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“今の日本で最も面白い” 圧倒的な説得力を生んだ“3つの人格への憑依”、今期の話題をさらった【日曜劇場】

  • 2026.4.2

今期の話題をさらった日曜劇場『リブート』の最終話が放送された。第1話から最終話まで、一瞬たりとも飽きさせない見事な展開だった。

無実の罪を着せられたパティシエが、妻の死の真相と無実の証明のために、姿かたちを完全に他人のものにして裏社会の組織に挑んでいく。もう後戻りはできないという切迫感。物語のスリルを加速させる二転三転の事実。そして、人間臭さと欠点を抱えた魅力あふれる登場人物たちのぶつかり合いが見事に噛み合っていた。
最終話を迎えた今、改めてこのドラマの魅力を振り返ってみたい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

予測不能なサスペンスと、現代に刺さる「信じる力」

物語は、第1話から衝撃的な展開で幕を開けた。
老舗の洋菓子店を切り盛りする早瀬陸(松山ケンイチ)は、4年前に妻が失踪したものの、息子と年老いた母とともに生存を信じ、家族を守っていた。しかし、妻の遺体が発見されると、早瀬は殺人犯の汚名を着せられてしまう。そんな彼に助け舟を出したのは、幸後一香(戸田恵梨香)という妻の同僚を名乗る女性だった。彼女は早瀬に、死んだ刑事・儀堂歩(鈴木亮平)の顔に整形、“リブート”して、事件の真相を追えと告げる。

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日曜劇場『リブート』 第1話より(C)TBS

選択肢のないまま早瀬は儀堂となり、第二の人生が幕を開ける。そこから彼は、妻が裏組織の会計を任されていたことなど、自分の知らなかった真相に次々と直面していく。物語は政治家や香港マフィアをも巻き込んだ巨大な陰謀へと発展し、死んだと思われていた本物の儀堂が生きているなど、意外な展開が連発した。

一香は本当に味方なのか? 組織のボスである合六(北村有起哉)や、鉄砲玉のような存在の冬橋(永瀬廉)が見せる家族思いな一面など、サスペンスのなかに魅力的な人間ドラマが複雑に交錯していく。主人公が荒事は得意ではないパティシエという設定も、素人が裏社会に切り込んでいく危うさを生み、スリルをさらに増幅させていた。

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日曜劇場『リブート』 第8話より(C)TBS

物語を盛り上げた最大の要因は、「誰が本当のことを言っているのかわからない」という点にある。主人公自身が顔を変えて別人になりすましているように、この作品では誰もが誰かを欺いている可能性がある。予測不能な騙し合いが見事に整理されており、毎週興奮させられた。

生成AIによるフェイク画像や動画が出回り、何が真実か不確かな現代社会。このドラマにネット社会の直接的な描写こそ少ないものの、“何を信じればいいのか”という根源的な不安において、現代を生きる私たちの感覚と強くリンクする部分があったように思う。

敵味方を超えて描かれた「家族愛」

そんな不確かな世界の中で、登場人物たちが最後に縋り、最後まで強いものとして残ったのは“家族愛”だった。

本作は、早瀬という男が家族を守るためにあがく物語として始まる。しかし家族愛は主人公側だけのものではない。一香と難病の妹の関係、冬橋とシェルターの若者たちの絆、そして悪役である合六の行動原理にも“家族”がある点が、物語の大きなポイントになっていた。冬橋が合六を裏切り、早瀬の味方をするのも、家族同然の仲間の存在が大きかった。悪役側にすら家族への愛が強く根付いていることが、この作品を非常にユニークなものにしている。

一香の正体が、顔をリブートした妻の夏海だったと知った早瀬は、「絶対に味方してくれる存在がいる、こんなに心強いことはない」と語った。これは作品全体を示唆する興味深いセリフだ。早瀬家は家族の絆で危機を乗り越え、一方で合六もまた、家族を危機から遠ざけるために自らの罪を認める決断をする。

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日曜劇場『リブート』 第10話より(C)TBS

対照的なのが、監察官の真北(伊藤英明)だ。トリックスターとして物語をかき回し、最後に新潟県警への栄転を勝ち取った彼だが、実の兄を失墜させ、妻にも離婚を突きつけられた彼は、決して勝者のようには描かれていなかった。

何が真実か不確かな時代だからこそ、最小単位のコミュニティである家族の絆をまずは守り、信じ抜くこと。そんな普遍的なテーマと、極上のサスペンスが両立しているからこそ、本作は稀有なドラマになったと言える。

圧倒的な説得力を生んだ、鈴木亮平の演技力

そして何より、本作を圧倒的な熱量で牽引したのは、主演・鈴木亮平の演技力だろう。
早瀬と儀堂の一人二役(正確には複数の人格)の演じ分けは見事という他なく、彼の演技に説得力があったからこそ、視聴者は作品の世界へ深くのめり込むことができた。

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日曜劇場『リブート』 第1話より(C)TBS

彼は単純に二人の人物を演じ分けたわけではない。彼が演じたのは、“素の儀堂歩”“素の早瀬陸”、そして“儀堂のフリをして生きる早瀬陸”という複雑なレイヤーだ。

姿形は鈴木亮平(儀堂)であるため、視聴者はどうしても彼を儀堂として認識してしまう。しかし、ふとした瞬間に見せる戸惑いや愛情深い眼差しには、確かに松山ケンイチが演じた“素の早瀬陸”の面影が宿っていた。この憑依とも言える芝居があったからこそ、ドラマは強烈なリアリティを帯び、「顔が変わっても家族は通じ合える」というメッセージが胸を打つものになったのだ。

演技にかける情熱と、計算し尽くされた高い技術。改めて、鈴木亮平は今の日本で最も面白い俳優であり、映像界になくてはならない存在だと強烈に印象づけられた秀作だった。


TBS系 日曜劇場『リブート』 毎週日曜よる9時

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi