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NHK朝ドラヒロインらが勢揃いした“豪華”な一作 のちに“伝説のドラマ”として再ブレイク匂わす【夜ドラ】

  • 2026.5.23

2025年にNHKで放送された『いつか、無重力の宙で』は、とても見応えのある大人の青春を描いたドラマだったが、改めて振り返ると出演女優がとても豪華だったと驚かされる。

※以下本文には放送内容が含まれます

本作は高校時代に同じ天文部だった4人の女性が大人になって再会し、超小型人工衛星を打ち上げることで宇宙を目指す物語だ。

広告代理店で働く望月飛鳥(木竜麻生)は、仕事のできる社員として上司からも部下からも頼りにされていたが、多忙な日々の中で心身ともに疲れ果てていた。
そんな飛鳥の前に高校時代の親友・日比野ひかり(森田望智)が現れる。ひかりはJAXAのエンジニアとして働きながら、宇宙飛行士を目指していたが、健康診断で血液のがんが再発したことがわかり、試験を受けることをあきらめた。
そんなひかりを励ますため、超小型人工衛星を作って宇宙を目指そうと飛鳥は提案。そして同じ天文部の仲間だった水原周(片山友希)と木内晴子(伊藤万理華)に連絡する。

多忙な毎日を生きる大人たちの青春ドラマ

本作はNHKの夜ドラというドラマ枠で放送された。
夜ドラは月~木の夜10時45分から放送されている帯ドラマ枠で1話あたり15分となっている。
全8週、全32話という独自の尺ゆえに、他のドラマと比べると話の進め方がとても難しいのだが『いつか、無重力の宙で』は、緩急のある大きな物語を展開することに成功している。

本作を観て、まず何より驚くのが15分とは思えない各回の情報量の多さだ。物語の節々には飛鳥たちの学生時代の回想が挟み込まれるのだが、独立した学園ドラマとして観ても成立するくらい、映像が丁寧に作り込まれていた。
そのため、15分のエピソードの中で現在と過去を舞台にした二つのドラマが同時進行で進んでいるような感覚になるのが、本作の面白さだ。
劇中では、飛鳥たちが日々の仕事や生活に追われながらも、超小型人工衛星を作り、宇宙に打ち上げるために必要なことを調べながら、少しずつ課題をクリアしていく様子が淡々と描かれていく。
同じ天文部の仲間だった4人が再会して、超小型人工衛星を作るために集まってミーティングを繰り返す様子は大人の部活動のようで、とても楽しそうだ。
日々の雑務に追われる飛鳥たちにとって、この活動は学生時代に戻ったような憩いの時間だった。しかし、懐かしさだけでは物事はうまく進まない。

ある日、ひかりは人工衛星打ち上げ経験のある叡明大学の和泉教授(鈴木杏)に相談した際に知り合った和泉研究室の大学生たちにプロジェクトに参加してもらうことをひとりで決めてしまう。4人だけの閉じた世界だったプロジェクトに、突然外部の人々が多数関わるようになったことに、周たちは困惑する。
また、劇中では飛鳥が会社で出世したことで仕事が多忙になり、プロジェクトとの両立が難しくなる。 本作は、お仕事モノのドラマでもあるのだが、飛鳥は真面目で仕事のできる優秀な女性として描かれている。だが、その有能さゆえに彼女は仕事を自分で抱え込んでしまい、自分で自分を縛ってしまう欠点がある。 プロジェクトに対する取り組み方においてもそうで、自分で何でもやろうとして逆に迷惑をかけてしまう。この真面目さと彼女がどう折り合いをつけていくかが成長物語としての本作の見どころとなっている。
仕事ができる優秀な女性でありながら、どこか自信がなさそうで不安定に見えるところが、飛鳥というヒロインの現代性だ。 彼女のような30代の女性は、これまでのドラマではあまり主人公として描かれてこなかったが、実はとても多いのではないかと本作を観ていると感じる。

木竜麻生、森田望智、上坂樹里、ドラマを彩った魅力的な女優たち

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木竜麻生 (C)SANKEI

飛鳥を演じる木竜麻生は、2014年に映画『まほろ駅前狂騒曲』で女優としてデビューして以降、様々なドラマや映画に出演する実力派女優だが、『いつか、無重力の宙で』で主演を務めたことで、より幅広い客層に知られるようになり、2026年に放送された連続ドラマ『ラムネモンキー』では、物語の鍵をにぎるミステリアスな中学教師を演じ、とても好評だった。また、木竜は元々、NHKのドラマに出演する機会が多かったが、2026年度後期の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『ブラッサム』に出演することが決定している。
一方、日比野ひかりを演じた森田望智は2019年にNetflixで配信された連続ドラマ『全裸監督』に出演したことで大きく注目されて以降、様々な作品に出演する若手実力派女優だ。
彼女もNHKの仕事が多いのだが、朝ドラは、2021年度前期の『おかえりモネ』、2024年度前期の『虎に翼』の二作品に出演していたが、2027年度前期に放送予定のバカリズム脚本の『巡るスワン』では、ついに主演を務める。
ちなみにひかりの高校生時代を演じた上坂樹里は、現在放送中の2026年度前期の朝ドラ『風、薫る』でヒロインを演じている。
つまり、現在と過去のひかりを演じた女優が二人とも朝ドラヒロインに抜擢されたのだが『いつか、無重力の宙で』は、天文部の4人を演じた現在パートと過去パートの女優が全員魅力的だったため、上坂がヒロインに選ばれたと聞いた時も、当然の結果だと納得した。

NHKの連続ドラマは演技力に定評のある若手女優が出演する機会が多いため、後から出演者が朝ドラヒロインに選ばれることが多い。

木竜、森田、上坂だけでなく『いつか、無重力の宙で』に出演した他の女優たちも、これから朝ドラ等で大きな役に抜擢されることは間違いないだろう。
そして彼女たちが他の作品で活躍する姿が注目されるたびに『いつか、無重力の宙で』は、出演女優が豪華だった伝説のドラマとして、再評価されるのではないかと思う。


出典:NHK 夜ドラ『いつか、無重力の宙で』NHK ONE 

ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。

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