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「お金の心配で産めない社会」を終わらせる──「産むだけで赤字」の現実にメス!出産費用“ゼロ円”構想のインパクト【厚生労働省インタビュー】

  • 2026.2.25

最近「男性の育休」という言葉を耳にする機会が増えてきました。実際に、パパが育児休業を取る家庭も増えているようです。
その一方で、「結局、家のことは私が中心」「夫が育休を取っても、仕事との両立はやっぱり大変」そんな実感を持っているママも多いのではないでしょうか。
厚生労働省が進める「共育(トモイク)」プロジェクトは、こうした“理想と現実のギャップ”に向き合う取り組みです。今、国が考えている仕事と子育ての両立のあり方について、立ち上げ間もない共育プロジェクトに携わる厚生労働省の上田真由美さんに話を聞きました。
 

育休は進んだ。でも、ママの大変さは変わっていなかった

ーー厚生労働省として、新たに「共育プロジェクト」を立ち上げた背景について教えてください。

上田真由美さん(以下、上田):厚生労働省では、これまで約15年にわたり、男性がより積極的に育児に関われる社会を目指して進められてきた「イクメンプロジェクト」を通じて、男性の育児参画を後押ししてきました。その結果、累次の育児・介護休業法の改正なども相まって、2024年度には男性の育児休業取得率は40.5%まで伸びています。

ですが、取り組みを進める中で新たな課題も見えてきました。それは「育児休業を取ること」だけでは、家庭の負担や働き方の問題は解決しないという点です。

パパもママも育児に関わりたいという意識は高まっているものの、実際には家事・育児の分担に偏りがあったり、仕事との両立に悩んだりするケースも少なくありません。

そこで、男性の育児休業取得・育児参画の促進にとどまらず、家事・育児の分担や働き方の見直しにも一体として取り組んでいこうという考え方から立ち上げたのが、「共育プロジェクト」です。
ーー育休の取得率は伸びてきたとのことですが、制度だけでは解決しきれない部分も見えてきたのですね。共働きや家事・育児の分担は以前から話題になっていましたが、あらためて「今、このタイミング」で立ち上げた理由は何なのでしょうか?

上田:今、社会の前提が大きく変わってきています。女性の就業者数は増え、「子どもがいても働きたい」と考える人も多くなりました。また若い世代を対象にした意識調査でも、男女ともに「育児休業を取得したい」と答える人が多くなっています。

しかしその一方で、「パパの育休が終わったら、パパが担っていた家事・育児がママに戻ってしまった」「パパが育休を取っている最中でも、家事・育児などは結局ママが中心で負担が軽くならない」など、社会の実態や働き方が追いついていないのが現状です。

父親として育児に関わりたいという思いはあっても、家事・育児の分担や仕事との調整がうまくいかず、実際の生活ではしっかり関われないという現実があるのです。

こうした「やりたいと思っていること」と「実際にできていること」のギャップを埋めていくことが、今、求められています。そして、誰もが希望する働き方・暮らし方を選択できる社会の実現が行政の役割だと考え、このタイミングで共育プロジェクトを立ち上げました。

共育を「家庭だけの問題」にしないために、行政が担う役割

ーー「やりたいと思っていること」と「実際にできていること」のギャップを埋め、パパママともに、継続的な「仕事と家事・育児の両立」を実現するために、行政にとって最も大切な役割は何だと考えていますか?

上田:それぞれのご家庭で状況の違いはあると思いますが、日本全体でみると今も妻の家事・育児などの時間は夫の3倍以上となっており、働くママが増えているのに、職場や家庭の実態が追いついていないのが現状です。その背景には、固定的な性別役割意識があると考えられます。

共育プロジェクトでは、こうした課題を「それぞれの家庭の頑張り」だけで終わらせないことを大切にしています。「夫婦で話し合うきっかけになる資料」「家事や育児をどう分担するか、考えやすいツール」などといった、話し合いのきっかけになるコンテンツを用意し、企業での「両親学級」などで活用してもらうことで、家事・育児のあり方を家庭だけの問題にせず、職場とともにサポートする——それこそが、行政の果たすべき役割だと考えているのです。

そして企業でも、夫婦で家事・育児の分担を考えるセミナーの実施など、前向きな取り組みが始まっています。

もちろん、職場には育児中の方だけでなく、家族の介護や本人の体調、学び直しなどさまざまな事情を抱えて働く方がいます。誰でも、一時的に職場を離れる可能性があるからこそ、お互いの状況を理解し、支え合える環境づくりが必要です。

行政は、こうした家庭や職場それぞれの動きをつなぎ、社会全体に広げていく役割を担っています。


ーーここまで、行政の役割について伺いました。こうした考えのもと、社会全体で子育てを支えるために、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

