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「お父ちゃん、死んだよ」から始まった苦難の人生。親に捨てられた少女が「今が一番幸せ」と言えるまで【作者と祖母に聞いた】

  • 2026.2.12
祖母のキヨさん。穏やかな現在の生活からは想像できないほど壮絶な幼少期を送っていた。
祖母のキヨさん。穏やかな現在の生活からは想像できないほど壮絶な幼少期を送っていた。

ライブドアブログ「ゆっぺのゆる漫画ブログ」やInstagram(@yuppe2)でエッセイ漫画を発表している漫画家・ゆっぺさん。2021年12月から描き続けてきた「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」は、完結後の2024年2月に電子書籍化され、「人生で一番大切なことが書いてある」「ほかの人にも読んでほしい」といった声が相次いだ作品である。本作は、現在92歳になる祖母・キヨさんの実体験をもとに描かれたもので、過酷な時代を生き抜いたひとりの女性の人生が、静かな説得力をもって胸に迫る。

父の死をきっかけに、壮絶な幼少期が始まった

まるでひとごとのように「父の死」を伝えてきた母
まるでひとごとのように「父の死」を伝えてきた母
「今が一番幸せ」と語るキヨさん
「今が一番幸せ」と語るキヨさん
現在は手まり作りが楽しいというキヨさん
現在は手まり作りが楽しいというキヨさん

物語は、幼いころは貧しいながらも家族と幸せに暮らしていたキヨさんの人生が、父の死をきっかけに一変するところから始まる。何も知らされないまま叔父の家に連れて行かれ、そこで突きつけられた現実。少女だったキヨさんは、その日を境に、自分の居場所を失っていく。理不尽さと孤独を抱えながらも生き抜いてきた彼女の人生は、決して美談として描かれるものではない。しかし、だからこそ現在の言葉が、強く心に残る。

「人には言えなかった人生」を話したとき、胸がすーっとした

漫画化について最初に聞いたときのことを、キヨさんは「まさか、孫が漫画にしてくれるとは思ってもみなかったので驚いた」と振り返る。これまで誰にも言えず、自分の子どもにさえ話さなかった過去を、孫であるゆっぺさんに語ったとき、「胸がすーっとした」と感じたという。

「恥ずかしくて言えなかった人生だった。でも聞いてもらえたことで、これまでの(つらかった)ことを考えなくなった」と語る言葉は、長い年月を経たからこその重みを帯びている。

作品が多くの人に読まれていることについても、「とてもうれしいです」と率直な気持ちを口にするキヨさん。なかでも「孫が“かわいいおばあ”に描いてくれたのもうれしい」と笑顔を見せた。

「今が一番幸せ」だと言い切れる理由

これまでの人生で一番幸せだったときを尋ねると、キヨさんは少し考えたあと、はっきりと「今が一番幸せです!」と答えた。子どもが成長し、夫と旅行に出かけた日々もあったが、「それはそんなにうれしくなかった」と率直に語る。

現在の楽しみは、本を見ながらの手まり作りだという。「今日も午前中は雨だったので、手まりを作っていました」と、穏やかな日常を語るその表情は、作品のラストと重なって見える。

孫として、そして描き手として残したかったものとは?

ゆっぺさんが祖母の人生を漫画にしようと思った理由は、「私ひとりで聞いて終わらせるにはもったいないと思ったから」だったという。戦争を経験した世代の人が減り、当時の話を直接語れる人が少なくなっている今、「私が残して、誰かがそれを読んで何か感じてもらえるなら、描く意味があると思った」と語る。

キヨさんの過去を初めて詳しく聞いたのは、コロナ禍のある日のことだった。家族でお茶をしているとき、母に向かってぽつりと語られた昔話。それまで知らなかった内容に驚き、「もう少し詳しく聞かせてほしい」と伝えると、「ものすごい量の話が出てきて(笑)」、描く覚悟が決まったという。

作品を通して最も伝えたかったのは、戦争の時代の記憶と、つらい経験があったとしても「気持ちをどう持っていくかで結果は変わってくる」という点だ。「つらい生い立ちが背景にあり、人や自分を殺めてしまうケースもある。でも、おばあちゃんはそうならず、『今が一番幸せ』と言っている。なぜなのか。その人生を描くことで、読んでくださる人に何かヒントになるのではないかと思いました」と、ゆっぺさんは語る。

過酷な人生をどう生き抜き、どこに気持ちを置いてきたのか。92歳のキヨさんの言葉と、その人生を丁寧にすくい取った本作は、今を生きる私たちに静かに問いを投げかけている。

取材協力:ゆっぺさん、キヨさん

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