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「地域みんなで子どもを育てる」感覚は過去のもの? 社会から孤立していく母子が向かう先は…【著者インタビュー】

  • 2026.3.22

【漫画】本編を読む

「お母さんと2人でお父さんから逃げてきてん」。小学生の時、複雑な環境で育つ同級生・ナルミと仲良くなったカヨコ。しかしナルミは突然いなくなってしまう。大人になり、民生委員という地域を見守るボランティアとして活動するカヨコの前に、18歳の母親・アカネが現れる。アカネはナルミに瓜二つ。カヨコはアカネにナルミを重ね、民生委員の仕事範囲以上に彼女を助けようと奮闘する――。

自身も民生委員、そして子育て世代に特化した支援を行う主任児童委員として活動するきむらかずよさんが描く『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』(KADOKAWA)。無縁社会に落ちてしまった母と子どもを描いたセミフィクションエッセイだ。孤立した母親が育児困難に陥り、育児放棄・虐待などの事件を起こしてしまう場合もある。本作はそんなきっかけにもなり得てしまう、子育て中特有の孤独や不安に焦点を当てた一冊。本作について、民生委員として見つめてきた社会から孤立した子育てについて、著者であるきむらさんに話を伺った。

――主人公・カヨコが幼少期を過ごした街は地域で子育てしているというか、今よりも人間関係が濃密な雰囲気が描かれています。

きむらかずよさん(以下、きむら):これはまさに私が子どもの頃に住んでいた街をイメージしているんです。当時私が大人に言われたことなどを思い出しながら描きました。作中に銭湯でお母さんがお風呂に入っている間、番台のおばちゃんが赤ちゃんを預かるシーンがあるのですが、これはまさに私にとっての日常風景で。番台の近くに赤ちゃんが並んで寝ていて、ひとりが泣いたら番台のおばちゃんがあやして、もうひとりが泣いたら違うおばちゃんが現れてあやしてくれて。「お母さんはお風呂ゆっくり入っといで」というのを見て育ちました。私ら子どもにとっては周りの大人はすごく厳しかった思い出ですが、母はよく「子育てしやすい街やった」と言っています。

――一方であとがきにはご自身は子育てされる中で孤独を感じることもあったと書かれています。

きむら:私には子どもが3人いるのですが、病気だったり特性を持っていたりという事情もあって、孤独を感じることが多かったですね。私自身あまり器用なタイプではないので、お母さん同士の輪の中に入るのも苦労した方だと思います。

――本作は書籍の帯やネットサイトでの紹介記事に“無縁社会に落ちてしまった母と子ども”という言葉があります。無縁社会という言葉自体、孤独死や独居老人などと紐づけて語られるイメージがあったのですが。

担当編集:この言葉自体は早い段階でキーワードとしてきむら先生と私との間で出ていました。“無縁社会”という言葉は孤独死、高齢者に対して使う言葉でもありますが、今回“虐待をしてしまうお母さん”というテーマで関連書籍をいくつか読んでいく中で、シングルマザーや頼る人がいない縁のない地域に来た人が、時として社会のセーフティネットの狭間(はざま)に落ちてしまう。そういう時に無縁社会というキーワードが出ていまして。

本作は虐待であったり貧困で合ったり、いろいろな要素が作品に入っている分タイトル付けが難しくて。無縁社会という言葉を使うことで、社会から孤立している寂しさを読者の方に想起してもらえるのではないかという狙いもありました。

取材・文=原智香

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