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友人の熟年離婚をきっかけに考える二人の関係。熟年夫婦が直面する「わかっているつもり」の落とし穴【書評】

  • 2026.3.4

【漫画】本編を読む

『ずっと一緒にいられたら』(小菊えりか/KADOKAWA)は、「長く一緒にいること」の先にある、夫婦の静かなすれ違いと、そこから生まれる思いやりを描いた作品だ。

頑固で不器用、そして自分の気持ちを言葉にするのが苦手な誠一。対する光子は、優しく穏やかで、家族を大切に思う女性。長年連れ添ってきたからこそ、互いの性格や考え方を“わかっているつもり”になっている二人だが、その安心感が、気持ちを伝えなくなる理由にもなってしまっている。その結果、何気ない日常の中に、小さなすれ違いが生まれていく。

本作を読んで感じるのは、「わかり合っている」と思うことと、「伝え合っている」ことは、決して同じではないということだ。長年一緒にいるからこそ、言葉を省いてしまう。悪気はなくても、その積み重ねが、相手の心を少しずつ遠ざけてしまうのだと、静かに教えられる。

物語は、友人の熟年離婚をきっかけに、誠一が光子への態度を見つめ直そうとするところから動き出す。劇的な出来事が起こるわけではない。ただ、日常の中で「これまで」と「これから」を考え直す。その姿が、とても現実的で胸に残る。

この作品は、「結婚=ゴール」ではないことを優しく肯定してくれる。結婚してからこそ、新しい関係が始まり、いい関係を続けるためには、年齢を重ねても努力が必要なのだと。それは決して重たい教訓ではなく、むしろ温かく、ほほえましい気づきとして描かれている。

恋愛のドキドキや情熱も確かに魅力的だが、本作が描くのは、時間を重ねたからこそ生まれる夫婦の悩みと優しさだ。派手さはないが、静かに心を揺らし、「夫婦とはどんなあり方がいいのだろう」と考えさせてくれる。

長く誰かと生きていくことの尊さと難しさ、その両方をそっと抱きしめるような一冊。人生の後半に差し掛かった夫婦だけでなく、これから誰かと人生を共にしようとする人にも、静かに響く物語だ。

文=ネゴト / すずかん

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