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完璧じゃなくていい。プラダの2026-27年秋冬メンズコレクションが示す“使い古された”ファッション

  • 2026.2.13
プラダ 2026-27年秋冬メンズコレクションより。
プラダ 2026-27年秋冬メンズコレクションより。

1月にミラノで開催されたプラダ(PRADA)2026-27年秋冬メンズコレクションでは、“汚れた”シャツランウェイに登場した。もちろん、これはアクシデントではない。デザイナーのミウッチャ・プラダラフ・シモンズは、あえて汚れて見える加工を施したドレスシャツを打ち出したのだ。袖口や襟もとに飛び散った汚れや斑点は、どこか芸術的に映った。

なぜ、これほど由緒あるメゾンが、あえて服を使い古したように見せたいのか。公式のショーノートにはこう記されている。「伝統がたどってきた系譜を土台に、見慣れた要素を問い直しています」

まず、ランウェイに登場するアイテムが完璧な状態でないこと自体が、確かに常識から逸脱している。さらに、クタクタのシャツにも明確な役割があった。シャープなテーラリングや端正なコートと組み合わせることで、全体にほんの少しのリアリティと生活感を与え、率直に言えば、より“現実的”に感じさせていた。

プラダ 2026-27年秋冬メンズコレクションより。
Photo: Armando Grillo / Gorunway.comプラダ 2026-27年秋冬メンズコレクションより。
プラダ 2026-27年秋冬メンズコレクションより。
Photo: Armando Grillo / Gorunway.comプラダ 2026-27年秋冬メンズコレクションより。

戦略的に“汚れた”服をつくることは、美的観点から見れば好みが分かれる選択ではある。だが、今という時代には確かにしっくりとくる。環境的にも、経済的にも、そして政治的にも、世界が多くの側面で困難に直面している。そんな状況下で、あまりにも完璧すぎるファッションは、時代の空気とずれて見えるリスクがあるだろう。デザイナーは、私たちが生きる世界を映し出す服をつくらなければならない。そして2026年の状況は……理想からは程遠い。

もちろん、ファッションデザイナーが“汚れ”を取り入れるのは、これが初めてではない。ファッションは長年にわたり、クローゼットの定番アイテム──たとえば真っ白なスニーカーやクルーネックのニットセーター──を、意図的に“台無しにする”ことに強い関心を寄せてきた。それはハイファッションの世界を脱神秘化する、実に目を引く手法でもある。

コーチ 2025年春夏コレクションより。
photo: Armando Grillo / Gorunway.comコーチ 2025年春夏コレクションより。
グッチ 2018年リゾートコレクションより。
96037505グッチ 2018年リゾートコレクションより。

たとえば2018年リゾートコレクションで、グッチ(GUCCI)は、埃っぽい道でトレイルランニングでもしてきたかのようなスニーカーを披露し、大きな話題を呼んだ。ラグジュアリーな白いシューズ全体に、汚れを思わせるグレーのエフェクトが施されていたのだ。ゴールデン グース(GOLDEN GOOSE)のようなブランドは、以前から同様のスタイルを展開しており、“ダメージ加工もシックになり得る”という考えを体現し続けている。

こうした手法は、ラグジュアリーバッグにも及んでいる。2014年春夏カール・ラガーフェルド時代のシャネル(CHANEL)は、汚れ加工やグラフィティを施したトートやバックパックのコレクションを発表した(現在では、15,000ドル以上で取引されるものもある)。さらに近年では、2022-23年秋冬にデムナによるバレンシアガ(BALENCIAGA)が、ゴミ袋のように見えるレザーバッグを披露。彼はまた、くしゃくしゃに潰したポテトチップスの袋の形をしたレザーのクラッチバッグも発表している。

シャネル 2014年春夏コレクションより。
シャネル 2014年春夏コレクションより。
バレンシアガ 2022-23年秋冬コレクションより。
バレンシアガ 2022-23年秋冬コレクションより。

ボロボロに破れたジーンズや、傷んだニットも、ランウェイでは幾度となく登場してきた。1998年春夏ヘルムート ラング(HELMUT LANG)は、ペンキが飛び散ったジーンズを発表し、そのスタイルはいまなお繰り返し再解釈されている(たとえば、ラフ・シモンズがアーティストのスターリング・ルビーと組んだ2014-15年秋冬のアシッドウォッシュデニムなど)。また2016年秋冬には、リック オウエンス(RICK OWENS)が、首もとから絵の具が垂れ落ちているかのようなモチーフのニットを披露した──まるで、誰かがペンキ缶を丸ごとぶちまけたかのように。

ヘルムート ラング 1998年春夏コレクションより。
ヘルムート ラング 1998年春夏コレクションより。
ラフ・シモンズ 2014-15年秋冬メンズコレクションより。
ラフ・シモンズ 2014-15年秋冬メンズコレクションより。

アイテムの尊さをあえて削ぎ落とし、少しだけ身近に感じさせるこの手法が、ランウェイで繰り返し用いられてきたことは疑いようがない。ただし、こうしたピースの経済的価値までもが“台無し”になっているわけではない──むしろ、使い古したように見せるために、多大な時間と労力が費やされている分、通常より高価になることさえある。そこで浮かぶ疑問は、果たして人々は本当にこれらを着るのだろうか。それとも、これは単なるランウェイでの演出に過ぎないのか。

ジバンシィ 2022-23年秋冬コレクションより。
ジバンシィ 2022-23年秋冬コレクションより。

現在、インターネット上では今季のプラダのコレクションをめぐる議論が巻き起こっている。このトレンドをどう捉えるにせよ、ここから得られる教訓は、あえて汚れた服に大金を払うことではないのかもしれない。むしろ、私たちがすでに持っているお気に入りの服に対して、もう少し肩の力を抜くことだ。服は着るためにあり、使い込まれてこそ意味がある。2000年代、メアリー・ケイト・オルセンがワインのシミがついたバレンシアガの「ル・シティ」を持ち歩いていたことを覚えているだろうか。あるいは、ジェーン・バーキンが、ラグジュアリーな「バーキン」に物をぎっしり詰め込んでいた姿を。

2026年には、もっとそのエネルギーを解放したい。すでにクローゼットにあるものを愛し、ふさわしい“物語”を与えてあげよう。人生が完璧でないように、服もまた完璧である必要はないのだから。

リック オウエンス 2016-17年秋冬メンズコレクションより。
リック オウエンス 2016-17年秋冬メンズコレクションより。
アクネ ストゥディオズ 2025年春夏メンズコレクションより。
アクネ ストゥディオズ 2025年春夏メンズコレクションより。
ディーゼル 2025-26年秋冬コレクションより。
ディーゼル 2025-26年秋冬コレクションより。

Text: Christian Allaire Adaptation: Kie Uchino

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