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主演作で“人生初の役”に挑戦した32歳の人気俳優 長い経験を活かして作り上げた“代表作”のひとつ【日曜劇場】

  • 2026.3.16

神木隆之介が、2026年2月10日に所属事務所の公式サイトを通じて結婚を発表した。神木は1993年5月19日生まれの32歳。2歳で芸能デビューした神木は、昨年芸歴30周年を迎えた。

子役時代より映画、ドラマ、アニメ声優など多岐にわたる活動からは、『妖怪大戦争』『桐島、部活やめるってよ』『バクマン。』『ゴジラ-1.0』『大名倒産』『千と千尋の神隠し』『サマーウォーズ』『探偵学園Q』『11人もいる!』『らんまん』など、数えきれないほど、多くの代表作と呼ばれる作品が生まれてきた。

神木隆之介にとって“挑戦”だった、一人二役

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神木隆之介 (C)SANKEI

彼の長いキャリアの中でも最も直近の主演作であり、代表作でもあるのが、2024年に放送された日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』だ。

その代表作と言われる所以は、神木の俳優人生初となる一人二役にある。彼が演じたのは、1955年の長崎県端島に生きる荒木鉄平と2018年の現代に生きる玲央。過去の軍艦島と現代の東京を繋ぐ、複雑かつ重要なキャラクターを好演した。この点について、ぴあ関西版WEBのインタビューにて神木自身が下記の様に語っている。

ただ『海に眠るダイヤモンド』(2024年/TBS系)は自分としてかなり挑戦した役でもあり、共演者のみなさんのお芝居もあらためて観たかったので、仕事とは関係なく楽しむ気持ちで作品を見返しました。出典元:ぴあ関西版WEB「神木隆之介が芸歴30周年記念イベントを開催 「男子としてチヤホヤされたい」と黄色い歓声を望みつつ これまでの仕事の姿勢について振り返る」(2025年11月26日)より

「自分としてかなり挑戦した役」とインタビューの中で振り返るこの一人二役は、似ているようで全く異なる、彼の演技力の高さと役作りへの情熱を改めて実感させるものとなったからだ。

過去パートの鉄平は明るく真っ直ぐな、炭鉱で働く鷹羽鉱業の勤労課外勤。対して、現代パートの玲央は日々の中で自分をすり減らしながら生きるホスト役という、真反対の役柄を演じ分けた。端的に言えば、鉄平は希望、玲央はチャラさ。声質も全く違うのは、神木の声優経験の賜物かもしれない。けれど、物語が進むにつれて、鉄平は時に眼光鋭く、玲央は人への優しさを見出していく。玲央が鉄平の残した日記を読み、祈ることでその2人の面影が重なっていくような、徐々に溶け合い一つになっていく不思議な感覚が忘れられない。

放送中、多くの視聴者が玲央は鉄平と血縁関係にある人物だと予想していたはずだ。しかし、最終回で玲央と鉄平は全くの別人であることが朝子(杉咲花)こと、いづみ(宮本信子)を通じて明らかになる。当時の端島を記録した映像を見返し、いづみは「似てないねぇ」とつぶやくのだ。他人の空似というまさかの結末に意表を突かれるものの、鉄平の思いを継いでかつての“外勤さん”のようにいづみが玲央に声をかけていたということには納得をせざるを得ない。つまり『海に眠るダイヤモンド』は、いづみの記憶を辿る物語でもあった。そのためには神木の一人二役は必要不可欠だったのだ。

“ちゃんぽん”ドラマの『海に眠るダイヤモンド』が伝える根底に眠るメッセージ

劇中には長崎名物のちゃんぽんが何度も登場する。玲央といづみが、鉄平と朝子が麺をすする姿に放送中、幾度もちゃんぽんが恋しくなったのは筆者だけではないだろう。『海に眠るダイヤモンド』は、ある種“ちゃんぽん”のようなドラマでもあった。玲央は何者なのかという加熱する考察要素に、ファミリードラマ、ラブストーリー、サスペンスの側面も含まれている。鉄平と朝子が互いに思いを告げる第6話での神木と杉咲花の自然体でみずみずしい芝居は、忘れられない名シーンだ。同時に、テレビドラマでは類を見ない大規模なセットに、最新のVFX技術、実際に端島に上陸して撮影された最終回のシーンには息を呑む。作品自体のスケールの大きさと深さ、テーマにあるのは長崎の歴史の忘却とそこに生きた人々の記憶――それらは玲央だけでなく、私たち視聴者へと受け継がれている。


ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。