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「前は同じ金額で乗車できた!」“乗り越し精算”を拒む利用客…元駅員が語る、6月ごろにトラブルが集中するワケ

  • 2026.5.22
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に体験した「乗り越し精算時のトラブル」をご紹介します。6月ごろになると増加していた、あるトラブルのエピソードです。

鉄道運賃のルール

日本では、多くの鉄道会社が対キロ区間制運賃を採用しています。

これは乗車駅からの距離に応じて「5㎞までなら100円」「6㎞から10㎞までなら190円」というように運賃を定める方法です。多くの会社で長距離のきっぷになるほど割安になるよう設定されているのではないでしょうか。

対キロ区間制運賃では、まれに「1枚のきっぷを買うより、途中でわざと区切って2枚のきっぷにするほうが安くなる」区間が発生します。1㎞ごとに定額で運賃を上げるよう設定すれば解消できますが、あまりにも運賃のバリエーションが増え、係員や券売機が対応できなくなることから、現実的ではありません。

運賃計算にはこのほかにもさまざまなルールがあります。基本システムを理解している駅員ですら「複雑だな」と感じるほどなので、お客さまからしてみれば「何が何やら」となってしまうのも無理のないことなのかもしれません。

乗り越しのお客さま

私が入社して間もない6月のある日、自動改札機の扉が閉まる音がしたので確認すると、係員用モニターに乗り越しの表示が出ていました。乗車駅で正常に改札口を通れたものの、この駅まで有効なきっぷを持っていなかったようです。

乗り越しの場合は足りない運賃をいただくのですが、私が勤めていた会社では2通りの計算方法がありました。乗車駅からこの駅までの正規運賃から支払い済みの運賃を差し引いた差額をいただく方法と、きっぷに書いてある下車駅からこの駅までの正規運賃をいただく方法です。

どちらを適用できるかは、きっぷを見てみなければわかりません。お客さまに有人改札へ来るよう呼びかけますが、なかなか来てくれません。反対に「改札機がおかしいから見てくれ」とでも言わんばかりにこちらを手招いています。

きっぷを確認してみると…

らちが明かなかったのでほかのお客さまがほとんど改札を通過するのを待ってから、改札室を出てお客さまのきっぷを確認しました。きっぷのデザインを一目見て、それがこちらの会社にも乗り入れている他社の発売したきっぷということがわかりました。それも、株主優待割引つきです。

きっぷの区間は相手の会社のターミナル駅から、こちらとの境界駅まで。株主優待割引が使われているため、列車は乗り入れていても会社が異なるこちらの路線をあわせた1枚のきっぷでは売れないのです。

「境界駅からこの駅までのきっぷがありませんね。〇〇円お願いします」

運賃の差額などを考えるまでもなく、シンプルな解決ができたと、この瞬間は思いました。

「以前は乗車できた!」

「そんなはずはない! この駅は〇〇駅(境界駅)までと同じ値段で乗れるだろう!」

ところが、お客さまは支払いに応じません。「前は同じ金額で確かに乗車できた!」と言い、きっぷに書いてある下車駅名を見ても乗り越しを拒みます。

この駅は境界駅からあまり離れていません。そのため、相手の会社のターミナル駅から割引なしできっぷを買えば、確かに境界駅まででもこの駅まででも同じ運賃です。

「前に買ったときは株主優待割引を使わなかったのではありませんか? 境界駅から先は会社が違うので、別にきっぷが必要ですよ」

いろいろ説明はしたつもりですが、追加で運賃を支払わなくてはならないということ以外は何もご理解いただけなかったようです。

「わけがわからん」

納得されないまま改札を通ろうとするお客さまに、私はこう言いました。

「有人改札口にまわって通ってください」

複雑だからこそ確認して利用する必要

株主優待割引をめぐるトラブルは6月など、特定の時期に集中する印象がありました。優待券の期限が切れるタイミングです。

株主優待券は、発行する鉄道会社ごとに利用できる区間や条件が細かく設定されていることが多く、ご自身の認識と実際のルールに齟齬が生じてしまうケースが少なくありません。

利用する際は、該当の鉄道会社ならどこからどこまでの路線を所有しているのかを事前に確認する必要がありますね。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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