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【中村アン】「仕事は憂鬱なくらいがちょうどいい」自分を成長させるストイックな“覚悟”の背景

  • 2026.2.12

「自立した女性」というパブリックイメージを象徴するような、爽やかな笑顔。

俳優として活躍する中村アンさんに、順風満帆なキャリアを歩んできた印象を抱く人も多いだろう。

だが、タレントとして人気を博していた20代後半で、未経験だった俳優の道へ進んだ当初は、俳優としての知名度の低さから苦労も少なくなかった。

当時の現場を振り返り、「最初は行く先々で『お前、誰だよ』というアウェーな雰囲気でした」と、彼女は明るく笑う。

順調に進むキャリアの途中で、あえて未知の世界へ踏み出す。その挑戦を支えたものは、いったい何だったのか。

2月20日(金)公開の最新出演作『災 劇場版』で、強い執着心を抱く刑事・堂本役に挑んだ中村さんに、キャリアの挑戦を「覚悟」に変えてきた、その思考のヒントを聞いた。

中村アンさん

1987年東京都出身。多くの女性ファッション誌の表紙を飾り、2015年のドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』で本格的に俳優業に進出。以降話題作に出演し続け22年『DCU~手錠を持ったダイバー~』でアジアコンテンツアワード助演女優賞にノミネート。『約束 ~16年目の真実~』『青島くんはいじわる』では主演を務めている X Instagram

周囲の言葉より、自分の“違和感”を信じたい

最新出演作『災 劇場版』で中村さんが演じたのは、不可解な事件に異様なほど執着し、周囲から浮きながらも真相を追い続ける刑事・堂本だ。

日常のすぐ隣に潜む“災い”を描く本作は、明確な答えや分かりやすい解決を提示しない。誰もが見過ごしてしまいそうな小さな違和感を、堂本だけが手放さず、追い続ける。

中村さん:周りは「事故だろう」「自殺だろう 」って言うんですけど、堂本はどうしても納得できない。“何かおかしい”っていう感覚を、一人で追い続ける人なんですよね。

堂本は感情を大きく表に出すタイプではない。声を荒らげることもなく、ただ静かに、自分の感覚を貫く。

中村さん:人が亡くなっている以上、簡単に片づけていいわけがない。刑事さんはこれくらい強い意志を持って仕事されているだろうな、と思いながら演じました。

真剣に事件と向き合う人物だからこそ、役作りで意識したのは「削ぎ落とすこと」だった。衣装や佇まいも、きれいで華やかに見せるより、仕事に没頭している人間のリアリティーを優先した。

中村さん:堂本は、生活の全部が仕事に持っていかれていると思ったんです。だから、服は少ししわくちゃでもいいし、きれいである必要もないな、と。

周囲の判断に流されず、自分なりの基準で向き合い続ける堂本。その信念は、どこか中村さん自身の仕事へのスタンスとも重なって見える。

中村さん:堂本みたいに、“これはおかしい”って感じたことを簡単に流せない気持ちは、すごく分かります。

「周りがそう言っているから」って流してしまう方が楽な場面って、仕事でもたくさんあると思うんです。でも、自分の中で引っかかるものがあるなら、ちゃんと向き合いたいんですよね。

覚悟が決まれば、後悔はしない

仕事に真っ直ぐ向き合いたい。その信念は、彼女が「挑戦し続ける人生」を選んでいるからこそ生まれたものだ。

中村さんが、本格的に俳優の道へ進んだのは20代後半のとき。モデルやタレントとしての仕事も軌道に乗り、世間的には、すでにポジションを確立しているように見える時期だった。

中村さん:当時はありがたいことにお仕事もたくさんいただいていて、外から見たら、わざわざ変わる必要はない状況だったと思います。でも自分の中では、このまま同じことを続けていていいのかな、という気持ちがずっとありました。

そうして新しく飛び込んだ俳優の現場は、決して優しいだけの場所ではなかった。

中村さん:最初は現場に行っても、「お前、誰だよ」という雰囲気でした(笑)。今までいた世界とは、空気がまったく違いましたね。

新しいことを始めるって、すぐに報われることばかりじゃない。でも、やりたいと思って飛び込んだ以上、続けるしかないな、と。 簡単に投げ出すのは違うなと思っていました。