上田:男性が育休を取り、育児に深く関われるかどうかは、本人の意識だけでなく、職場環境や上司の理解にも大きく左右されます。そこで、若い世代が「共育て」についてどのような希望を持ち、職場に何を求めているのか、実態調査を実施しました。得られたデータは広く公表し、施策の必要性を社会全体に周知するために活用しています。

また、主に企業に向けた施策として、シンポジウムも開催しています。これは、先進的な企業の取り組みを紹介いただいたり、共育の考え方を社会や企業に広げている実践者・有識者からなる共育プロジェクトの推進委員の方々とパネルディスカッションをしたりすることで、企業が自社での取り組みを考えるためのヒントとなる場です。

また推進委員の方々にご尽力いただき作成を進めている企業版両親学級のコンテンツ、研修資料なども、企業が現場で活用できる形でまとめ、2025年度中に共育プロジェクトの公式サイトで公表する予定です。こうした情報提供を通じて、企業での共育の取り組みを後押ししていきたいと考えています。

若い世代やひとり親も含めた「共育」で支える両立支援のかたち

ーー企業への働きかけなど具体的な取り組みが進んでいますが、私たちを取り巻く価値観や社会の変化もとても早いですよね。そうした中で、「共育プロジェクト」はどのように見直しやアップデートをおこなっているのでしょうか?

上田:最近は、数年違うだけでも、社会や人々の感覚が大きく変わりうる時代だと感じています。だからこそ、行政の中だけで考えるのではなく、推進委員の方々など行政以外の立場の方々のご意見も取り入れながら、世の中の変化に合わせて見直しをおこなっています。

一度作成したコンテンツも、数年ごとに振り返り、必要に応じたアップデートが重要です。


ーーこうした取り組みは、これから親になる若い世代にとっても身近なテーマだと思います。若い世代の子育て意識には、どんな変化が見られますか?

上田:男女ともに「育児休業を取りたい」と考える方が増えていることからもわかるように、子育てを前向きに捉える意識は広がっています。

一方で、「共育てをしたいが、実現するには社会や職場の支援が必要」「仕事と育児の両立に不安がある」といった声も多く聞かれます。気持ちは前向きでも、先が見えず、出産や子育てに踏み出すことに不安を感じる場合もあるのではないでしょうか。

共育プロジェクトでは、こうした不安を払拭し、安心して共育てができるよう、具体的な選択肢や考えるヒントを届けていきたいと考えています。子育てを「大変そうなもの」ではなく、「支え合いながら進めるもの」としてイメージできる環境を整えることも、行政の役割だと考えているのです。

ーー若い世代への支援について伺いましたが、子育ての形は家庭ごとに本当にさまざまですよね。「ひとりで子育てをしている」「頼れる人が身近にいない」そんなひとり親家庭では、「共育」はどのように考えればよいのでしょうか?

上田:ひとりで子育てを担う場合には、体力的にも精神的にも大変な場面がより生じうるものだと思います。だからこそ、「家庭の外の力を借りること」「ひとりで頑張り過ぎないこと」を大切にしていただけたらと考えています。

共育は、必ずしも家庭内に大人がふたりいることだけを前提とした考え方ではありません。ファミリー・サポート・センターや家事支援サービス、保育園の延長保育、地域などでの支援を組み合わせて、“外の手”も使って子育てをしていくことも、共育のひとつの形です。

共育ては家庭だけで完結するものではなく、地域や社会みんなで支えていくもの。それぞれの家庭が「頼っていい」「支えを使っていい」と感じられる環境を広げていくことも大切だと考えています。

◇◇◇◇◇◇◇◇

男性の育休取得率はたしかに伸び、制度としての「育休」は社会に定着しつつあります。しかし制度が整ったからといって、日々の暮らしや家庭の負担が自動的に変わるわけではありません。

「共育プロジェクト」が目指しているのは、育休を取るかどうかだけではなく、家事・育児・仕事をどう分かち合い、どう支え合っていくのかを、家庭だけに任せず社会全体で考えていくこと。そのための話し合うきっかけや選択肢を、行政が示そうとしている点が印象的でした。

子育ての形は、共働き、ひとり親、支援を頼れる環境の有無など、家庭ごとにさまざまです。だからこそ、「こうあるべき」と決めつけるのではなく、それぞれの状況に合った支え方を見つけていくことが大切なのかもしれません。

育児をするのは家庭ですが、支える責任は社会にもあります。「共育」という考え方は、子育てに向き合う私たち一人ひとりが、無理を抱え込みすぎないためのヒントを与えてくれるように感じました。

ベビーカレンダー編集部

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