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男性「救急車は大丈夫です」自動車との接触事故。立って会話もできているが…救急隊員が見逃さなかった“僅かな違和感”

  • 2026.4.7
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

自転車に乗っていた30代男性が自動車と接触した交通事故で、出動したことがありました。

一見落ち着いているように見えたものの、小さな訴えの中に見逃せないサインがあった事案です。

立って受け答えできていたが事故の強さは軽く見られなかった

その出動は、自転車と自動車の交通事故でした。

自転車に乗っていたのは30代男性です。救急隊が到着した時、男性は立った状態で、警察官の聴取にも受け答えができていました。

見た目には大きな混乱もなく、本人も「救急車は大丈夫です」と話していました。

ただ、自転車の損傷状況を見た時に、事故の衝撃を強く意識したのを覚えています。

そのため、現場では急いで事故の概要を確認しながら、本人の訴えもひとつずつ把握していきました。

その中で気になったのが、首の違和感でした。

さらに、手の指先が少ししびれるという訴えもありました。

どちらも強い痛みではありません。

でも、交通事故のあとの訴えとしては見過ごしにくいものでした。

事故の状況を聞くと見え方が変わった

現場で、目撃者や警察官から事故の状況も確認しました。

自動車は30〜40キロほどの速さで走っていて、横断中の自転車と接触したとのことでした。

自転車はそのはずみで飛ばされたと聞いています。

ヘルメットは着用していましたが、それでも事故の強さとしては軽く見てよい状況ではありませんでした。

本人が立っていること。会話ができていること。

その印象だけなら、少し安心しそうになります。

ただ、事故の状況に加えて、首の違和感と指先のしびれがある。

そう考えると、頚髄損傷の可能性も否定できませんでした。

見た目には落ち着いていても、中では別のことが起きているかもしれない。

そんな見方が必要な場面だったと思います。

動かさないことを優先し、適切な医療機関へ搬送した

そのため、その場では首から背中を動かさないように固定する対応を取りました。

本人は歩けていますし、会話もできます。それでも、この時に大事なのは、今どう見えているかだけではありません。

もし首の神経に傷が入っていれば、動かし方ひとつで状態が変わる可能性があります。

だからこそ、まずは悪化を防ぐことを優先しました。

固定をしたうえで、適切な医療機関へ搬送しました。

結果として、診断は頚髄損傷でした。

あの場で、歩けているから大丈夫そうだと考えていたら。

あるいは搬送していたとしても、しっかり固定せずに別の医療機関へ向かっていたら。

そう思うと、あの時の判断は間違っていなかったと感じます。

元気そうに見える時ほど小さな訴えを軽く見ない

交通事故の現場では、目の前の印象に引っぱられそうになることがあります。

立っている。話せている。本人も大丈夫だと言っている。

そうした要素がそろうと、ひとまず安心したくなるのも自然なことだと思います。

ただ実際には、その中に重いけがのサインが隠れていることがあります。

今回でいえば、首の違和感と指先のしびれは、小さいけれど見逃してはいけない訴えでした。

事故の衝撃と、本人の言葉。

その両方をあわせて見たからこそ、重症の可能性を考えることができたのだと思います。

元気そうに見える時ほど、小さな訴えを軽く見ない。

そんなことを改めて感じた現場でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。  


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