作品が、幅広い年代の視聴者が観ることを前提とするプライムタイムでドラマ化されることはほとんどないのだが、深夜ドラマという真夜中に視聴者が一人で観ることを前提とした暗くて静かな放送枠とはとても相性が良いため定期的に作られており、一部の視聴者から熱狂的に支持される。
その意味で、とても個人的な心情に寄り添ったドラマだと言える。

undefined
(C)「るなしい」製作委員会

『るなしい』にも同じことが言えるだろう。主人公のるなも、彼女を見守るスバルも決して純真無垢な子どもではなく、思春期ならではの鬱屈とした内面を抱えている。
当初は「火神の子」という特別な存在に思えたるなは、健章に恋心を抱いた瞬間、普通の女の子のように、見た目を気にするようになる。そんな彼女を見てスバルは失望するのだが、その心情は複雑で、“健章への嫉妬”だけではないように感じた。
また、クラスの人気者でキラキラとした存在に見える健章だが、家が裕福ではないため、何か金になる仕事を持ちたいと悩んでいた。そのため、信者ビジネスで稼ぐるなを尊敬していた。
そして、健章にフラれたるなは、彼を逆恨みして信者ビジネスに深くのめり込んでいくのだが、どのキャラクターも決して綺麗ではない複雑な内面を抱えていることが、第1話だけでよくわかる。

本島純政、窪塚愛流、原菜乃華、ドラマを盛り上げる期待の若手俳優

undefined
(C)「るなしい」製作委員会

暗黒青春ドラマが面白くなるかどうかは、学生役を演じる若手俳優の力にかかっていると言っても過言ではないが、『るなしい』の出演俳優は、実に生々しい演技を披露している。

スバルを演じる本島純政は、2023~2024年に放送された特撮ドラマ『仮面ライダーガッチャード』の主人公・一ノ瀬宝太郎を演じた若手俳優。
『仮面ライダーガッチャード』ではヒーローとして戦う優しい少年を演じた本島だが、『るなしい』のスバルは表面的な優しさの裏側にドロドロとした情念のようなものが見え隠れする複雑な少年という一筋縄ではいかなそうな役となっており、本島は見事に好演している。

undefined
(C)「るなしい」製作委員会

成瀬健章を演じる窪塚愛流は俳優・窪塚洋介の息子として知られる若手俳優で、近年は数々のドラマや映画に出演し、昨年はNHKの夜ドラ『あおぞらビール』で主演を務めた。
『るなしい』の健章は立っているだけで絵になる華やかなルックスがクラスの人気者というポジションにハマっているが、一方で時々見せる曇った表情がとても印象に残る明るいビジュアルの奥に闇が見え隠れする複雑な人物像となっている。

そして、主人公の郷田るなを演じる原菜乃華は、子役時代から活躍する女優で、昨年はNHK連続テレビ小説『あんぱん』での演技が注目された。
『るなしい』は連続ドラマ初主演作となるが、これまで清純派若手女優としてピュアな役を演じ続けてきた彼女が、こんな鬱屈とした内面を抱えた不穏な少女を演じるのかと、はじめは驚いた。
だが、昨年劇場公開されて話題となった原菜乃華が主演を務めたホラー映画『見える子ちゃん』の主人公も見事にハマっていたため、実は暗い作品と相性が良いのかもしれない。
子役時代から活躍する原の演技は常に完成度が高く、仕事に向ける一途な気持ちが女優としてのピュアな魅力となっていた。
置かれている立場こそ大きく異なるが、幼少期から「火神の子」として信者ビジネスに身を捧げてきたるなと、子役時代から活躍する女優の原菜乃華には、どこか重なるものがあり、だからこそ、るなの心情と同化した凄みのある芝居ができるのかもしれない。

揺れ動く思春期の不安定で鬱屈した心情を、原たち3人がどう演じるのか、楽しみである。


テレビ東京系 『るなしい』毎週木曜深夜24時30分〜

ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。