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プラダは15人のモデルが4度装いを着脱して登場── レイヤリングで描いた、女性の多面性と歴史の奥行き【2026-27年秋冬 ミラノ速報】

  • 2026.3.2

プラダ(PRADA)のショーでは毎シーズン、60人前後のモデルを起用し、1人1ルックで約60ルックを見せる構成が通例。他ブランドでは、1人のモデルが着替えて2〜3回ランウェイに登場することも珍しくないが、今季のプラダは異なるアプローチを取った。わずか15人のモデルが4度登場し、現れるたびに装いを少しずつ削ぎ落としていくことで、一人の女性の変容を全60ルックで描き出した。

ラフ・シモンズは「15人のモデルを繰り返し目にすることで、彼女たち一人ひとりのキャラクターや、服によって変化し続ける多面的な側面を知ることができると」と、その意図を明かしている。

コートから下着姿へ変わる、ジュリア・ノビス

ファーストルックを飾ったのは、プラダのキャンペーンやランウェイでもおなじみのモデル、ジュリア・ノビス。最初は、グレーのチェスターコートにカラフルなナローマフラーを合わせた姿で登場し、2回目ではコートを外し、ナローマフラー、ニットカーディガン、ナイロンドレスによるスタイルに。3回目はカーディガンも脱ぎ、ナローマフラーとナイロンドレスのみへと簡素化され、4回目には、下のレイヤーに隠れていたシワ感のあるシアードレスの下からブラトップとハーフパンツが透け、グリーンのバッグを合わせた姿で現れた。ビーズ刺繍を施したピンクのポインテッドトーのパンプスと、花モチーフをあしらったソックスは、全ルックに共通していた。

“好きなものを好きなように”。日常の自由な重ね着

組み合わされているのは、テーラリングにスポーツウェア、刺繍を施したサテンドレスなど、ジャケットやシャツといった伝統的な装いの枠にとらわれない自由なレイヤリングだ。“好きなものを選び、好きなように重ねる”という思いが感じられる。

私たちの装いは、肌寒い朝や夜にはアウターを羽織り、暖かい日中は脱いで過ごし、帰宅すれば軽装になるなど、1日の中でも自然と変化していく。季節ごとにクローゼットの服を着まわしながらスタイリングを楽しむのも、ごく日常的な行為だ。そうした装いのリアリティに根ざした今季の演出は、多くの共感を呼んだ。

ダメージ加工で表現された、定番アイテムの経年の美

“プラダの内側”を意味する「INSIDE PRADA」と題された今シーズンは、ブランドの定番アイテムやアーカイブを再構築している点も大きな特徴だ。

プラダらしさといえば、ナイロン素材のバッグやウェア、ユニフォームを思わせるテーラリング、上質なニットやシャツ、クリーンなシルエットのドレスなど。今季はそうした象徴的な要素の一部に、経年を感じさせるディテールが重ねられた。シャツの袖にシミのような痕跡が残されたり、裾が意図的にほつれていたり、ジャケットやドレスの表面が破れて下に重ねた生地が覗くようなあしらいが施されたものも見られた。これまでもシワ加工やダメージ加工を取り入れてきたプラダだが、今季その姿勢はいっそう鮮明で、時の経過そのものを服に刻むデザインの手法として昇華されていた。

同じ空間に共存する、時代も文化も異なる美術品

会場の壁には、無数の扉や窓とともに、時代背景や文化も異なる美術品が配置されていた。16〜17世紀のタペストリーや絵画、18世紀のヴェネチアンミラー、1900年代の椅子やランプなど、5世紀にわたる作品が一堂に会したその空間は、服と同様に、それぞれが内包する意味を層のように折り重ねていた。登場したドレスにも銅像や陶器、レースといった異なる要素がプリントとしてコラージュされており、この空間構成ともリンクしていた。

歴史を踏まえて更新されるクリエーション

不確かな時代において、このコレクションはひとつの比喩として立ち上がる。ミウッチャは「私は歴史が好き。でも、それは過去を模倣するためではなく、今の自分たちの立ち位置を理解するためです」と語っていた。複雑さを増す現代において、過去の層を丁寧に紐解きながら、今という瞬間に向き合う。それこそがプラダの一貫した姿勢であり、今季のコレクションからも強く感じ取れた。

膨大なアーカイブと、長年にわたるショーの歴史を背負いながらも、なお新しい表現を提示できること。その事実こそが、ブランドの創造性の深さを雄弁に物語っている。私たちの日常や装いのリアリティに根ざしながら、決して同じ場所にとどまらない。レイヤリングという手法を通して示されたのは、過去と現在、記憶と創造を往復し続けることで拓かれる、ファッションの持つ可能性そのものだった。

Photos: Courtesy of PRADA Text: Mami Osugi

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