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【京都味遺産】ひと目で思い出すあの味、あの思い出|老舗の証しは包み紙

  • 2026.1.30
左:写真提供=いづ重 右:写真提供=鍵善良房

包み紙はその店の顔でもあり、中身と響き合う重要な存在。
おいしいものをよりおいしく感じさせ、目と心を喜ばせるその魅力について、京都の暮らしの文化を探る村松美賀子さんに綴っていただきました。

色や意匠、図柄の美しさを味わう、京都の包み紙

和菓子などを包んでもらうと、もったいなくて開けられないと思うことがあります。包み紙の色や図柄の美しさに、掛け紙や掛け紐などの取り合わせの妙。日々の暮らしのなかで、京都という街の文化の厚みを実感します。

包み紙に目覚めたのは、グラフィックデザイナー井上由季子さん所有の「包み紙コレクション」に出合ってから。井上さん目線で選りすぐられた多彩な意匠や紙の手触りや質感、折り皺の味わいなどにすっかり魅せられてしまったのです。そのコレクションを出発点に、包み紙にまつわる書籍を作りました。刊行から20年近く経ちますが、包み紙は変わらず身近にあって、店や街のありようを伝えてくれます。

今回紹介する老舗は5軒。

まずは侘びと寂びの美が息づく「亀屋良永」。お菓子を紙の意匠やデザインによって生かすことを心掛けているといいます。色についても「白も色なり」と考え、まわりに色を配して白を残すことで、商品を引き立たせる。細やかな心遣いと潔い美意識が、茶の湯の精神に通ずると思います。

亀屋良永

写真提供=亀屋良永

白地があることで亀甲柄がきりりと引き立つ。「御池煎餅」のラベルは棟方志功作。「御池煎餅のほかに落雁『大原路』はその時々の菓銘も素敵。包みにも菓子にも引き算の美学が貫かれている老舗です」と村松さん。

写真提供=亀屋良永

DATA
1缶1,890円
営業時間/8時~18時
定休日/日・水曜
tel.075-231-7850
Google mapで確認
京都府京都市中京区下本能寺前町504

亀屋良永

のびやかな、遊びの余地が生きるのは「大極殿本舗」。築140年の町家に元から「あるもん」を生かしつつ、カステラを包んだ和洋折衷のデザインやポップな抽象的な図柄など幅広いテイストで、店に合うと思うものを自由に創作しています。

大極殿本舗

写真提供=大極殿本舗
写真提供=大極殿本舗

カステラの包みは大正8、9年ごろの包装紙を復刻した。「アルファベットや西洋人が描かれたデザインで和洋折衷の印象です」。印刷も「大極殿」の掛け紙は色刷りで濃淡をつけるなど手仕事が光る。

写真提供=大極殿本舗

DATA
カステラハーフサイズ972円
営業時間/9時30分~18時
定休日/水曜
tel.075-221-3533
Google mapで確認
京都府京都市中京区帯屋町590

大極殿本舗

「柳桜園」は、潔い。千利休好みの利休梅をモチーフに、6つの丸と5本の線で梅を表すシンプルな柄。手描きのわずかな歪みにも味があります。

柳桜園

写真提供=柳桜園

石臼で挽いた抹茶を量り売りする「柳桜園」は、宇治の専用茶園で育てた茶葉を使用。「利休梅の包み紙は抹茶の缶を包むためのもので、白地に抹茶色の梅柄はミニマムな連なりが見飽きない美しさです」

写真提供=柳桜園

DATA
祝の昔[38g]5,184円
営業時間/9時~17時
定休日/日曜
tel.075-231-3693
Google mapで確認
京都府京都市中京区丁子屋町690

街の華やぎを伝えるのは、「鍵善良房」です。薄いピンクと黄緑のはんなりした色合い。大きな鍵と宝尽くしの意匠で、画家・鈴木悦郎さんとの長い付き合いのなかで依頼されたそう。店が人とのつながりを大切にしてきた証しのひとつでしょう。

鍵善良房

写真提供=鍵善良房

民藝の作家が集ったことでも知られる「鍵善良房」は、その時代の工芸作家たちと関わりながら、変わらぬ姿勢で菓子作りを続ける。包み紙の意匠は画家でデザイナーの鈴木悦郎。紙袋は画家の山口晃が描いている。

写真提供=鍵善良房

DATA
園の賑い6,000円
営業時間/9時30分~18時
定休日/月曜
tel.075-561-1818
Google mapで確認
京都府京都市東山区祇園町北側264

鍵善良房

もうひとつ、店主自らが創作する場合もあります。八坂神社の石段下にある「いづ重」の恵方巻きの包みは毎年、手描きを手摺りされています。包み紙ではありませんが、青龍を描いた紙袋も大胆な余白が目を引くデザインです。

いづ重

写真提供=いづ重
写真提供=いづ重

昔ながらの作り方を守る寿司がしみじみおいしい「いづ重」。恵方巻きの絵柄は毎年変わるお楽しみで、2024年は冷泉為弘さんが詠んだ和歌が描かれた。写真はすべて過去のもの。

写真提供=いづ重

DATA
恵方巻き1本972円、販売は毎年節分当日と前日のみ
営業時間/10時30分~19時
定休日/水・木曜
tel.075-561-0019
Google mapで確認
京都府京都市東山区祇園石段下

いづ重

いずれも、おいしいものをよりおいしく届けるために。たしかな味とともに、私たちはその場所で流れた時間や、作り手の想い、客に手渡す心遣いを受け取ります。包み紙には、中身とともに、京都そのものが包まれているのです。

むらまつみかこ◯東京、ロンドンを経て2000年から京都在住。工芸や暮らしを中心に執筆、編集を手掛ける。アトリエ「月ノ座」を主宰。著書に井上由季子氏との共著『京都を包む紙』(アノニマ・スタジオ)など。

文=村松美賀子[文筆家] 編集=八木あきほ(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年2月号より

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