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【一夜にして村人が消えた】インドの廃村クルダラ村とは?砂漠に残るミステリー遺跡

  • 2026.3.16

インド北西部、パキスタン国境にも近いラージャスターン州の砂漠地帯に、「一夜にして村人が消えた」と語り継がれる廃村があります。その名はクルダラ村(Kuldhara Village)。今では石造りの家が静かに並ぶだけの廃墟ですが、かつてここには多くの人々が暮らしていました。なぜこの村の人々は、突然消えてしまったのでしょうか……。実際に訪れてみると、その不思議な物語と静けさが、想像以上に印象的で、心に残る場所でした。

砂漠の町ジャイサルメールから出発

クルダラ村は、インド・ラージャスターン州の都市ジャイサルメールから車で約30分の場所にあります。

ジャイサルメールは、タール砂漠の中に現れる黄金色の町。夕方になると黄色い砂岩の建物が太陽の光を受けて金色に輝くことから、「黄金の町」とも呼ばれています。中世にはシルクロード交易の中継地となり、砂漠を行き交う商人たちが集まる交易都市として栄えました。町の中心にそびえる世界遺産・『ラージャスターンの丘陵城塞群』の一つであるジャイサルメール城には、現在も内部に人が暮らしています。迷路のような細い路地には土産物店やカフェが並び、インド国内外から訪れる観光客でにぎわう町です。

そんな活気あるジャイサルメールの街を離れ、車でしばらく走ると景色は一変します。建物も人影もほとんどない砂漠の風景の中に、突然現れる石造りの廃墟の集まり。それが「一夜にして住人が消えた」と語り継がれるクルダラ村です。

かつてここには、商人階級であるパリワル・ブラフミン(Paliwal Brahmin)と呼ばれる人々が暮らしていました。彼らは砂漠でも効率的に生活できる高度な水管理や農業技術を持ち、裕福なコミュニティを築いていたといわれています。

しかし19世紀初め頃、村人たちはある夜を境に突然姿を消し、村は一夜にしてもぬけの殻になったと伝えられています。一体なぜそんなことが起きたのでしょうか……!?

「一夜にして住人が消えた村」と呼ばれる理由

クルダラ村が消えた理由については、今もさまざまな伝説が語り継がれています。

最も有名なのは、かつてこの地域を支配していた権力者が村の女性に執着し、結婚を強要したという話。もし拒めば重税を課すと脅されたため、村人たちは暴君の要求に屈するよりも、村そのものを捨てるという決断を選んだといわれています。

伝承によれば、クルダラ村に住んでいた1000人以上の村の住民たちが、ある夜を境に一斉に姿を消し、家や家財道具などを残したまま去っていったそうです。さらに彼らは去る際、この村に二度と人が住めないように呪いを残したとも伝えられています。

こうした物語から、クルダラ村は謎に包まれたゴーストタウンとして知られるようになりました。夜になると女性の泣き声や子どもの笑い声、足音のような音が聞こえるといった体験談も伝えられています。インドの心霊研究団体が調査を行ったこともあり、研究者の中には「村には今も数十の霊が留まっている」と語る人もいるのだとか。

一方で、研究者の中には、こうした伝説とは異なる現実的な理由を指摘する人もいます。砂漠地帯では水資源が生活の生命線ですが、近くを流れていた川の水が枯れたことによる水不足や、重い税負担などが重なり、徐々に人々が別の土地へ移住していったという説です。さらに近年の研究では、建物の崩れ方から地震による被害が村の放棄に関係していた可能性も指摘されています。ただし歴史的な記録は少なく、本当の理由は、はっきりとは分かっていません。

実際に歩いてみたゴーストタウン

現在クルダラ村は、インド・ラージャスターン州の遺産として管理されており、ジャイサルメール観光の定番スポットの一つになっています。遺跡は整備されており、日中は自由に見学することができます。

実際に村を歩いてみると、まず目に入るのは砂漠の中に広がる石造りの廃墟。かつては400以上の建物が並んでいたとされ、今も家の外壁が整然と残っていますが、その多くは屋根が崩れ落ち、空に向かって開いた「屋根のない家」になっています。

崩れた梁や柱が地面に転がる様子は、長い年月の風化というより、何かの出来事によって突然時間が止まってしまったかのような印象を受けました。

村の中央には寺院のような建物が残り、柱や入り口には細かな彫刻が施されています。家々の壁には格子窓の跡や壁画も残り、この村に暮らしていた人々が比較的豊かなコミュニティだったのだろうか……と想像が膨らみます。

石の建物の間に入ると、強い日差しの中でもふっと空気がひんやりする場所があり、静けさがいっそう際立ちます。中には、料理に使われていたかまどや、水瓶を置いていたと思われる場所など生活の痕跡も残っていて、まるで「ついさっきまで誰かが暮らしていた」かのような不思議な感覚に。村の端には階段井戸の跡もあり、砂漠で暮らすために水がどれほど重要だったのかを感じることができます。

周囲5km以内にはホテルも村もなく、聞こえるのは砂漠を吹き抜ける風の音や、道を歩く牛や犬などの動物たちの鳴き声だけ。地元の人々が言う「呪われた村」を単なる迷信と笑い飛ばせないほど、なんとも言えない独特の静寂に包まれています。

現在はラージャスターン州の保護下にあるため、周囲は境界壁とゲートで囲まれており、日没とともにゲートは厳重に閉じられるのだそう。夜間は誰の侵入も許されない……そんなところも、この村に数々の逸話やミステリーが生まれる理由なのかもしれません。


※外務省 海外安全ホームページでは、「インド ラジャスタン州」は「レベル1十分注意」とされています(2026年3月16日時点)。渡航計画の際は、最新の渡航情報をご確認の上、ご検討ください。

©️Chiharu Kubota

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