うまくいかない時間も含めて、それは自分が選んだ道。だからこそ、目の前の現場から目を逸らさなかった。

その積み重ねの中で、中村さんの中に少しずつ根付いていったのが、「選んだ以上は、覚悟を持って引き受ける」という姿勢だった。

中村さん:やっぱり、何事も覚悟が決まっているかどうかだと思うんです。

うまくいかない時期も含めて、自分が決めたことだと腹を括る。結果がどうであれ、「それも含めて選んだ」って思えていると、納得しながら進めるんですよね。

その覚悟を支えてきたのが、「あえて自分に負荷をかけて、成長する」という考え方だ。

中村さん仕事って、ちょっと憂鬱なくらいがちょうどいいと思うんですよ。あまりにも楽にできてしまうと、多分、成長しないですから。

「今日これできなかったな」とか、「まだ足りないな」って思えるから、次にどうしようって考えられる。そういう引っかかりがある方が、前に進めている感じがします。

無理に自分を追い込むわけではない。けれど、楽な方だけを選び続けることにも、違和感があった。

中村さん:挑戦が怖いって思うのは、それだけ本気で向き合っている証拠だと思うんです。逆に、何も感じなくなったら、たぶん止まっちゃう。

あとから振り返ったときに、「あのとき、ちゃんと向き合ったな」って思えればいい。それが、自分にとっての正解なんだと思います。

覚悟とは、人生を一気に変えることではない。今の選択に責任を持ち、途中で曖昧にしないこと。それがプロフェッショナルな仕事の原点になるのだ。

迷っているなら、それは「やりたい」のサイン

決して順風満帆なだけではなかった、中村さんのキャリア。がむしゃらに走ってきたこれまでを振り返って、「後悔はない」と言い切る。

中村さん:これまでの仕事人生に、後悔は全くないです。そのときそのときで、自分なりにちゃんと考えて、全力でやってきたので。

「こうしていたらどうだったかな」って思うことはありますけど、そのときの決断に責任を持ってやっていれば、後悔はしないと思っています。

選んだ道を進む覚悟を決め、自分に負荷を掛けながら突き進んできた。30代後半を迎えた今は、キャリアに迷う後輩から相談を受けることも増えたという。

中村さん:キャリアを積んできたことで、「仕事でこんなことに迷っていて……どうしたらいいですか」って聞かれることも、以前より増えました。

でもそのときは、自分の意見よりも、「迷っている時点で、多分やりたいんだと思うよ」って伝えています。やりたくないことだったら、迷わないじゃないですか。やってみてダメだったら、やめればいいし、それは20代のうちにいっぱい経験した方がいいと思います。

大きな決断をしなくてもいい。今すぐ環境を変えなくてもいい。ただ、自分で選び、その選択を曖昧にしないことが大切だと、中村さんは語る。

中村さん:他力本願にならずに、自分で自分の人生を選ぶこと。それだけで、見え方って結構変わってくると思います。

繰り返しになりますが、仕事も人生も「自分でちゃんと向き合った」って思えれば、それでいい。そうやって積み重ねてきたものが、あとから自分を支えてくれるのだと思います。

迷いながら立ち止まる瞬間があるのは、前に進みたい気持ちが残っている証拠。

中村さんの言葉は「今の選択を、ちゃんと引き受けていけばいい」と、静かに問い直すきっかけを与えてくれる。

取材・文/大室倫子 撮影/笹井タカマサ

『災 劇場版』2026年2月20日新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

第73回サン・セバスティアン国際映画祭コンペティション部門正式招待作!
いつ、誰に、何故。あなたの常識を覆すサイコ・サスペンスが誕生。

劇中に淡々と響く不穏なサウンドとパズルのようなストーリーテリングに導かれ、観る者は平凡な日常に徐々に侵食していく男の歪さと、突然災いが起こる不気味な世界に引きずり込まれていく。

本作はWOWOW「連続ドラマW 災」を大胆に再構築し、ドラマとは全く異なる「新しい形の恐怖」を描いた物語として生まれ変わった。

本年度のスペイン圏最大級の映画祭サン・セバスティアン国際映画祭にて、監督の長編デビュー作『宮松と山下』に続き2作連続での正式招待、かつアルノー・デプレシャン、エドワード・ベルガーといった名匠たちが名を連ねたコンペティション部門での正式招待という快挙を成し遂げている。

『災 劇場版』

キャスト:香川照之
中村アン 竹原ピストル 宮近海斗
中島セナ 松田龍平 内田慈 藤原季節 じろう(シソンヌ) 坂井真紀/安達祐実 井之脇海

監督・脚本・編集:関友太郎、平瀬謙太朗
音楽:豊田真之 原案:5月
配給:ビターズ・エンド 制作プロダクション:AOI Pro.
劇場版製作幹事:電通 製作著作:WOWOW
2026/日本/カラー/DCP/5.1ch/128分/PG12 🄫WOWOW

公式HP:https://www.bitters.co.jp/SAIdisaster/
公式X:https://x.com/SAI_disaster

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