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日産リーフ歴8年の54歳男性「もう戻れない…」充電待ちも極寒も差し置いて…それでもEVを手放せないワケ

  • 2026.4.4
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

電気自動車と聞くと、充電の手間などから不便なイメージを抱く方もいるかもしれません。

先日、2018年から日産リーフに乗り続けている54歳の男性にお話を伺う機会がありました。彼はEV歴8年ということもあり、不便さも十分に知り尽くしているそうです。それでも、次もEVに乗りたいと語ってくれました。

そこには、一台のクルマが人の感性そのものを書き換えてしまったともいえる、興味深い体験がありました。今回は、そんなEVに惚れ込んだあるオーナーの話をご紹介します。

アクセルを踏んだ瞬間、価値観が揺れた

先日、EVオーナーの方からお話を伺っていた際、ある54歳の男性が語ってくれた体験談がとても印象に残りました。彼が日産リーフに出会ったのは2018年。実はそのきっかけは、当時耳にした、『ひと踏み惚れ』という日産e-POWERのキャッチコピーだったそうです。厳密には電気自動車ではなく、日産のハイブリッド車(e-POWER)に向けられた宣伝文句でしたが、モーター駆動ならではの走りに興味を惹かれた彼は、そのまま純粋な電気自動車であるリーフの試乗車があるディーラーへ赴いたとのことでした。

そのため、試乗する時点では、電気自動車そのものに対してそれほど強い期待を抱いていたわけではなかったと言います。ところが、半信半疑のままアクセルを踏み込んだ瞬間、その認識は大きく覆されたそうです。音も振動もなく、滑らかに加速していく感覚に、まず大きな驚きを覚えたと語ってくれました。

さらに深くペダルを踏み込むと、景色が吹き飛ぶような加速を見せ、バックミラーに映る後続車がみるみる離れていったそうです。その圧倒的な爽快感に、彼は車内で思わず笑ってしまったといいます。これが電気の力なのかと実感した彼は、この走りを味わってしまったら、もう内燃機関には戻れないかもしれないと直感したと振り返ってくれました。

トルクに不満はなかった。オデッセイからでも衝撃だったリーフの加速

このお話で特に興味深かったのは、彼が決してパワーのないクルマから乗り換えたわけではないという点です。リーフに乗る前、彼はホンダのオデッセイという排気量2,400ccのクルマに乗っていたそうです。出足の良さや力強さにも十分満足しており、現状のクルマに不満があって乗り換えを検討していたわけではありませんでした。

加えて、もともとエンジン特有の鼓動感や排気音にも魅力を感じていたと教えてくれました。つまり、エンジン車が嫌いになってEVを選んだわけではなかったのです。内燃機関の魅力をしっかり理解していたからこそ、ほとんど音や振動を感じないという、まったく別のベクトルから来る快適さに、これほどまで価値観を揺さぶられたのではないでしょうか。相反する二つの魅力に直面した当時の戸惑いと深い感動が、お話を伺っていた私にも、彼の言葉の端々からひしひしと伝わってきました。

通勤も旅行もこなす8年。静かさと瞬発力が日常を変えた

試乗時に彼を驚かせた圧倒的な加速力や、静かで振動の少ないというこれまでにない快適さは、実際に所有してからは、生活の質を高める実感へと変わっていったといいます。購入から8年間、リーフは通勤や日々の買い物はもちろん、休日の長距離旅行まで、あらゆる場面で活躍してきたそうです。そうして日々の生活を共にする中で、EVならではの特性がいかに心身の負担を減らし、移動そのものを心地よいものにしてくれたかを熱心に教えてくれました。

たとえば高速道路での合流時でも、アクセルを踏めば瞬時に意図した通りの加速が得られるため、運転中のストレスが大きく軽減されたとのことです。また、長距離を運転する際にも、エンジン音や振動がないことがじわじわと体に効いてきて、目的地に到着した時の疲労感が以前のクルマとはまったく違うと驚いたそうです。日々のささいな移動から休日の遠出まで、静かさと瞬発力がもたらす快適さは、いつしか彼の日常に欠かせないものになっていったと、笑顔で振り返ってくれました。

EV生活は理想だけじゃない。充電待ち、雪、冬の我慢大会

ここまでの話を聞くと、EV生活は良いことばかりのように思えるかもしれません。しかし彼は、現実の不便さについても包み隠さず語ってくれました。急速充電器の台数はまだ十分とはいえず、先客がいると、自分の充電時間だけでなく前の人の分まで待たなければならないことがあるそうです。

また、充電が終わってもクルマに戻ってこない利用者や、充電スペースにガソリン車が停まっているといった、インフラやマナー面でのもどかしさにも直面してきたといいます。さらに深刻なのが、寒冷地における冬の寒さ対策だそうです。冬場はヒーターが想像以上に電力を消費するため、バッテリーの減りが目に見えて早くなってしまいます。

そのため、電力を節約しようと、ステアリングヒーターとシートヒーターだけで寒さをしのぐことも少なくないようです。耳や足先が冷え切り、まるで冬の我慢大会のようだと話してくれましたが、毎シーズンこうした経験をするのは大変な苦労であることは間違いありません。

気づけば、あれほど好きだった音と振動が気になり始めた

そうした数々の不便さを経験してもなお、彼の内面ではある決定的な変化が起きていました。リーフの静かで滑らかな走りにすっかり慣れてしまったことで、以前はあれほど心地よいと感じていたエンジンの音やメカニカルな振動が、次第に単なるノイズとして気になるようになってしまったというのです。

その変化を象徴する出来事として、大切に乗っていた趣味の250cc単気筒バイクを手放したエピソードを教えてくれました。あえて振動を楽しむようなバイクであったにもかかわらず、いつの間にかその振動すら不快に感じるようになってしまい、より静かで振動の少ない別のバイクへ乗り換えてしまったそうです。一台のクルマとの出会いが、乗り物に求める快適さの基準そのものを根底から書き換えてしまったという事実に、私はとても驚かされました。

それでも次もEVを選びたい。選択肢の一つとしての魅力

充電の待ち時間や冬の厳しさといった多くの不満点を抱えながらも、彼は力強い言葉で、次もEVを選びたいと締めくくってくれました。彼がEVを愛する理由は、環境性能の高さや経済的なメリットといった理屈の部分ではないようです。ただ純粋に、圧倒的な静かさと滑らかな乗り味という、走りの魅力にすっかり惚れ込んでいるからだといいます。

世間ではEVに対してさまざまな意見が飛び交っています。しかし彼は、決してEVだけが優れていると主張したいわけではないそうです。ガソリン車やハイブリッド車と同じように、数あるパワートレインの一つの選択肢として、もっと肩の力を抜いてフラットに見てほしいと願っています。

不便さを補って余りあるほどの走る喜びを教えてくれたEVという存在を、これからも自分なりのペースで楽しみ続けていきたい。そんな彼の静かな思いが、私の心にも深く響きました。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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