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【ばけばけ】自分に呪いを移し替えた、トキ(髙石あかり)の仰天行動。オカルト好き少女の一面を発揮?

  • 2026.3.2

【ばけばけ】自分に呪いを移し替えた、トキ(髙石あかり)の仰天行動。オカルト好き少女の一面を発揮?

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節子をモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

「うらめしい」要素がてんこもりに

ついにきた! といっていいのだろうか。

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、今さら言うまでもないが日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・小泉セツをヒロインとする物語だ。当初より「何も起こらない」物語を描いていくことが掲げられており、主な登場人物たちの個性豊かなキャラクター性によって、何も起こらないとはいいながらもそれぞれの人生が重なり合わされていくことで約5ヶ月のストーリが紡ぎ出されてきた。

とはいえ、主人公となるのはラフカディオ・ハーン夫妻である。『日本滞在記』への取り組みは折に触れ描かれてきたし、ハーンをモデルとしたヘブン(トミー・バストウ)とヒロインのトキ(髙石あかり)が夫婦として成長していくさまは丁寧に描かれてきたが、『怪談』の世界の気配は一向に訪れないままであった。

第1話冒頭のシーンで、トキが語る怪談に食いつくヘブンのシーンは今なお鮮烈な印象を残すが、トキが幼いころから母のフミ(池脇千鶴)に怪談を寝物語として聞かされ、何かつらいことがあると怪談の世界に飛び込むといった序盤の描写以外、ある意味キャラクターが一人走りしたのか怪談要素はほぼ描かれないといっていい状態だった。

たとえば2007年度後期放送の落語の世界を舞台にした朝ドラ『ちりとてちん』では、古典落語の演目を、主要なキャストがその噺の登場人物に扮装して届けてくれる演出があったが、『ばけばけ』にもこういった怪談の世界を折にふれ届けてくれるのかと思いきや、そういうものではなかった。

前述の通り、登場人物たちのキャラクター性で怪談要素が薄くてもさして気になるものではなかったが、さすがにいつ怪談に? となりかけたところでの今週放送された第21週「カク、ノ、ヒト。」では、いきなり怪談的雰囲気、「うらめしい」要素がてんこもりになって届けられた。

文部省(当時)の予算削減の影響か、ヘブンが熊本で勤める第五高等中学校が無くなる可能性があることが浮上した。ヘブンは家族に心配をかけないように丈(杉田雷麟)と正木(日高由起刀)に口止めをしたものの、あっさりトキたちにそれは知られてしまう。

第五高等中学校が無くなったとしたら、ヘブンはどうするかといえば、執筆活動をして稼いでいくという。実際にこのタイミングでもらった原稿料が80円(120ドル!)という高額で、まさに「カク、ノ、ヒト。」を目指すわけであるが、学校での仕事が忙しくなかなか腰を据えて何かを書くという時間は設けられずヘブンの苛立ちはつのる。

そんなヘブンの力になろうとトキは、松江時代の錦織(吉沢亮)のごとくヘブンの執筆活動のためのネタ探しに奔走するのだが、そこに現れたのが「うらめしい」女・イセ(芋生悠)である。イセは何かにつけ「呪われた」女である。見るからに〝陰〟の雰囲気をまとうキャラクターで、イセの口から語られるエピソードが、両親を立て続けに亡くし、自らは病と借金に苦しむなどことごとく呪われてる感が漂うのは、ややカリカチュアしすぎのような気もしないではないが、放送前に抱いた「怪談」的雰囲気をまとった登場人物が、ややわかりやすい力技のように怪談パートがついにやってきたと! いったところもある。

自分にその呪いを移し替えた仰天行動!

さて、そんなイセは、トキにヘブンの執筆のために、「言い伝え」を語ってほしいと頼まれ、丈と正木が連れてきてイセは呪われた女だから近づくなと忠告した男・村上(緒方晋)と交互に「言い伝え」を語り始める。それらはヘブンに「シッテル!」と一蹴されたり、それ以上の深掘りができずヘブンの期待にこたえるものではなかったが、イセ本人が呪われている話をしてほしいとトキにお願いされ重い口を開いて語り始めたのが、「人形の墓」である。

両親を続けて亡くしたイセだが、村には1年以内に家族の2人が亡くなった家は、すぐに3人目が亡くなり、4人目は呪われるという言い伝えがあるという。そのために藁人形を作って墓に埋め身代わりにするというのだが、それをしなかったため兄が死に、自分は病と借金を背負うという「呪い」を受けているという。

あまりに重いリアルな話に座は静まり返ってしまい、イセは申し訳なさそうに立ち上がり去ろうとする。そのときトキが何をしたかといえば、イセがそれまで座っていた座布団に移り、これで自分にその呪いを移し替えたという仰天行動であった。

「おイセさん、不幸は私に乗り移ったけん、これからはきっとええことある」
この重い呪いを軽くあしらうトキ、これは幼いころからフミの語る怪談に目を輝かせていたオカルト好き少女のようなものが発揮されたといっていいのかもしれない。

思えばトキも、父の司之介(岡部たかし)がつくった大借金によって小学校すらまともに通うこともできなくなる転落人生を送ってきたものの、松野家全体が醸し出す明るい空気によってそれを乗り越えてきた。好奇心豊かなトキはある意味〝陽キャ〟的存在なのかもしれない。そういう意味では圧倒的〝陰キャ〟のイセとは真逆の存在だ。

ともすれば〝陽キャ〟的感覚は、それが優しさであったとしてもかえって傷を逆撫ですることだってあるかもしれない。しかし、それが楽にしてくれることだってある。トキとイセの場合はそっちのパターンのようだ。トキの突拍子もない(?)行動によってイセは初めて笑い、呪われた女は解放された。

「アナタ、コトバ、アナタノカンガエ、ワタシ、ヒツヨウ。モットモットネガイマス」
この経験を経て、ヘブンはあらためトキにそう言った。トキはヘブンの執筆家という部分においてもかげがえのないパートナーである。それをあらためて認識したことで、二人三脚となるこれからの執筆活動に期待が高まる。

はたしてこの先、ヘブンとトキは「言い伝え」をどう形にしていくのか。ラスト1ヶ月の展開に期待がふくらむ。

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