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寝台列車で2泊3日のクルーズ→しかし、2名分の食材が届いておらず…その後、添乗員が考えた“驚くべき対策”に「ピンチはチャンス」

  • 2026.2.12
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

完璧に準備したつもりでも、想定外の事態は起こるものです。特に「食」に関わる現場では、代えのきかない食材の不足は、文字通り血の気が引くようなトラブルです。

それは、私が2泊3日の寝台列車に乗務していた時のこと。復路の出発直前、今夜のディナー用の懐石料理が「2名分まるごと不足している」ことが発覚しました。仕入れ先へ大至急連絡するも、返ってきたのは「今から用意するのは不可能」という無情な回答。

発車まで残り1時間。解決策が見つからないまま、列車は動き出しました。絶体絶命のピンチを救ったのは、自分たちだけの判断ではなく、プロのパートナーとの「情報の共有」でした。

出発1時間前の衝撃。届かなかった「2名分」の懐石料理

2泊3日のクルーズ。お客様の期待が高まる復路のディナーを前に、私は駅の事務所で食材の最終チェックを行っていました。

そこで目にしたのは、あってはならない光景でした。届いているはずの懐石料理が、2名分足りない。何度も数え直しましたが、結果は同じ。

すぐに仕入れ先に掛け合い、不足分を届けてもらうよう交渉しましたが、先方の準備ミスで予備の材料すら残っていないという最悪の状況。2人分足りないまま、刻一刻と出発のベルが鳴り響きます。

「どうにかして用意しなければ」と焦るものの、動いている列車内では物理的に食材を増やすことはできません。重苦しい空気の中、解決の糸口が見えないまま、私たちの乗った列車は出発してしまったのです。

「ミスを隠さない」勇気が道を拓く。添乗員と挑んだ逆転の提案

ディナー開始まであと1時間。このままでは2名のお客様に「料理がありません」と謝るだけの最悪な展開になってしまいます。

私がここで判断したのは、自分たちスタッフだけで問題を抱え込まないこと。そして、この列車の運行を共にする「旅行会社の添乗員さん」に、包み隠さずすべてを打ち明けることでした。

「お客様に不快な失望をさせるかもしれない」という恐怖もありましたが、プロとして最優先すべきは、ディナーを無事に完遂させること。

すぐに添乗員さんのもとへ走り、事実を伝えました。すると添乗員さんは、冷静に「懐石以外の別メニューなら用意できるか」と問われ、可能の旨を伝えました。

「ちょうどご年配のお客様で、お疲れから食欲がない方が2名いらっしゃいます。その方に、あえて軽い特別メニューとして提案してみましょう」と、添乗員さんは驚くべき提案をしてくださったのです。

組織の壁を越えた連携。ピンチを「満足」に変えるプロの共有術

添乗員さんの機転により、その2名のお客様には「体調に合わせた特別メニュー」として別の料理をお出しすることができました。結果、ディナーは何事もなかったかのように平穏に終了し、お客様からも感謝の言葉をいただくことができたのです。

この経験から学んだのは、トラブルに直面した時こそ、情報の「開示」が重要だということです。もし私たちが自分たちのミスを隠したり、自分たちだけで解決しようと奔走していたら、お客様に不審な思いをさせ、取り返しのつかない不信感を生んでいたでしょう。 自分たちの限界を認め、プロのパートナーを信頼して相談する。それこそが、現場全体でお客様を守るための「正しい判断」なのだと痛感しました。

現場での連携こそが、良いサービスを生む鍵

一人の力、一つの組織の力には限界があります。

しかし、状況を素直に共有し、知恵を出し合えば、ピンチはチャンスに変わります。

ミスが起きた時、大切なのは「誰のせいか」を責めることではなく、「今からできる最善は何か」を関係者全員で模索すること。現場での連携こそが、良質なサービスを生む鍵になるのです。


ライター:結城 さち(Webライター)

元・寝台列車アテンダント。その他、旅行添乗員や旅行カウンター業務など、長年「旅」の最前線で様々なお客様と向き合ってきました。 長年培った「一期一会のお客様対応」と「現場での危機管理能力」を強みに、接客業や仕事術に関する記事を執筆しています。 現場の空気感や、そこで働く人の想いが伝わる「温度感のあるライティング」が持ち味です。旅行・接客・キャリアなど、多角的な視点から接客業のリアルや仕事のやりがいを伝える記事を執筆しています。


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