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明治時代、新潟を訪れた英国少女が和食を全否定! そんな彼女と地元の青年料理人との出会いから始まる、温かくて美味しい異文化交流物語【書評】

  • 2026.2.23

【漫画】本編を読む

『りゅうとあまがみ』(角丸柴朗/KADOKAWA)は、明治時代の新潟を舞台に、「食」を通じて異国文化との交差を描いた物語で、第1巻の発売直後から話題となり重版が決定した作品だ。

父親の仕事の都合で英国から日本の新潟にやってきた少女・ウィルは、魚の生臭さにどうしても馴染めず、毎日の食事が苦痛になっていた。異国の地で暮らす不安や苛立ちが募るなか、彼女はひょんなことから、無愛想でちょっと怖いが腕は確かな料理人・流作と出会う。偏見だけで「魚はまずい」と言うウィルに我慢できず、流作は「イワシの酢煎り」という一皿を彼女に振る舞うことに。決して豪華ではないが手の込んだ料理に感動したウィルは、魚に対する固定観念を覆される。ここから彼女の「知らないものを知っていく旅」が始まっていく。

本作の大きな見どころは、「食べること」が文化理解の入り口として描かれている点だ。地元の食材、旬の味、土地の人とのふれあい。そのすべてが、ただの異文化紹介で終わらずにウィルの心の変化と成長にしっかりとつながっている。しかも、それを説教くさくなく、あくまで自然な会話や食卓の場面を通して伝えているのが印象的だ。特に温かさや香りまで伝わってきそうな料理が出てくるシーンは見ているだけでお腹が空いてくる。

また、時代背景の描き方にも注目したい。明治という日本が急速に近代化していく時代。港町・新潟には異人が訪れるようになり、街の空気や人々の意識も変わりつつある。その変化を、流作のような地元の若者がどう受け止めているのか。異人に対する警戒心や偏見がある一方で、実際に接してみることで芽生える感情もあり、登場人物たちの揺れ動く内面が繊細に表現されているのだ。

異なる文化や価値観を持つふたりが、ぶつかり合いながら料理を通じて少しずつ心を通わせていく姿が、多様で複雑化した現代社会を生きる私たちに「違いを理解し合うこと」の大切さと尊さをあらためて教えてくれる。

文=坪谷佳保

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