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現代日本を描く映画『レンタル・ファミリー』──監督HIKARIにインタビュー

  • 2026.2.5
映画『レンタル・ファミリー』は2月27日より日本公開。
RENTAL FAMILY - Shannon Gorman, Brendan Fraser, 2025.映画『レンタル・ファミリー』は2月27日より日本公開。

ここ数年、日本人が観てもリアルに共感できる、日本を題材にしたハリウッドの映画やドラマが増えている。『レンタル・ファミリー』は、その極め付きと言っていい一本だ。 東京で暮らすアメリカ人俳優が、「レンタル家族」の仕事を請け負い、人々との交流で新たな人生を見つける物語。 監督を務めたのは、人気シリーズ『BEEF/ ビーフ』や『TOKYO VICE』を手がけ、ハリウッドを拠点とする日本人のHIKARI。本作のきっかけを次のように語り始める。

「日本で『レンタルなんもしない人』が話題になりましたが、本作に取りかかったのは、彼がメディアなどで注目されるようになる前のこと。レンタル家族産業が存在すると知り、たとえば夫の浮気相手として妻の前で謝る“謝罪サービス”をする人などに話を聞き始めたんで す。人を傷つける嘘はダメですが、楽しませる嘘は必要。そんなことを考えながら脚本を作り上げました」

家族の代役をこなす。そんな日本ならではの仕事を題材に、東京を中心に日本ロケを敢行。コンビニ弁当や、小学校での雑巾がけなど、日本の文化や日常を細かく理解している監督だからこその描写が詰まっている。「日本では小学校や中学校で生徒が教室を掃除しますが、海外では珍しい。私たち日本人が、こうやって育ち、責任感などを養ってきたこと。そんな日本人らしさを作品に込めたのは事実です。一方でどの国で上映しても、笑うところ、感動してもらえるところは同じで、安心と喜びを感じました」

ブレンダン・フレイザーがオスカー受賞後、初の出演作として選んだ『レンタル・ファミリー』。見知らぬ人々の代役を務める「レンタル家族」という仕事を通じて、アメリカ人俳優のフィリップは偽りの役柄を演じながらも、つながりを求めるようになる。
RENTAL FAMILY - Akira Emoto, Brendan Fraser, 2025.ブレンダン・フレイザーがオスカー受賞後、初の出演作として選んだ『レンタル・ファミリー』。見知らぬ人々の代役を務める「レンタル家族」という仕事を通じて、アメリカ人俳優のフィリップは偽りの役柄を演じながらも、つながりを求めるようになる。

東京での映画撮影は許可など 難しい面も多いとされる。それでも『レンタル・ファミリー』 では、理想どおりのロケ地が見つかったと、HIKARIは振り返る。

「今回は“水”が作品のテーマにつながるので、水辺などをポイントにロケ地を探しました。個人的には下町が好きなので、東京の東部が多かったです。 じつは私の実家が(大阪の)お好み焼き屋だったので、焼肉やお寿司ではなく、浅草の有名なお好み焼き屋さんをあえてチョイスした りもしました(笑)。ただ、『シングルマザーの部屋ならこんな雰囲気』というように、生活に根差したロケ地を選ぶことが最優先でした。それぞれの生活を窓越しに見せるシーンは、 その窓枠から出られない人を、外に出してあげたい、という思いを伝えています。主人公フィリップも窓ガラスを乗り越えるように人々と交流するわけです」

そのフィリップを演じるのは、映画『ザ・ホエール』(2022)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザー。「テイクごとに違うことをやってくる。セリフとセリフの間の無言の芝居が天才的」と、彼の演技を賞賛するHIKARIだが、日本人キャストにも実力派が揃った。大御所の柄本明も「オーディションで役を得た」と語るように、キャスティングは本作の要だったようだ。「まずブレンダンが役に決まり、彼に合わせて日本人の俳優を選びました。ふだんオーディションなど受けないであろう、誰もが知る大物の方も何人もいらっしゃり、私も一人一人じっくり演技をみせてもらいました。当然、ご縁のなかった人もいて、『ぜひ次は一緒に』と約束する感じで......。とにかくキャスティングにはバランスが重要なのです」

RENTAL FAMILY - Takehiro Hira, Brendan Fraser, 2025.

このオーディションの話からわかるとおり、 日本人俳優の“ハリウッド進出”への野心は急増しているようだ。その道を自ら監督として切り拓いているのがHIKARIである。なぜ今、このように実績を積み重ねることができたのか。その質問に、HIKARIは迷いながらもこう答える。「口が達者......というのは冗談として(笑)、有能なスタッフのおかげでしょう。『TOKYO VICE』や『BEEF/ビーフ』が評価されたのは、ラッキーとしか言いようがない。ただ思い返せば、勉強は苦手だった小学校や中学校でも、生徒会長や副会長は任されたので、そうした役回りが自分に向いているのかも。今後は積極的に若い世代に映画制作を教えたい。人手不足の現場を支援していくことも大きな目標です」

もちろん監督、プロデューサーとしての仕事は続けるという HIKARI。これから先もプロジェクトは多数抱えているが、その中の一本は、なんと「自伝」というから驚きだ。「高校でユタ州に留学し、ラスベガスでツアーガイドを、ロサンゼルスでは俳優をやって、結果的に映画監督になるまでをドラマシリーズ にする予定。具体的な製作会社はこれからの話ですけど......。そのほかに映画もいくつか進行中です。いろんな映画を撮るつもりですが、最後に『DUNE / デューン砂の惑星』みたいな超大作を撮って億万長者になったら、仕事をやめてもいいかな(笑)」

Director HIKARI on the set of RENTAL FAMILY.

「関西出身なので」と、インタビューでもちょこちょこ笑いを挟み込んでくるHIKARI。この明るさが周囲の心を惹きつけるのかもしれない。最後に外国人労働者の増加が報じられる今の日本で、この『レンタル・ファミリー』が公開される意味を聞いた。「フィリップはアメリカ人ですが、日本への深いリスペクトがある。電車に乗っても体を小さくして座るわけで、この『郷に入っては郷に従え』は、 他者と一緒に生きていくメッセージになるはず。フィリップが意識を変え、前進する姿が、 日本の人の心にも響いてほしい」

ハリウッドで活躍する日本人監督が、エンターテインメントとして母国を見つめた映画。日本でどう受け止められるか楽しみだ。

Interview & Text: Hiroaki Saito

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